ロシアの核戦争秘密基地を、グーグルアースで偵察
メジゴーリエは、南ウラルの山中にある閉鎖都市。人口約18,000人。
1979年に建設された。1994年までは名称がない秘密都市で、地図にも記載されていなかった。現在も、住民以外の立ち入りは制限されている。 マグニトゴルスクの北北西100キロほどにある。
その東方にあるヤマンタウ山(Mount Yamantaw)は標高1,640メートルで、ウラル山脈南部では最も標高が高い。
ソ連崩壊後の1990年代末に、ここで行なわれていた大規模な掘削プロジェクトがアメリカの衛星写真によって観測されている。
アメリカの数次の質問に、ロシア政府は様々な答えを返している。そこが採鉱所だとか、ロシアの宝物庫だとか、食料保管場所だとか説明しているが、核戦争時の指導者用バンカーではないかとアメリカは疑っている。
1996年4月のニューヨークタイムズは、「冷戦が終わったのに、ロシアは秘密基地をヤマンタウ山に建設中」と伝えた。Despite Cold War's End, Russia Keeps Building a Secret Complex
いまでは、グーグルアースの衛星写真で誰でも簡単に見ることができる。
左にあるのが、メジゴーリエの町。ここは居住地区で、下の衛星写真のように、良好な住環境であると推測できる。
上の写真の右上に白く見えるのが、ヤマンタウ山。
メジゴーリエからヤマンタウ山に道路と鉄道が通じており、中間に2つの軍事基地らしきものが見える。暗号名ベロレツク-15(Beloretsk-15)とベロレツク-16(Beloretsk-16)。
下の説明図では、ここに核戦争の秘密基地があるとしている。タイトルバックの写真は、この記事にある基地の想像図。
衛星写真を拡大すると、下のようになる。
上の写真の中央下部をさらに拡大すると、下の写真のようになる。
驚くべき写真だ!
左上にある長方形の建設物は、鉄道の駅のようだ。
下の写真は、ここを撮ったもののようだ。そこで荷物を地下基地に向かう鉄道に積みかえて、上の写真で駅から右下方に進み、山の中に入っていくように見える(この部分の線路は、屋根で覆わている)。
ただし、現在は放棄されているのか、活動しているようには見えない。
左下に鉄道が続いている。これを追っていくと、メジゴーリエの南を通過し、さらに延々と続く。下の写真は、川を渡っている鉄橋。
デイヴィッド・E・ホフマン (平賀 秀明訳)、『死神の報復:レーガンとゴルバチョフの軍拡競争、(上、下)』(白水社 、2016年)によると、ソ連は1980年代に「外辺部システム」を実戦配備した。
これは、全面核戦争における最終的な報復装置だ。ヤマンタウ山の基地がそれで、もう一つは、中央ウラルのコスビンスキー山中にある。
アメリカの先制核攻撃によって国家指導部が全滅した場合、残る核ミサイルを、ほぼ自動的にアメリカに向け発射する。「死の手」とも呼ばれる。
『死神の報復』によると、超深度地下の「球」に身を潜めた当直士官が、地表の施設が核攻撃を受けた後に、ロケットを発射させる。それが発する指令によって、残存するすべての核ミサイルは、アメリカへの報復攻撃に向かう。
この方式によれば、地上の通信システムがすべて壊滅していても、報復ミサイルに指令を送ることができるわけだ。
映画「ドクターストレンジラブ」は空想ではなかったのだと知って、驚愕した 。超深度地下から最後の報復攻撃を行なうというのは、小説『レベル7』そのものだ。
このようなシステムは、相手に先制攻撃を思いとどまらせるために作られたものだ。だから、その存在を公表しなければならない。
しかし、死の手にしても、「ドクターストレンジラブ」のドウムズデイマシンにしても、存在を秘密にしているが、それでは意味がない(ただし、「ドクターストレンジラブ」、それに関する議論が行われている)。
ところで、地上の通信施設が核攻撃で分断された場合に備え、アメリカではパケット通信を開発した。それがインターネットとなり、世界を一変させてしまったのは、われわれがよく知っているとおり。
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