温かく、澄み切って
富山県富山市にある折立(薬師岳登山口)から
歩き続けること8時間。
岩がひしめく急登を越え
果てしない木道の先に、
こんもりしたお屋根が見えて来た。
それが、今日のお宿だ。
見渡す限り、美しい湿原と山。
そこにぽつんと佇む山小屋は、
2010年に老朽化による建替え工事があった。
門を抜けると、明るい空間が広がっていた。
まだ新しい木の質感が伝わってくる。
ここには木の温もりと、温かい食事があって、
山の環境を守ってくれる人たちがいて、
心にも、ぽっと温かい灯火が宿る。
ここは、山歩きで疲れた体に、
想像以上の癒しをもたらしてくれた。
10月中旬に決行した、2泊3日の雲ノ平周遊登山。通常、3泊以上して歩くような道のりを
2泊3日にぎゅっと詰め込んだ。
だからできるだけ荷物は最小限に。
食糧も水も、小屋で補給できるから、
歩くことに集中できた。
身軽にここまで来れたのは、
間違いなく山小屋の存在があったからだ。
今までは山小屋にはあまり見向きもしていなかったのだけれど、山小屋で働いてからというもの、小屋で泊まる選択肢もいいなぁと思うようになった。
とは言え、こんな山奥に小屋があるなんて、なんてありがたいことなんだろう。
お腹いっぱいご飯が食べられて、水が飲めて、電気があって、普通に暮らせる。目の前に当たり前に広がっている光景。私は今、当たり前にそのサービスを受けている。
けれどよくよく考えてみたら、今、目の前にある状況は、全然当たり前じゃないんだ。
自然の中に、ちょっと寄せてもらっている。
自然の風景に馴染んでいる。
小屋の佇まいから、そのような雰囲気を感じる。
"ちょっと寄せてもらっている"だけなんだなぁ。
山の中にいると、
自分はほんとにちっぽけで、
ただの自然の一部でしかなくて、
自然の恵みに生かされているのだと
気付かされる。
そして、
自然と調和するくらい
自然体で、ありのままに生きることの尊さを
教えてくれている気がするのだ。
ここに来れてよかった。
今日も命があってよかった。
山を歩くと、こうして温かい気持ちや澄み切った気持ちにチューニングされていくのだ。
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