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双極性障害とギャンブル

 双極性障害とギャンブルの相性はとてもよいらしい。赤ワインとオリーブオイルをかけたプロシュートみたいなものである。のめり込み過ぎて多額の借金を背負ってしまい破産する人も多いらしい。なんというか、わからくもない。

 二十歳になった頃に急に思い立って競馬を始めたことがあった。単なる思いつきだった。きっと躁転していたんだろうと思う。
 
 わたしの周りには競馬をやっている人がいなかったので誰かの影響を受けたという訳ではない。そういう訳でまるっきりの独学で始めた。

 予想の仕方を熱心に勉強して、まずはテレビの競馬中継をみながら予想の練習をした。これだけのことでも予想が当たればとても嬉しい。しかもビギナーズラックというやつなのか結構当たる。これはお金をかけていたらもっと楽しいに違いないと思った。

 しばらくの間はお金を賭けずにテレビの競馬中継をみて練習するつもりだったが、誘惑に耐えきれず早々に馬券を買うことにした。そうと決めたら居ても経ってもいられず一人で大阪・梅田のJRAの場外馬券売り場に行った。一人だけで行ったのは誘っても誰一人ついてきてくれなかったからだ。

 そして場外馬券売り場まで来たのはいいけど馬券の買い方がわからない。それに周りにいるのはどうにも馴染みずらい種類の人達ばかりだったので気後れしてしまう。わたしが来る場所ではなかったかもしれないと一瞬後悔した。
 
 とりあえず近くにいた声を掛けやすそうなイケメンメガネ男子に声を掛けて馬券の買い方を教えてもらった。そして一緒に予想したりしながら結局その人と最終レースまで一緒にいた。結構楽しかった。

 そのあと二人で居酒屋に行って最後にLINE交換して別れた。その人とはそのあとも何度か場外馬券場で待ち合わせしていたけれど、じきにわたしが競馬に飽きてしまいそのまま自然消滅した。

 結局、競馬に対する興味は三か月ぐらいしか続かなかった。誰が勝つのかどの馬が勝つのかを予想してその結果に一喜一憂するのは楽しかったけど、肝心のギャンブル性のほうにはそれほどは嵌まらなかった。でもそれで済んで本当に良かったと思う。

 双極性障害の躁のときに強く表れる様々なエピソードというのは、普段から表面に現れている性質だけではなく、普段は表に出ないように意識して押さえているものだったり、内心に秘めている自分でも気づかないような願望だったり、いろいろあるのだろう。

 そして競馬にはハマらなかったというのはわたしには根っからの射幸心が少なかったのかもしれない。

 わたしの場合は、躁のときにあらわれる症状は攻撃的になることと社交的になること、それから恥ずかしくて言いたくないのだけれど異性関係にだらしがなくなること。大体この三つが目立って現れる。

 でもこれらの性質は普段のわたしには全く無い。普段のわたしは大人しくてあまり他人とのコミュニケーションはとりたがらない。ましてや男性を逆ナンなんて絶対にしない。

 そんなわたしが躁のときに攻撃的になったり陽気で社交的になったりするのは、普段は大人しいが内心ではそういう願望があるということなのだろうか。異性関係にルーズになるのが内心に秘めた願望なんだとしたら、それは本当に嫌なので勘弁してほしい。

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