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どうぞご自由にお使いくださいは有料だった

2021年10月、祖母が老衰で亡くなった。享年91歳。

足腰が弱く、耳も遠く、気分によって認知症になる祖母は、しばらく施設と病院を行ったり来たりしていた。食事もうまくとれず、医者から

「あと1年くらいだと思います」

と宣告されていたため、コロナが少し落ち着いた10月に帰省したタイミングが良かったのか悪かったのか秋田滞在時に亡くなった。

死に目に会えたと書きたいところだが、コロナの売人ということで拒否され会えなかった。
詳しくは↓

病院で亡くなったとはいえ、悲しみにひたる余裕は与えられず、早速、次の手配を促される。

おばあちゃんが危ないとわかってからずっと寄り添っていた母は憔悴しきっており、付き添っている父もなんだかぐったり。

となると、外でぼ~っとしていただけの元気な私が動くことになる。

帰省直後に危ないということがわかっていたため、ある程度の段取りは母と打ち合わせ済み。

母はとある葬儀社の会員になっており、会員であれば、プラン料金が15%OFFになること、コロナ禍でもあるし、家族葬といわれる一番安いプランにしようというところまで決めていた。

とはいえ、一番安いプランについて何も調べてなかったのが痛恨のミス。

プランというくらいだからいろいろパッケージ化されているだろうと当然思ってしまう。

早速電話をかけ、祖母が亡くなったこと、会員であること、一番安いプランをお願いしたいと伝えた。

すると

「おばあ様はいったん、自宅に戻られますか?それとも弊社にいたしますか?」

予期せぬ質問がきたため、頭がフリーズ。
まったくもって考えてなかった。

が、自宅に連れて帰るとなっても布団を準備したりいろいろしないといけないらしい。

のっけからつまづいた。これはさすがに勝手に決められないしなと母に電話をすると、夜ということもあり葬儀社での安置にしてくれとのこと。

とお願いすると、安いプランには安置料金は入っていないとのこと。

次から次へと予期せぬ答えが返ってくる。一番安いプランとは何がパッケージに入っているのか?安置料金はいくらなのか?と聞きたいところだが、そんな余裕もないし、自宅に戻るという選択肢はないのでお願いすることにした。

その後は時間通りに寝台車がお迎えにきてくれ、葬儀社に到着。

すると、待っていたのは新築のモデルルームですか?といわんばかりの部屋。

大きな畳の部屋の中央に祭壇が置かれ、その奥におばあちゃんが眠る。

横には6人ほどで食事がとれそうなこれまた大きなダイニングテーブル。
さらにその横にはちょっとしたキッチン。奥にいくとベット2台が置かれた寝室まである。浴室つきのバスルームまで完備してあり、ここに住んでも問題ないというくらいの充実ぶり。

これは本当に一番安いプランなのだろうか。
と頭の中が金のことばかりで、おばあちゃんには申し訳ない。しかし、じいちゃんのときのお母さんのトラウマ話が頭から離れないのだ。

お母さんは、あまりの悲しみに判断能力が劣り、葬儀社の「これは故人のために必要です」「これもしておけばよかったと後悔しないために」といわれるがままにお願いしていたら、葬儀後の請求額をみてのけぞったと悔やんでいたからだ。ばあちゃん、ごめん、今回はなんとしても予算内で納めたい。

が、いちいちこれいくらですか?というのもいやらしいので、「寝ずの番」を一人でやることになったので、その時にスタッフの人に聞いてみた。

担当「弊社が用意している一番リーズナブルなプランのお部屋になっております。葬儀が終わるまでご自由にお使いください」←スマイル付き

ひとまず、安心。だがまだ気になること山積み。

ゆ「あの、安置料金などはいくらになりますでしょうか。それと会員だと15%割引と聞いたのですが、すべて割引対象になるのでしょうか」

担当「15%割引は●●というプランが対象でして、こちらのスモールプランは対象外でございます」

やっぱりな~。そうだろうと思った。一番安いのに15%も割引したらかなりお安いですもん。

担当「そのほかのオプションメニューについては明日、担当のものからお伝えしますね」

とのこと。ひとまず一番安いプランというのは確認したし、安置料金といってもさほど法外な値段はとらないだろうと、いやらしい価格交渉は終わりにして、ばあちゃんとの最後の夜を過ごした。

ほんとはベットがなかなか寝心地がよさげだったのでホテル感覚で寝ようかなと思うも、おばあちゃんを一人にするのはかわいそうだし、ベットで寝たら本格的に寝てしまい、寝ずの番をする意味がなくなる。おばあちゃんの横で、ごろんとなって眠りについた。

翌朝。

担当者から料金表を受け取った。さらに、葬儀までのスケジュールや死亡診断書のコピーなど今後必要になるもの一式も用意してくるさすがのプロフェッショナルぶり。

その時に一緒に手渡されたのが記録書類箱と書かれた、A4サイズのご立派な箱。

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書類などをこの箱にさりげなく入れ

「どうぞお使いください」

と手渡された。セットに入っているとはいえ、この箱、仰々しいし、置き場所に困るくらい固いし大きいし、ご親切にありがたいけれども、クリアファイルでいいんだけどな~と思うも、どうぞって言われたもんだからありがたく受け取る。

今回、葬儀はしなかったので、3日ほどでスムーズに納骨まで終えた。

納棺師の方がキレイにお化粧をしてくれたのでお別れをするときのおばあちゃんは秋田美人そのもの。枕飾りの花瓶花も清楚で、美しくお別れができた。これも一重に葬儀社のおかげ。ありがとうございます!と気持ちよく終わったのだが、正月に帰省した際に母から見せられた請求書をみてひっくり返った。

ご親切に「どうぞお使いください」と手渡された記録書類箱が7000円もしたのだ。
もらったときに置き場所に困るな~と感じたとおり、今でもどこに置いていいかわからないほどの存在感を示している。

さらに、「安心してお使いください」と言われたから、本当に安心して押し入れに入っていた掛布団を借りたら、それも請求され、使わなかったものの、ベットルームも利用したら請求されるところだった。危なすぎる。

さらにバスルームの使用は無料だが、タオルを使ったら有料。その違いは何?

は!もしかしてキッチンにおいていた山崎の食パンも有料じゃ?!と実は朝、腐るともったいないでしょとパクパク食べていたのだが、パンはサービスだったらしい。セーフ!

ご自由にお使いくださいなんて言われたから、信じて自由に使ったら全部有料というからくり。安いものには裏がある。安物買いの銭失いだ。


まあ、確かに
「この記録書類箱は7000円します。ベットルームの利用は2000円です」

といちいち説明されるとげんなりしそうだけど、だからといって、どうぞご自由にお使いくださいが有料とは一体。

もう使ってしまったし、仕方ないが、せめて料金表をみせるべきでは?

今回利用した葬儀社のHPには

ご家族の葬式に対する思いはそれぞれ違うもの。
あとで、「こうしてあげればよかった」
と悔いが残らないように、どんな小さな疑問、気になることでも担当者にお問い合わせください。

とあった。

そういうことか・・・聞かなければ答えないよというからくり。
こうしてあげればよかったというのはなく、逆にコロナ禍の中でも、しっかり対応してくれ、祭壇やお花も華美になりすぎず、上品に飾りつけられていたのはとても感動した。

とはいえだ!

いつもは気になることは解決するまでしつこく聞くのだが、さすがに身内の死という一生に数回しか発生しないレアケースのときは、そこまで聞くのもお下劣かなと躊躇してしまうし、そもそもそこまで頭が回らなかった。

最近、CMで「小さなお葬式は10万円~」とCMしているのを見るが、小さくする予定が大きくならないように、日頃から備えることは重要だなと改めて思った。あと10万円~の「~」が曲者だ。

昨今、終活やらエンディングノートやら身内に迷惑をかけないためにも「自分の死」についての備えが重要と言われているが身をもって実感した。

葬儀だけでなく、枕経、塔婆、戒名などなど、それ以外にかかった費用を合計してみるとこれがなかなかの値段。墓石彫りもまあまあな値段だったため

「私、彫ろうか?」

と提案したものの、田舎だから近所や親戚の手前、それはやめてくれと、全力で拒否られた。一通り、きちんとやらねば、とあれやこれやに費やす母。これから生きていかなければいけない人のほうが大事ではと言いたかったがやめておいた。

それにしてもこの自由に使っていいといわれた記録書類箱。
ただの箱なのになかなかのお値段だし、いろんな意味で忘れられない箱になったので両親に
「せっかくだから、私に伝えたいこと書いて入れておいて」
と頼んで、帰ってきた。

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