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創造的能力②「傾聴」の高め方

「仮説の創造」には、傾聴する力が効く!

今回の記事では、創造的思考をする時に有効な「傾聴」のコツ、能力向上に向けた習慣の話を書きたいと思います。

創造的能力の高い人というと、インプットよりも、アウトプットが得意な人というイメージが湧きがちです。でも、私のように新規事業アイデアを考えたり、その方法論を教えるような仕事をしていて、実はインプット情報の性質や分析方法、記憶方法が、創造的能力について初級者と熟達者の根本的な違いにつながっているように感じることがよくあります。

他者の話に傾聴することで、自分の中でモヤモヤしていた概念が言葉として見つかったり、逆に自分の中で凝り固まっていた言葉と概念が壊され次の平衡状態を見つけたりと、とてもダイナミックなことが頭の中で起こります。つまり、創造的な思考が一気にすすみます。でも、不思議なもので、同じ人から同じ話を一緒に聞いていても、傾聴する能力がそれほどではない人は、他者の話から創造的な思考になることも少ないようです、実体験として。

「仮説の検証」という言葉はよく聞きますが、どうやってまずは仮説をつくるのか、「仮説の創造」に苦手意識を持つ人は多いでしょう。他者の話に傾聴することは、仮説の創造のきっかけとなり得ます。他者に仮説を伝授してもらうのではなく、他者の話を聞いているうちに、仮説が生まれる、そういう感覚です。

1時間の発言情報量は、実はワード30ページ相当

私も含めてですが、どのような立場・職業でも、「人の話は正しく聞けている」という自意識を持っているのではないかと思います。でも、私は自分の自身を失う出来事がありました。

私は、15年前くらいに社会人になって、コンサルタントや大学の仕事で、おそらくは500名以上の人にインタビューをしてきました。正直ちゃんと数えていないですが、自分なりのロジックで計算して、1000名には達してないけど、500名には確実に達している、という程度にインタビューしています。インタビューを行う専門家ではないですが、インタビューが大事なタスクであるような仕事をしていることは事実なので、その実施能力についてはそれなりに自負心があります。

インタビューに参加して、自分がメモをとる役割の時には、自分で要約したり、発言内容を取捨選択することなく、タイピングが間に合う限りは出来るだけ全ての発言を記録するようにしています。メモの分量は、1時間のインタビューで、ワードファイルのページ数で言うと、終了直後の初期メモとしては多くても5ページくらいでしょうか。さらに、インタビュー後に、初期メモに対して記憶を頼りに文章を補完していき、場合によっては発言情報に行間を補完するような解釈も追加しつつ、最終的に10ページくらいになります。自分の意見やコメントは書かず、発言録だけで、この分量となります。結構情報量多い方なのではと思います。

一方で、発言を録音しておいて、後から全文文字起こしをやることもあります。それは、自分がやるというわけではなく、そうした業務を専門としたプロにお任せして、一言一句文字起こししてもらいます。その全文文字起こしした結果としてわかったのは、1時間のインタビューだと、ページ数で言うと20ー30ページくらいになるということです。つまり、実際に発言されていた情報量は、私が把握していた量の2ー3倍程度というボリュームです。

皆さんが普段1時間程度のインタビューなどでどの程度のボリュームのメモを取られているか、わかりませんが、実際の発言量は30ページ分ありますよということです。

私は自信を失いました。。。

まず、能力向上のためのスタート地点として、上記くらいの情報量を1時間の中で自分が日々浴びていることを認識しておくことは大事でしょう。そして、どのくらいの情報を逃しているかということの、自己認識を持つことです。

100%を目指して徹底的にメモする機会を設ける

傾聴能力を高めたいと思うのであれば、まずは徹底的にメモすることをお勧めします。でも、常にミーティングやインタビューでその状況を続けることは、私のように顧客に共有する成果物としてそのメモが必要な場合などを除いては、ほぼ続かないでしょう。

現実的には、筋トレと同じで、週に1回なのか、週に2回なのか、タイミングを限定して全力を尽くしてみることでしょうか。誰に見せるためでもなく、このミーティングでは、議事メモ係を自分がやろうと決めて、徹底的にメモし続けるとかでしょうか。同僚にメモを共有する時は、要約して1ページなのか、数行なのかでいいでしょう。でも、自分の手元には、1時間で5ページくらいのメモを残すことを目指してはどうでしょうか。また、終わった後にメモをちゃんと見返してみて、話の流れを反芻してみて、自分のメモが飛んでいるところがないか確認してみてください。終わった直後だと、自分がサボって手を止めた箇所に気づくことができます。さらに、可能であれば、他の人がとった議事メモと見比べてみてください。同じミーティングに出ていても、人が違えば、こんなに記録する言葉、理解、文脈が異なって聞こえているというのを目の当たりに出来るでしょう。

最近ですと、オンラインで参加者数が無駄に多いようなミーティングに参加していて、どうせ他の「内職」をやるくらいなら、このメモ取りトレーニングを試してみてはいかがでしょうか。他には、ウェビナーを視聴して、一言一句メモすることに挑戦するのもいいかもしれませんね。

私は「傾聴」を起点として、創造的思考能力が開花した

徹底的にメモすることを続けていると、自分がメモ係ではない時にも、他者の言葉の一つ一つがとても丁寧に聞けるようになり、次第に聞きながら考えられるようになり、適切な相槌なり、追加の質問なりができるようになり、さらにはいろいろ思いつくようになります。この、メモ係以外の時でも、「他者の言葉を丁寧に聴けるようになる」という感覚が大事です。不思議と、この人はこういうことを言いたいんだな、というのが滲み入るようにというか、共感的に理解できるようになります。

また、この感覚が正しいものなのかは、100%を目指して徹底的にメモをとっている体験を何度もこなした自分との比較でしかわかりません。

社会人の方は働き始めてすぐの頃には、議事録などをとる役割を担っている/いたかもしれません。でも、どんどん年齢や職位が上がっていくと、そういう習慣もなくなります。そういう方こそ、ぜひ今一度徹底的に100%を目指したメモを取るトレーニングを試してもらえたらと思います。自分でも諦めていた「もうひと伸び」を実感してもらえるのではと思います。

ちなみに、私は、30歳を超えて、「もうひと伸び」を感じました。冒頭に書いたように、この傾聴の能力は「仮説の創造」にかなり有効です。私は、今日紹介した傾聴の伸びを起点として創造的思考が使えるようになったという感覚が強いです。

創造的思考の起点としての「傾聴」、おすすめします!


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