今、おすすめしたい一冊|母という呪縛、娘という牢獄
話題の書籍について
この本、読みました?
もし読んでいなかったら、
ぜひ手に取ってほしい。
私は草津駅(滋賀県)の書店でこの本を初めて見つけた。平積みされているグレーの本たちに近づいてみたところ、
ゾッとした。
飛び込んでくるワードは、
殺人事件
ノンフィクション
娘が母を殺した
死体は解体
9浪の医学生─。
パラパラとページをめくって、でもそれ以上は見てはいけないような気がして、平積みされていたところにそっと本を戻した。
でも、読んでみたい気持ちが優って
すぐに図書館で予約。(買う勇気が出なかった)到着を待った。
被疑者への共感
やっと、本が届いた。
分厚い本だったけど、数日で読み切った。
読んでみて、良かったと思っている。
遠い話じゃないな。
というのが、率直な感想だった。
実の母を殺したという娘が、どういう気持ちだったのか。語られていた言葉の一部が綴られていた。
こういう気持ち、あるよなぁ、と思った。
もう、関係を終わらせたい。
それは、誰もが一度は考えたことがある気持ちではないか。
誰だって、逃れられないなら、
その原因を壊すしかないって思うじゃないか。
そうして、
会社を辞めたり、交際を終わらせたり、離婚したり、鬱になったりするわけじゃないか。
もちろん、人の命を奪おうという気持ちには、全く共感しない。けれど、関係を壊したいと思う気持ちのキッカケは、みんなと同じ。人間誰もが考えたことがあるのではないか。
少なくとも、私は共感したのだ。
だから、決して遠い話じゃないと思った。
心が健やかに育つように生きること。そのための探究は、人が人らしく生きていくために必然だと、改めて思う。
「グレーのある世界」に住む
この書籍では、"教育虐待"の怖さを感じた。けれど、教育とは勉強を強要されることだけでなく、食のこと、スポーツのこと、宗教のこと、勉強する環境を与えてもらえないことなどいろいろあるのではないだろうか。
学問の教育、食の教育、スポーツの教育、宗教の教育。どれも大切なことである一方で、教育する側の思想が強ければ強いほど、歪みが生じやすくなるように思う。
分かり合えないことの辛さ、歯痒さが
歪みを生むのだ。
白黒はっきりつけて、同じ思想に染まらない人を排除しようとすることは、
なんとも生きづらい。
グレーがあってもいい、と少しでも思えたら
「グレーのある世界」が広がってゆく。
その世界に住める。
グレーは、交わらないものを交わらせてくれる色なのだ。
おわりに
本書は親子関係に悩んでいる人だけでなく、
そうじゃない人にも響く箇所があると思う。
筆者の齋藤さんはインタビューで、
子育て真っ最中のお母さんにこそ、
読んでほしいと話されていた。
そして殺害罪で服役中のあかりさんは、
親子関係に悩む同じような境遇の人に
「声をあげていいんだ」と
メッセージを届けたい、と。
だから出版に協力した、と話されていた。
ものすごく勇気が要ることだったと思う。
あかりさんが出所後、自分の人生を歩めますように。そして、お母さんのご冥福をお祈りいたします。
いつも楽しく読んでくださり、ありがとうございます! 書籍の購入や山道具の新調に使わせていただきます。