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145. 人に教える際の工夫4選

みなさんこんにちは!三浦優希です。

先日、こんな質問をいただきました。

「三浦選手が自分にとっては苦労せずにできたことを、人に教える際にどんな工夫をされていますか?」

今日は、この質問について、考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

初めて経験する人に伝える時のコツ

この、「自分にとっては楽に出来たことを、人に教えるにはどうしたら良いか」というのは、僕自身も日々考えさせられている問いです。

というのも、僕は比較的に初心者のアイスホッケー選手の方から質問を頂いたり、練習をしたりすることも多いので、単純に「どうやったら○○ができるようになりますか?」というクエスチョンを受けることが少なくないからです。

この時に、ただ自分が普段当たり前にやっている(できている)ことを自分目線だけで伝えたとしても、それは相手にとっては良いアドバイスにはならないかもしれません。

そこで僕は、相手に教える際、これらの4つのポイントを主に意識しています。

1. 動作をなるべく細かく分解して説明する
2. オノマトペの使用タイミングを考える
3. 例えやイメージを積極的に用いる
4. 感覚はあくまで「僕個人の感覚」として捉えてもらう


というものです。ひとつずつ説明していきます。

1. 動作をなるべく細かく分解して説明する

まず、「動作を分解して説明する」というもの。これは読んで字のごとく、一つの動きをいくつかのパートに分けながら言語化していくことです。例えば、横向きのシュートを打つ時であれば、「パックを引いて体重を乗せて腕を振って打つんだよ」というのではなく、「最初にパックを後ろ足側に引く。その時に右足に体重を乗せて、そこから今度はパックを左に運ぶと同時に体重も左足に移動させる。その時にトップハンド(上の手)を大きく前に出すことで、スティックと体に隙間を作る。移動させてきた体重とその勢いを使って、ボトムハンド(下の手)を前に押し、トップハンド(上の手)を引くことで、シュートが放たれる。」

といった具合に、一度細かく動作の順番を確認し合うことが大事だと思っています。もちろん、細かくしすぎても、混乱を招いてしまうことになるので、適度に分解してあげることがポイントです。

普段自分が当たり前に出来ていることを分解しながら話すことは、意外と難しいことです。意識していなくても「出来てしまう」動作を人に伝える場合は、まずは自分自身がそのムーブメントを実際に行い、時には映像で確認し、時にはスローモーションで動作を振り返り、一つ一つの要素を実況していくような感覚を持っています。

そして、自分の中で動きをしっかりと整理したものを、相手にわかりやすく伝えることを心がけています。

実際に教える際は、全体の動き→分解した動き→全体の動き、といった流れで細かいところを確認しつつも、全体としてのムーブメント(シュートフォームなど)を相手が捉えられるように意識しています。

2. オノマトペの使用タイミングを考える

続いて「オノマトペの使用タイミング」についてですが、これも、わかりやすく伝えるために意識していることの一つです。例えばシュートの時、「そこでバーンと打つ!」とだけ言っても、それは人によって捉え方が違うものです。

その代わりに、「腰を回転させながらスティックを思い切り振り切るんだよ」と言ったりします。

ただ、ここで僕が、「オノマトペを使わない」ではなく「使用タイミングを考える」と言っていることには訳があります。なぜなら、オノマトペを使うことで、感覚がより分かりやすく得られる時もあるからです。

僕の専属スケーティングコーチは、これがとっても上手でした。その方はフィギュアコーチでしたが、僕に一通りの動作を教え、それを実際に僕がやって、まだ動作がぎこちない時、「もっと膝をフワフワ使ってみよう」と言ったりします。先生のこのアドバイスを聞いてから、同じことをやると、今度はうまく出来た、なんてこともたくさんありました。

オノマトペ一辺倒になるのではなく、イメージ通りの動きができない時に、あくまで感覚を捉えやすくするための方法として、使っていくというのが良いかと思います。

3. 例えやイメージを積極的に用いる

続いて、「例えを積極的に用いること」についてです。これは、そのプレーのイメージを伝える上でとっても大切にしています。

特に初心者の方々にとって、氷上での動きは「非日常」の状態がほとんどです。動作を伝えたとしても、未知の経験なので、すぐにイメージが湧きません。そこで、誰もが経験したことのがあったり、想像しやすい動作や力の入れ方などに例えてあげることで、モヤモヤしていた感覚をクリアにできるようにします。

例えば、アイスホッケーにはクロスオーバーステップというものがあります。これは、足をクロスさせながら前に進んでいく方法を言いますが、これを練習する際に、氷に書いてある大きな円(サークル)を使ったりします。クロスオーバーをする際には、氷を縦に蹴るよりも、横に押してあげると速く進むのですが、この横に押すという感覚が掴みづらいことがあります。

この時に、足の使い方を詳しく教えるよりも「氷に書いてある円を外側に大きく広げて円を大きくしていく感じだよ」と伝えると、自然と正しい足の使い方(氷への力の使い方)を学ぶことが出来たりします。

このほかにも、例えば超入門編にはなりますが、スティックをどっちのハンドで握ればいいかわからないという人に、「野球の時バットどうやって握る?」とか「ほうきをどうやって持つ?」と聞くことなどもあります。

例えというのは、ゴールへ到達する上でとっても便利な道具だと僕は思っています。ただ、何かを何かに例えることは、実は割と難しいものです。例えを出す以上、最低でもAとBの二つ以上の事象を知っておく必要があります。

ここで、このような例えを自分がスッと伝えられるように意識していることが、読書をしたりお笑い芸人さんのツッコミなどを見ることです。

読書をしていると、「それはまるで〜のようだ」といった比喩がたくさん出てきたり、お笑い芸人さんも「〜かっ!」と誰かのボケに対して他のものを用いて例えツッコミをすることが多いです。

そういったものを目にした時は、「こんな例え方があるのか!」と感心することが多いです。

そして僕も、逆に何かを教わる際は、「それは〜をするときのイメージと近いですか?」とコーチやその道のプロに聞いたりもします。

例えを教わることで、本質を理解しやすくなることは結構多いと思っています。

4. 感覚はあくまで「僕個人の感覚」として捉えてもらう

そして最後の、「僕個人の感覚」として捉えてもらうことについてです。

これは自分が何かを人に教えさせていただく立場になった時にいつも意識していることですが、自分が伝えようとしているものは、あくまで「僕がそう思っていること」であり、すべての人にそれが当てはまるわけではないと思っています。

だからこそ、僕はなるべく、多くの人がより理解しやすく、実践しやすくなるように伝える言葉やニュアンスには気をつけて接しています。

その一言を聞くだけで、今から自分がやろうとしていることがクリアになれば、選手側にとってそれほど嬉しいことはありません。

これからも、氷の上で何かを伝えさせていただく時や、周りの人に何かを教えさせていただく時には、そのポイントを忘れないようにしたいです。

スポーツに限らず、今後も様々な現場で応用していけたらと思っています。長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

三浦優希

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