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123. 失敗を恐れないようになるには

「失敗を恐れるな」

きっと多くの人が言われたことのあるワードではないでしょうか。ただ、この言葉を聞いた時、「そんなこと言われたって失敗したら実際嫌だし・・」と考えることが少なくないと思います。

今回は、そんな誰しもが直面する「失敗」というものについて、自分自身の考えを掘り進めていきたいと思います。

そもそも失敗ってなんだろう

「失敗」という言葉を辞書で引くと、

物事をやりそこなうこと。方法や目的を誤って良い結果が得られないこと。しくじること。
(コトバンクより)

と書かれています。つまり、失敗が怖いというのは、「物事をやりそこなうことが怖い、方法や目的を誤って良い結果が得られないことが怖い、しくじることが怖い」という状態を指します。

しかし、僕が「失敗」という言葉を人から聞いた時に真っ先に考えることがあります。これはあくまえ僕の仮説ですが、

「人は、失敗することが怖いのではなく、失敗した結果自分が恥ずかしい思いをすることが怖い」

と考えているのではないかということです。つまり、何かミスを犯すこと自体に恐怖を抱くというよりは、そのあとに自分や自分の周りに起こりうる様々なネガティブな反応に対して嫌悪感や恐怖感を抱いているのではないか、ということです。いい結果が得られないことが怖いのではなく、いい結果を得られなかった自分が直面することになる恥じらいや周りの目、不安や気分の重さに対して「怖い」と感じているのではないでしょうか。

世の中で言われている「失敗」は、その行動自体は単なる結果でしかなく、そのあとの自分や周りのリアクションが、その結果を「上手くいかなかった」ととらえてしまっていることが多いかもしれません。

一つ例を出します。例えば、試合中に決定的シュートチャンスを外してしまったとします。「シュートチャンスを外す」という行為自体はあくまで一つの結果でしかありませんが、そのあとに「コーチからの信頼を失う」とか「ファンからブーイングを受ける」とか「評価が下がる」といった出来事が自分の周りで起こります。そして周りだけでなくその選手自身が、今まで持っていた自信を失うなんてこともあります。行動の結果自体ではなく、その周辺でネガティブな意味がどんどん後付けされていく感じです。

これが、僕が勝手に考える、失敗のメカニズムです。

逆に言えば、このメカニズムを理解できれば、少し気は楽になるのではないかと思っています。つまり、都合よく自分でとらえてしまうということです。今までの自分は、「失敗をした後に自分に起こる恥ずかしさに対して恐怖を抱いていた」という事を理解できれば、それだけでも大きく一歩前に進めると僕は思っています。なぜなら、そのアクション自体はただの物事の結果でありそこに意味はないことを認識できるからです。「失敗したときの感情というのは、勝手に自分や周りが後付けしているものだった」と思えば、少し気持ちがふっと軽くなる気がします。

一方で、スポーツの世界の現実を話すと、自分のプレイするレベルが高くなればなるほどコーチの要求度合いも上がるし、ミスを繰り返す選手は当たり前のように出増機会を減らされていきます。そして、そういった環境になれば「上手くなるまで何度もミスしていいよ。出来るようになるまで待ち続けるから安心して何回もチャレンジしてね!」と、優しく自分を見守りながら使い続けてくれるコーチは存在しません。

そういった環境の中で結果を残していくためには、失敗するリスクがあったとしてもチャレンジをし続ける必要があります。それでは、失敗を恐れずに挑戦し続けられるようになるには、どうすればよいのでしょうか。

失敗を恐れない状態とは

自分が何かチャレンジをしたときに、多くの人は、その結果自分は成功したか失敗したかを二極的に考えることが多いと思います。実際、主観的にも客観的にも、「上手くいった!」「ダメだった」という評価は出てきてしまうと思います。

そんな中で、今まで自分が自然と行っていたのではないかと思える一文が、とある本に出てきました。

それは、実験的マインドセットです。

最難関のリーダーシップ:変革をやり遂げる意志とスキル(ロナルド・A・ハイフェッツ他)という本の中で、著者は実験的マインドセットについてこう語っています。

実験的なマインドセットとは、自分の考えた介入に尽力しながらも、それに固執しないということだ。たとえ失敗しても、それを守らなければという気持ちに駆られることはない。その気持ちを持つことで、他の想定外の可能性も受け入れやすくなる。試しにやってみるというマインドセットは、学習しようという意欲にもつながる。自分が間違っているかもしれないという可能性も受け入れられる。

とあります。

この実験的マインドセット、とっても便利だと思います。どんな行動も「試している」という風に考えることが出来れば自分がミスをする可能性を自然と受け入れることが出来るし、上手くいかなかったとしても「これをやるとうまくいかないんだ」ということを学ぶ機会につながります。

この一節に出てきた「自分が間違っているかもしれないという可能性を受け入れる」ということが僕はめちゃくちゃ大事なところだと思っています。

同著の中で、スコット・フィッツジェラルド (1894 – 1940)というアメリカの失われた世代(Lost Generation)を代表する作家の一人の言葉が紹介されています。

The test of a first-rate intelligence is the ability to hold two opposed ideas in mind at the same time and still retain the ability to function.

一流の知性とは、同時に二つの相反する考えを持ちながら、その両方を機能させる能力である。

つまり、失敗を恐れないという状態は、自分が間違っているかもしれないという状態と自分が正しいと思っている二つの状態を同時に持っておくことがポイントになります。

これはなかなかに斬新なアイデアです。普通、「自分が上手くいくことだけをイメージしよう!」と言ったり「成功することだけを考えよう!」と言われることが多い中で、「これは間違っているかもしれない」という思いを同時に持っておくということです。

きっとこの考え方については人それぞれ賛否両論あるかと思います。ただ、この考え方を持つことが出来れば、自分の中での「成功の幅」が広がり、また、より簡単に失敗を許容することが出来るようになると思います。

失敗を許容することが出来るようになるということは、次への踏み出しが早くなるということです。「なんであの時うまくできなかったんだ!」と引きづってしまうことが多いですが、ミスした自分を許すことは、前に進む一つのきっかけとなります。

何かを決断しようとするときに、「どちらかが正しいかを考えるんじゃなくて、選んだ道を正しいものにしよう」という言葉を聞くことがあると思います。もちろん素晴らしい考えですが、今の僕の考えとしては、先ほど紹介した本にも出てきた「やると決めた時点で正しいと信じ、同時に、自分が間違っているかもしれない可能性を否定しない」というのが一番しっくり来ています。

初めての試みや、勇気をもって何かにチャレンジをするときに、「成功させなきゃ」というよりも「今、自分は新しいことに挑戦している最中なんだ!」というマインドでいることが出来れば、仮に失敗したとしてもそんな自分を許容しやすくなるはずです。

これを繰り返していけば、失敗すること自体に恐怖心を抱くことは少なくなっていく気がします。

これが実験的マインドセットです。

チャレンジできる瞬間はたくさんある

自分自身の今までの軌跡を振り返ると、人生の様々な場面で決断を繰り返してきたわけですが、その結果、上手くいったこともあれば、「ミスったなあ」と思うこともたくさんあります。何かミスをした当時の自分は「終わった。この先どうしよう…」と考えることもあったけど、今思い返せば笑い話になる内容がほとんどです。スポーツでも、日常でも、ビジネスでも、僕らは様々な決断や挑戦をしていくわけですが、人生という長いスパンで見たら、そのどれもが実験のようなものです。そう思えば、心に余裕が出てきます。

選択をした結果、自分は成功した、失敗したと考えてしまうことが多いと思います。しかし、そもそも選択をするという行動自体が、自分自身のやりたいことや叶えたいものを理解することだったり、自らが今まで気づいていなかった内なる思いを明確にしてくれるツールの一つであるという風に考えるのも、素敵な考えに思えませんか。

この文章を読んでくださった皆さんが、少しでも新たな一歩を踏み出すことに対して勇気や安心感を持つことが出来たら、それほど嬉しいことはありません。

今回も最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。

それではみなさん、良いお年を!

三浦優希


最難関のリーダーシップ ― 変革をやり遂げる意志とスキル
 ロナルド・A・ハイフェッツ
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