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かもめ食堂と、こめ食堂

昨夜久しぶりに映画「かもめ食堂」を鑑賞した。

観るのはもう3回目くらいだったけど、その度に新しい発見があって好きだ。

自分の経験と重ね合わせて観てしまうのが一番の理由だけど、場面、場面で感じることがあり、実際に自分で海外で店をやってから観たら、「これは映画の中だけの世界だよな」と思っていたことも、それから何年かしてもう一度観ると、「わかる、わかる」となるところもあって面白い。

人が素朴で自然が美しくて、ちょっと寂しそうな空気をまとったフィンランドと、ヨーロッパの一番端っこの、半分忘れられたような小さな国ポルトガル。そしてポルトガルも素朴な人たちが多い。

場所も国の雰囲気も全然違うけど、大都市とはまったく違う、ヨーロッパのどこかの小さな国で日本食の食堂を始めた、という内容はとても似ていて何か親近感を持って観てしまうのだ。


Tasca Komeを日本語に訳すと「こめ食堂」

小林聡美扮する店主のサチエは、自分のやりたいコンセプトも、好みも生き方もはっきりしていて、とてもかっこいい。店を手伝い始める、ミドリ(片桐はいり)やマサコ(もたいまさこ)がやって来て、仲間として一緒に店を盛り上げていくけど、いつ自分が一人に戻ってもそれをすぐに受け入れる準備ができていそうな、心構えみたいなものも見えて、強い人だなぁと思う。

フィンランドの名産物を一応は取り入れてみたけどピンとこなくて、そこから探求することはないけど、日本食の食堂にも関わらず、地元民が好きなシナモンロールを作ってみて出し始めるところも好きだ。シナモンロールとおにぎりや日本の定食って全然違うジャンルのものだけど、なんかあの映画だとピッタリ来て、コンセプトがバラバラな感じが全くしない。

どちらも地元民の心を掴む、素朴で美味しいソウルフード。

外国の街で揚げたての豚カツや鶏の唐揚げ定食、美味しいコーヒーなんかはまさに私たちがやっていた食堂と一緒。シナモンロールはなかったけど、美味しいデザートはたくさんあった。抹茶のシフォンケーキやベイクドチーズケーキなど、かもめ食堂みたいに、作ってみたらとても評判が良くて、定番の一品になった甘いものもたくさんある。

私たちの場合はポルトガルだから、ドリップコーヒーではなくてエスプレッソだけど、スペシャリティコーヒーを、焙煎に拘っているロースターから仕入れて出していた。

おにぎりはうちのメニューにはなかった。でも時々日本人のお客さんが、最後の締めに頼むことがあるので、その時だけ特別に作ってた。こちらの事情を書くと、おにぎりは使うご飯の量がとても多いから、量に余裕がある時しか出せないし、それも日本人の常連さん達はよくわかってくれていた。だからと言って余裕を持って炊いていて、注文が入らなかったらご飯が余ってしまうし、寿司を握りながらおにぎりも、というわけにもいかないし、何より単価が低くてそれだけでお客さんがお腹いっぱいになってしまうから、一般的にはこちらの日本食料理店にはあまり好まれないと思う。

店のことを一生懸命に考えてくれるミドリさんみたいな人が一緒にいたらきっと頼もしくて、モチベーションもさらに上がって心が満たされるだろうな、とか、マサコさんみたいなお母さんみたいな人もいたらきっと店のファンも増えるだろうな、とか、でもどうしても二人がいつかいなくなってしまった寂しさも常に想像してしまって、何とも切ないのと、心が温まるのとが同時に押し寄せてくる映画だ。

でもこれは店主のサチエを自分に置き換えて想像してみた場合なので、またミドリやマサコからの視点だと、きっと全然違う映画になる。

最後にかもめ食堂が満席になって、サチエがご飯を食べているお客たちを感慨深く笑顔で見ているシーンは、私も自分のことのように心から共感できて、気持ちが豊かになる映画だった。


柿のロールケーキ、栗の渋皮煮添え
こちらの旬の果物を使って、ポルトガルでは珍しいタイプのロールケーキ


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