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10年間のデザイン事務所運営を経て事業会社にJoinしたデザイナーが今、思うこと

こんにちは!ユーザベースでマーケティング/ブランディングまわりのデザインをしているデザイナーの三宅佑樹( @Yuki_Miyake )と申します。

久しぶりのnoteで感慨深いです・・。2-3年前によく書いていたのですが、中には沢山の方にスキをしていただいた記事もあって、今でも時々Twitterでシェアしていただくことがあって本当に有難い限りです。今回、所属するユーザベースのデザイン組織が始めた情報発信の取り組みの一環で、再び筆をとることになりました。

デザイナーのよくあるキャリアは、デザイン事務所や制作会社、事業会社などに数年勤めた後に独立して自分の事務所を構える、というものだと思うのですが、私はその逆で、10年間自分の事務所をやった後に現在勤めるユーザベースにJoinしました。ちょっと珍しいケースだと思うのですが、「独立からのインハウス」を経験して今思うこと、について書いてみたいと思います。

夢の始まりと終わり

まずは独立時代のお話を少し。デザイン学校を卒業する頃、もちろん最初は私もどこかの事務所で下積みをと考えていたのですが、行きたい会社の2社がどちらも採用募集をしていませんでした。でもどうしてもその2社のどちらかに行きたくて、自分の想いの丈を暑苦しく綴ったお手紙を書いて郵送してみたところ、幸いなことに2社ともお会いいただけることになりました。

1社はやはり採用枠を新たに作るのは難しいとのお返事で、ポートフォリオのレビューだけしていただき、もう1社は採用選抜目的の短期インターンに特別に参加させていただけたりもしたのですが、最終的には残念ながらご縁がない、という結果になりました。

結果の電話を受けた日の夜、布団に寝転びながら天井を見つめている時、ポートフォリオを見てもらった4-5人くらいの人たち(行きたかった1社の方含む)が皆なぜか口を揃えて「なんかもう自分で仕事出来ちゃいそうだよね」と言っていたことが頭の中で引っかかり、「自分でやってみるか!」と思ってしまったんですね。まさに若気の至りとしか言いようがないです(笑)。2009年、26歳の時でした。

早速次の日にはデザイン学校時代にアルバイトをしていた会社の社長に電話をし、「何かお仕事ありませんか?」といって最初のお仕事をいただきました。横浜にある実家の4畳半の自室を仕事部屋にして、いきなりデザインの仕事が沢山あるわけでもないのでテープ起こしのアルバイトもしながら資金を貯めて、2年後には東京で自宅兼事務所という形で一人暮らしを始め、その3年後には法人化して独立した事務所を借りました。

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事務所の内観(夜暗かったなぁ・・笑)

もともと大学は経済学科を出て都市銀行に勤めていた経験もあったので、キャリアの最初の頃から「ビジネスとデザインの融合」みたいなことを考えていて、iPhoneの普及と米国のテックスタートアップの隆盛を見てそこにテクノロジーも加え、今で言うBTC(Business-Technology-Creative)人材を集めたデザイン会社を作ることを目指していました。自分が人生で初めて本気で目指せる夢を見つけ、スピードは遅いながらも地道に一歩ずつ目標に向かって前に進んでいることに充実感を感じながら生活していました。

しかし、細かい説明は省略しますが、結果から言うとその後思うように成長を果たせず、その夢の実現を断念せざるを得ない状況になりました。「この仕事が決まれば次のステップへの道が開けそうだ」と思っていた複数の大型案件を続けて失注し、(今思えばですが)そもそもそうした年に1-2回の大型案件に期待せずとも日頃から高頻度でチャンスが来るような仕組みを作り出しておかなければいけないのですが、当時はそうした視点も持ち合わせておらず、じわりじわりと明るい未来が想像しにくい状況になっていって、「このまま続けることが本当に自分の人生にとって良いのだろうか」「一回区切りをつけた方がよいかもしれない」と考えるようになりました。悩み始めた時期の3ヶ月後にはデザイン事務所を始めて丸10年という区切りを迎えようとしていたことも背景にありました。

「やめよう」と決断した時のことは忘れられないです。10年間の色々なシーンが走馬灯のように駆け巡って、寂しさなのか、悔しさなのか、色んなものが入り混じった感情で胸がいっぱいになりました(というか、泣きました笑)。初めて仕事を納品してフィーをいただいた時のこと、デザインだけでご飯が食べられるようになった時のこと、デスクの下に布団を敷いて寝起きしていた頃のこと、自宅とは別に事務所を借りられた時のこと、アルバイトを採用できた時のこと・・

当時は必死にやっていたつもりでしたが、今振り返ると自分が気づいていなかった視点も本当に沢山あるなと思います。年月が経って分かったこと、また転職して今の環境に移ったことで気づけたこともありました。

ユーザベースへのJoin

次のキャリアについて模索する中で、twitterやnoteで発信をする過程で知り合っていたデザイナーの平野さん(現・B2B SaaS Business CDO)がユーザベースにJoinしたと聞き、転職活動の仕方について相談してみようと連絡したところ、「今募集してるから遊びに来なよ」と言われ、カジュアル面談を受けたのがユーザベースとの出会いでした。

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他に2社内定をいただいていた会社もあったのですが、面接の過程で会った人が全員飾らずに素を見せている感じがした(それが心地良く、健全な空気が感じられた)こと、オフィスを訪れた時に自分が働いているイメージが想像できたこと(会社ごとにオフィスの空気感ってありますよね)、元々知り合いだった平野さんがいたという安心感がユーザベースを選んだ主な理由です。

複数のSaaS事業がある中で、最も緊急でグラフィック系のデザイナーを必要としていた株式会社FORCAS(※2021年4月1日に株式会社ユーザベースに法人統合)にJoinすることになりました。

入社後に体験したこと・感じたことを、独立時代との比較をベースに書いてみたいと思います。

スピードで驚かす

入社日が2019年の5月16日。その2ヶ月後の7月24日には虎ノ門ヒルズフォーラムの会場3つを使用して来場者1,000人以上を迎える大規模イベント「SaaSway Conference」の開催が予定されていました。

入社初日から早速打合せに参加。INITIALという別事業に集中するためにFORCASを離れる予定だった前任デザイナーの廣田さんの後を継ぎ、それから本番までの間に計156個のグラフィック&ノベルティの制作、そして空間のディレクションを行う嵐のような日々が始まりました。

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サンプルなどが散乱していた当時の机の上

入社したてでプロジェクトの背景が全然分からないのでSlackを遡って必死に情報をキャッチアップしながら、とにかくやるべきことをリストアップしてデザインし、締切の早いものから1つ1つ終わらせていきます。リソース的に厳しくて作るのを諦めようとしていたアイテムがあり、入稿締切当日の朝に「やっぱり作るか!」と決めて急いでデザインして作ったら当日それが会場の盛り上げに大貢献した、といったこともあったりしました。さらにこれらとはまた別に、通常の日々のマーケティング活動やHR・PR関連のデザイン業務も同時に担う必要があり、今思えばどうやって乗り越えたのかよく分かりません(笑)。

ユーザベースが大切にする共通の価値観「7バリュー」の1つ「スピードで驚かす」を入社早々身をもって知ることになったイベントでした。自分で事務所をやっていた頃もそれなりに忙しくしていたつもりでしたが、その数倍は慌ただしく、成長企業のスピード感はここまで速いのかと驚きました。(ちなみに当時FORCAS単体の社員数は35人ほど)

そうして出来上がったイベントの会場が↓こちら。

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SaaSwayのクリエイティブについては弊社B2B SaaS Business CMOの酒居さんのこちらのnoteに詳しいです。


異能は才能

これも「7バリュー」の1つですが、ユーザベースには「異能は才能」という言葉があります。

異能は才能
異能の集まりには、何が飛び出すかわからないパワーがある。私たちは価値観、人種、宗教、性別、性的指向の違いを認め合い、互いに尊重することで、未来を動かす力を生み出していく。そのために、思ったことはダイレクトに伝える。フェアでオープンなコミュニケーションを徹底する。

数学者を目指していた人、大学院で宇宙物理学を専攻して人工衛星の打ち上げが趣味の人、機械学習のエキスパートでYouTuberもやっている人といった経歴も、曖昧なふわっとした説明でも瞬時に全てを理解してしまう人、複雑に絡まった話を紐解いてネクストアクションに落とし込める人、いつも明るく元気に振る舞えて周りをモチベートできる人といった才能も、金融、コンサル、伝統的大企業、成長ベンチャーといった職歴も、本当に多種多様でバラエティに富んだ仲間が集まっています。

こんな多様な個性を持ったメンバー同士が、上記にもある通り「オープンなコミュニケーション」を日常的に交わしています。3ヶ月ごとに360度フィードバックで役職関係なく様々な同僚から良い面も伸び代もストレートにフィードバックを受けますし、SaaS事業の方では全社員の給与が社内に公開されていたり、SaaS Design Divisionでは細かい評価項目についてデザイナー全員がそれぞれどの点数で評価されているかも分かります。その結果どうなるかというと、(これは個人的な理解ですが)内省の機会が増え、自分をより深く知り、他者と補完関係を築いたり問題解決に向けた建設的な議論をしやすくなると思います。

デザイン事務所をやっていた頃、自分自身と向き合う時間はたっぷりありましたが、他者の存在や、他者とのコミュニケーション、他者からのフィードバックを契機に自分像を見つめる機会はあまり多くはなかったので、今の環境は独立時代よりも自分について気づきを得やすい環境だなと感じています。

自己認識


事業を伸ばす合理的な仕組み

伝統的なデザインの世界では「デザイナーは営業なんてしないものだ。実績を見て向こうから依頼の来た仕事でないと良いものはつくれない」ということを言う人もいます。自分も身近な大先輩のデザイナーがそう言っていたこともあり、この考えにかなり影響を受けていました。今思えば自分はそれを、苦手意識のある営業活動を避けるための口実にしてしまっていたような気もします。

そうした伝統的なデザインの世界から移ってきたこともあり、IT企業で合理的・科学的に展開される営業・マーケティング活動が自分の目には非常に新鮮に映りました。

SaaS業界の方にはお馴染みの「THE MODEL」と呼ばれる協業体制でマーケティング-インサイドセールス-フィールドセールス-カスタマーサクセスが連携し、リード→商談→有効商談→受注→継続の各ステップの数値をモニタリングしてリスクがあれば代替になるリカバリー策を打ちながら確実に目標にミートさせることを目指す。

「この光景はデザイン事務所をやっていた頃に見たかった!」と思いました(笑) これを間近で見られる環境で仕事ができていることは、自分の今後のキャリアにとっても非常に大きな資産だと感じています。

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FORCASのセミナー告知バナー(自分がデザインしたもの)

独立時代を改めて振り返って

改めて振り返ってみると、自分の名前と腕だけで仕事をいただくということは冷静に考えて凄いことだなと感じます。デザイン学校の同期で自分のデザイン事務所を設立して長いこと続けている友人が何人かいるのですが、本当に尊敬しかありません。

もちろん、「今思えばもっとこうすればよかった」と思うポイントは沢山あります。実はそのポイントを整理して最初「今ならこうする7つのポイント!」みたいな感じでつらつらと書き連ねていたのですが、完全に「言うは易し」だと思ったので、バッサリ消しました(笑)。大体のことが「分かっていても出来ない」から難しかったんだよな...と振り返ってみて思うので。次に自分が何か大きなチャレンジをする際に活かして、うまくいったらその時に書きたいと思います。

若気の至りで無謀な形で始めてしまいましたし、生活や人生の基盤を築く20代後半〜30代半ばをもっと安定した環境で過ごしていたら...と思う瞬間が全くないわけではないですが、あのタイミングでないと始められなかったかもしれないですし、10年間で蓄積できた精神力や技術力は今の環境でも活きていると思うので、後悔は全くしていません。難しいことにチャレンジしたがる性格なので、この経験とユーザベースで得た学びをもとに、またいつか大きな挑戦ができたらと考えています。

DESIGN BASEについて

最後に、自分が所属しているUzabase SaaS Design Division -DESIGN BASE-のご紹介をしておきたいと思います。

もともとユーザベースのSaaS事業では、SPEEDA、FORCAS、INITIALという各プロダクトごとに組織が分かれ、デザイナーもバラバラに散らばっていました。それを昨年の4月に統合する形で作ったデザイン組織がSaaS Design Divisionで、「DESIGN BASE」というあだ名で呼んでいます。

このデザイン組織も会社全体と同じく異能の集まりで、経歴も専門分野も才能も様々なデザイナーが集まり、日々バタバタと賑やかに働いています。

DESIGN BASE MAGAZINE」にまとめられている記事を読むと、DESIGN BASEの雰囲気、デザイナーとしてユーザベースで働くということがどういう感じかがお分かりいただけるかと思うので、ぜひご覧ください!毎週月曜日に新しい記事が投稿されます。

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
いかがでしたでしょうか。

これからちょくちょくTwitterでの発信も復活させていきたいと思うのでよければぜひフォローしていただければ幸いです!
Twitter:@yuki_miyake

ではでは!

Cover Design: Kurumi Fujiwara
SaaSway Logo & Key visual: Naomi Hirota


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