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【見た目と中身が違うんです】J2第3節 松本山雅×モンテディオ山形 マッチレビュー

スタメン

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松本は前節負傷交代した橋内優也に代えて野々村鷹人を先発起用。その他は同じメンバーを並べた。配置でいじってきたのは右サイドで、前貴之と表原玄太のポジションが逆に。おそらく柴田監督が相手の攻撃のどこを抑えたいのかという守備面での意図が現れていると思う。京都戦は左サイドバックの荻原の積極的な攻撃参加と精度の高いクロスを警戒して本来サイドバックの選手である前貴之を右ウィングバックに起用。この日、山形の攻撃の起点となるのはダブルボランチで、そのため前貴之をインサイドハーフに置く布陣となった。

京都戦では攻守に切り替えが早いトランジション重視のサッカーを展開したが、60分前後にチーム全体が息切れし、オープンな展開になった。幸いにも京都が松本のハイテンションに90分間付き合ってくれたこともあり、殴られ続けることはなかったが、山形相手だとどうだろうか。もともと守備をベースにしていたチームにボール保持を植え付け、どちらかと言えばテンポを落としてコントロールしたいはず。仮に前節同様なサッカーをするならば、まずは山形を同じ土俵に引きずり込むことが必要になりそうだ。


スタッツと内容のギャップ

山形は守備時は4-4-2のブロックを形成しているが、攻撃時はダブルボランチの一角に入る山田康太が前線に顔を出すので4-1-3-2のような形になる。とはいえ、2トップに入りながらトップ下のように振る舞う南と合わせて、2人にはかなり自由が与えられており、サイド関係なく流動的に動いていた。1:20~に左サイドを崩されたシーンや、11:14~右サイド奥深くを取られた場面はサイドこそ違うがいずれも山田が絡んでいる。ボランチとして3列目からゲームコントロールに徹するのであれば、京都戦でアンカーの川崎に河合秀人を付けたようにマンツーマン気味に消すこともできる。しかし、周囲との連携から前線まで飛び出してくる動きを見せる山田に対して、松本は誰がどこまで捕まえるのか?が定まらずに、しばらく苦労していた。

山形が最終ラインで回すときには、阪野豊史がセンターバックにプレスを掛け、呼応して河合秀人やボールサイドのインサイドハーフが動き出す前プレができていた。特に中央への警戒度が高く、山形のサイドバックは浮かせる場面もよく見られた。この優先順位はチーム全体で共有されていたので、事前に仕込んでいたのだろう。実際に、ボランチへのパスのインターセプトやボランチで潰せなくても次のパスでハメるなど守備でやりたいことは一定数見えたと思う。(13:00~のシーンとか)

ただ、松本にとって誤算だったのは山形のサイドバックにプレスが掛からなかったこと。いつもならば4バックに対しては、ボールサイドのインサイドハーフが一列前に出てサイドバックを捕まえるのが松本の守備だが、この日は山田や國分のマークが優先事項。そのため山形のサイドバックには、松本のウィングバックが前に出て対応するはずだった。しかし、山形はサイドハーフの加藤と中原がタッチライン際に張ることでウィングバックをピン留め。結果として、松本インサイドハーフが頑張って走るしかなくなり、ボランチを確実に潰すのかサイドバックの持ち上がりをケアするのか中途半端になっていった。

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先制し、シュート数でも7:2と大幅に上回りながらも山形を圧倒していた感がなかったのは、サイドから松本陣内まで結構持ち運ばれていたから。システムのかみ合わせ的にサイドが数的不利に陥ってしまうのは致し方ない部分はあるが、松本はインサイドハーフが死ぬほど走って頑張る!という解決策で挑んだので前貴之と安東輝は大変そうだった。前半の飲水タイム明けに表原と前のポジションを入れ替えたのは、特に右サイドから押し込まれる場面が目立っていて、山形の左サイドバック松本の上がりをケアするためだったと思う。


ビルドアップの致命的な欠陥

試合を通じて気になっていたのは、松本の左サイドがあまり機能していなかったこと。先制点は左サイドの華麗な崩しからやん、というのはその通りなのだが、ここでは最終ラインからの組み立てにおいて上手くいかなかったという話をしたい。

今日の3バックは右から大野佑哉、野々村鷹人、下川陽太。全員右利きの選手だ。近年、最終ラインからのビルドアップをスムーズに行うために最終ラインの左サイドには左利きの選手を配置するチームが増えてきている。これには色々背景はあるが、トラップした後のボールの置所によって視野だったりパスコースが変わってくる点は大きな要因だと思う。左利きの選手は自然とボールを自分の左前に置くので、左HVの場合はタッチライン際の縦パスのコースが使える。しかし、右利きの選手は逆で自分の右前にボールを置くことが多い。すると、常に視野が内向きになってしまい、相手のプレスを受けた際に逃げ道がなくなってしまうのだ。(実際に自分の左側にタッチラインがあると仮定してボールの置所を変えてみると、身体の向きや視界が変わるのが体験できるのでおすすめ)

3バックの左HVに入った下川は、この現象に苦労していたように思う。27:43~のゴールキックの場面が象徴的で、右足にボールを置いた下川は相手のプレスを嫌って中にドリブルすることを選択。左サイドには広大なスペースが存在していたが、最初の置所から視野が限定されていたように思う。結果として、佐藤和と野々村への選択肢を自ら消してしまい、思うように展開できなかった。安東輝が気を利かせて左サイドバック的な立ち位置に降りてくれたので、出口を見つけられたが、時間とスペースの猶予はなく前線にロングボール。

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今日は山形の前線からのプレスがそれほどキツくなかったこともあり、最終ラインから組み立てる試みをしていたが、左サイドで詰まることが多かった。この課題を解消するに手っ取り早いのは人を変えること。例えば左利きの常田克人を入れれば、改善される可能性がある。柴田監督がどれほど問題と感じているかはわからないが、個人的にキャンプでチャレンジしていたボール保持をするにあたっては致命的な課題だと感じたので取り上げてみた。


らしくない今季初ゴール

3試合目にしての待望の今季初ゴールは、実に松本らしくない形から生まれた。敵陣に押し込んでから、ハーフスペースを突いてのマイナス方向へのグラウンダークロスに合わせる。一瞬だけ川崎とかマリノスかと思った。

試合後の監督コメントでずっと仕込んできた形が出たと語っていたが、多分仕込んでいたのは本当だと思う。”仕込む”というと非常に定義が曖昧で、どこまで監督の指示で練習していたかはわからない。ただ、崩しのアイデアだったり、少なくともウィングバックが大外に張ってインサイドハーフがハーフスペースを突くという形はひとつの理想形として持っていたんだと思う。そしておそらく今回の崩しは個人に依存している部分が大きい。

個人と言うのは前貴之のことで、彼には最大限の賛辞を贈りたい。どれだけ頭で理解していても、刻一刻と状況が変わりかつ相手がいるスポーツのサッカーにおいて監督の理想をピッチで表現するのは難しい。前は霜田監督の山口で基礎を叩き込まれて、マリノスで揉まれた経験が大きいと思う。あのペナルティエリアに侵入する動きは擦り切れるくらい何十回も見てほしいし、前線の選手が皆あれをできるようになったらJ2を蹂躙して優勝できる。ま、それができたら苦労しないのだが。

なんにせよ、今季初ゴールを奪えたことは非常に大きいし、それも監督の理想とする形で得点できたのはポイントが高い。あとは、得点シーンのような形に持ち込む流れをチームとして90分で何回作れるか。着目したいのは、得点より1分程度前で、佐藤和弘が外山へロングパスを通したシーン。

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山形の守備がかなり緩めで、前線がアリバイ守備をしてくれていたので佐藤和弘が自由にボールを持てたのは前提条件として考えなければいけない。けれど、外山にパスを通したことで山形のプレスを回避して、敵陣に押し込むことができた。やっぱりボール保持をやるならば、佐藤和弘がキーマンになるのは間違いない。もう少しプレスを厳しく掛けてくる相手に対して、京都同じような決定機を作り出せたらホンモノだと思っていいだろう。


打開策を見いだせなかった後半

後半になると、松本は如実に疲れが見え始めた。特に中盤3枚はスペースを埋めるために走り回っていたため、60分過ぎからだんだんとキレがなくなっていく。安東輝が下がり、河合秀人を一列下ろして運動量を担保しようとしたが現実はそんなに甘くなかった。

中盤が前に出れないことで山形のボランチに自由を与えてしまい自陣から抜け出せなくなり、最終ラインは釣られるようにズルズル下がっていく。低い位置でブロックを敷いているのでセカンドボールも拾えず殴られ続ける悪循環...。同点ゴールは、今の松本の守備ブロックだと耐えて守り抜くには強度不足を露呈してしまった結果だった。

色々と意見は出てくると思うが、個人的に前節から思っているのは交代カード切る時間帯が遅いなということ。控えめに言っても過労死状態だと思うインサイドハーフを75分すぎまで引っ張り続ける理由はないと思うのだが、2試合連続で自分の感覚より10分は長くプレーさせている印象だ。しかも今日は阪野をインサイドハーフにするというファイヤーを選択。たしかに器用で競り合いにも強い阪野なら無難にこなすとは思うが、ベンチにいる平川怜はそれほどまでに序列が低いのか....。とも感じた。

浜崎拓磨など主力として計算していたであろう選手に負傷者がいるチーム事情は考慮すべきだが、このままだと前半でリードして後半は耐える先行逃げ切り型のチームになりそうな予感がする。もしかしたら週1ペースでリーグ戦が続く4月まではある程度主力を固定して乗り切るのかもしれない。


まとめ

ホーム開幕戦で上限8000人のアルウィンに7700人も入ったことがシンプルに驚いたし、ちょっと感動した。松本にとって非常に大きなホームアドバンテージであるサポーターの圧力がだんだんと戻ってきた気もするし、新しい手拍子チャントもリズミカルで悪くなかった。

正直な話をすると、今季3試合を見ているが、まだチームとして何を目指すのか見えてない。僕個人の眼が足りておらず、ピッチ上の現象を拾いきれていない点は間違いなくあると思うが、皆さんはどうなのだろう。間違いなく言えるのは、新しいチャレンジをしているということ。そして未知の挑戦をする時は、カオスを楽しんだほうが案外うまくいくことも多いということだ。(個人の意見ですw)

次も楽しみにしたい。
では。


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