【書評】平野啓一郎『本の読み方』 スローで意義ある読書をしたい!
本日は、『マチネの終わり』で有名な平野啓一郎さんの『本の読み方』をご紹介します。みなさんはスロー・リーディングされていますか?
私は、noteを毎日更新するようになってから、ネタ探しに奔走していて、
今まであまり感じてこなかった、「この本読んで感想文書かなきゃ」なんて強迫観念にかられることがあります。
今までの自分は、好きなタイミングで読書をしがちだったので、「noteを書くために今日はこれを読もう」という意識が働くという良い面もあるのですが、少しばかり読書が乱雑なものになっていることも自覚しており、そんな私に「本当に多読って意味あるの?」と問いかけてくれたのが、平野啓一郎さんでした。
p.16
本当の読書は、単に表面的な知識で人を飾り立てるのではなく、内面から人を変え、思慮深さと賢明さとをもたらし、人間性に深みを与えるものである。そして何よりも、ゆっくり時間をかけさえすれば、読書は楽しい。私が伝えたいことは、これに尽きると言っていい。
闇雲に活字を追うだけの貧しい読書から、味わい、考え、深く感じる豊かな読書へ。
本書が、その一助となれば幸いである。
スロー・リーディングすることのメリットは何より、「読書が楽しくなる」ことにあるとしています。
書き手は、スロー・リーディングしてもらえることを前提に、仕掛けや工夫を仕掛けているので、本来スローに読まなければ、それらを消化し切れるはずがないと。そりゃそうですよね。
「あの本読んだ!」と言っても、「じゃあ、あなたはあの場面をどう解釈したの?」と聞かれて答えられないようじゃ、本当にその本を読んだとは言えない。耳に痛いよ。
p.44
ある意味で、読書は、読み終わったときにこそ本当に始まる。ページを捲りながら、自分なりに考え、感じたことを、これからの生活にどう活かしていくか。ーー読書という体験は、そこで初めて意味をもってくるのである。
また、私は読書するとき、気になったところに付箋を貼っているのですが、平野さんはこうも言っています。
p.49
記憶に残りやすいのは、自分にとって馴染みのある言葉や、自分が普段から関心を持っている言葉である。あるいは、トラウマとなっている出来事に関する言葉を、「無意識」に拾ってしまうかもしれない。しかし、それらはいずれも、読者にとって重要な言葉であり、文脈上、作者が特に強調したかった言葉ではないのである。つまり、読者はそのとき、作者の言わんとするところを理解するのではなく、単に自分自身の心の中をそこに映し出しているに過ぎない。そうした読書の仕方では、多く本を読めば読むほど、自分の偏ったものの見方が反復され、視野が広がるどころか、ますます狭い考えへと偏っていくだろう。
これは、今後の読み方としてどう改善すれば良いのか、難しいところですね。
作中、自分と同じ考えの人物に、対抗する人物の考え方を「こんな感じで捉える人もいるのか」と思考をトレースしたりするのはいいかもしれない。
それか、自分じゃ選ばないような本を買うとかね。
この前は、「この棚の上から○番目の左から○冊目を買う」という遊びをやってみたけど、それも案外いい方法だったりするのかも。
さて、第3部では、実際にどうスロー・リーディングするのか、というのを古今のテクストを用いて説明されています。扱われる作品は、以下の8点。
①夏目漱石『こころ』
②森鴎外『高瀬舟』
③カフカ『橋』
④三島由紀夫『金閣寺』
⑤川端康成『伊豆の踊子』
⑥金原ひとみ『蛇にピアス』
⑦平野啓一郎『葬送』
⑧フーコー『性の歴史I 知への意志』
純文学が多いですが、平野さんの自作もしっかりありました。作品の一部を読むと、全体を読みたくなりますね。
皆さんも、気になる作品があれば買ってみて、スロー・リーディングするのはいかがでしょうか?
私は『金閣寺』を読みます!
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