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【読書メモ】 「病院というヘンテコな場所が教えてくれたこと」

気づけばもう11月も後半。学校の先生はこれから年末に向けて三者面談などまた忙しくなる時期です。

私は高校一年生の担任をしています。高校一年生の冬の三者面談で一番話題になるのは「文理選択」ですね。

文理選択って生徒にとって非常に難しい決断だと思っています。そもそも明確な判断基準がないですよね。ある先生は「得意な教科で選びなさい」と言い、またある先生は「数学が苦手でも将来つきたい仕事が決まっているなら理系に進みなさい」と言います。

最近のトレンド?なのかわからないですが、生徒はよく「理系に行っておけば将来の可能性が広がると思うから理系に行きます」という意見の人が多いなと感じています。

確かにGAFAを筆頭にIT系の企業というのは凄まじいスピードで世界を変えています。ITというと理系のイメージがある、だから理系を選んでおけば安泰だろうという思考なのでしょうか。

という前置きとは全く関係ない話を書きます。いや少しは関係あるのかな。最近文理選択で迷っている生徒に対しては、とりあえず気になっている分野の入門書を読んでみなさいと言っています。

入門書というと、岩波文庫の新書だったり、それこそ「高校生でもわかる!経済学入門」のような本を想像されるかと思います。そう言った本に加えて、ドキュメンタリー的な、その人の仕事の体験談などが書かれた本もお勧めかなと思います。

今回は、現在も看護師をされている方が書かれた等身大のイラストエッセイを紹介します。看護系を志望する生徒にはぜひ読んで欲しい一冊です!

○今回紹介する本

○作者

この本の著者の仲本りささんは現役看護師でありながらinstagramでは3万人以上のフォロワーがいたり、アメブロ公式トップブロガーであるなど多岐にわたって活躍されています。

○概要

終末期医療に関わる看護師として、患者の死と向き合うことの恐怖心や生死を争う緊迫した現場のリアルな描写や感情をイラストエッセイという形でかかれています。

また助産師の友人との会話の中で、人生の始まりを看取る助産師と人生の終わりを看取る看護師という「生と死」に一番近い職業だからこそ考える、「命とはなにか?」という哲学的な問いも必見です。

○感想

あらゆる職業の中で、看護師や助産師、医者などの医療従事者ほど、哲学的な問いを突きつけられる職業はないのではないかと感じました。

すごく印象的だった場面があります。助産師の友人のエピソードのなかで前置胎盤早期剥離(赤ちゃんが出てくる前にお母さんのお腹の中で胎盤が剥がれてしまうこと。母親は大出血をしている状態で、赤ちゃんに血液が送られないから母子ともに危険な状態)になった母親の緊急手術の最中に医者が「予後が悪くなるから、無理に助けなくてもいいよ」というセリフを放った場面がありました。予後というのは病気にかかったその見通しのことで「予後が悪い」と言った時には治らない、もしくは致死率が高いことを指します。

その手術に立ち会った助産師はなぜ医者がそんな冷たいことをいうのか、助けられる命があれば助けるのが医者の仕事なのではないかと思ったそうです。

しかし実はその医者は以前助けた子が植物状態になって家族もだんだん会いに来なくなってしまったということがあり、必ずしも命を助けることが家族を救うことにはならないということを身をもって知っていたのです。

医療の現場では生や死と隣り合わせだからこそ、知識や常識にとらわれず。本当に患者やその家族にとっての幸せとは何かを考える力が必要なんだなと実感しました。

○こんな人に読んで欲しい

これから看護師や助産師、医者として働きたいと考えている人、特に少しそういう仕事に興味があるなと思っている高校生にはぜひ読んで欲しい本です!




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