推し(仮)のおじさん①

私には推し(仮)のおじさんがいる。


なぜ単純に「推し」ではなくそのお尻に(仮)がついているのか、と疑問に感じる人ももしかしたらいるかもしれない。

人間誰しも何かしら好きなことがあって、それはコンテンツであったり、人であったり、はたまたアニメ、ジャニーズ、ゲームのようにそのものが展開されている次元だって様々だ。

私も以前は純粋に「推し」がいた。わざわざ後ろに(仮)という文字をつけなくても良いような正真正銘の推しだ。

それはゲームのキャラクターであり、そのコンテンツ自体が当時爆発的なブームを世間の中で巻き起こしていたため、そのキャラの描かれたグッズなどは金を出しさえすれば手軽に手に入れることができたし、それらを集めて人生初の痛バを生成したり、アクリルスタンドやキーホルダーを持ち歩き同じ趣味を持つ友人とともにいわゆる「推し活」なるものを行うことに一時期は精を出したものだ。しかし、それも長くは続かなかった。

私は飽き性である。そして、とてもいとたやすくダメージを受けやすい。ゲームなどの現実とは違う二次元コンテンツではまぁ極端なことを言うとキャラが死んだとか、シナリオがとんでもない方向に暴走し出し公式との解釈違いにより炎上をしてしまう、といったこともあるかもしれないが
そうはいってもそれだけである。それ以上は特にそこまで深入りをしなければ日常生活に支障をきたつことはないのだ。

だけど、それが生身の人間。しかも同じ職場で働く上司ともなると…

自分自身過去に人間を推しにして苦い思いを味わったことがあるのでそこは今非常に慎重になっているのである。しかし、私は飽き性に加えて非常に単純な人間である。

なので、少しタイプの顔、惹かれるような性格、そして優しくされると(ここ重要)すぐにコロッとその人を推しにしてしまいたくなるのだ。

それに、何よりある特定の人を推しと認定することだけで大きな心の支えを確保することが出来る。社会人なんて基本的にときめきとか楽しいこととかは皆無なので、少しでもそういった息抜きを見つけないと心が荒んで自分の中の女が死んでしまうのである。

とはいいつつ、推しをもつことはプラスな事も多い一方でリスキーさも兼ね揃えている。
一旦推しにしたはいいものの、もし何か嫌なことがあったら?ある程度信頼を置く相手なのだからもし裏切られてしまったら?普通のただの上司であればそんなの「なんだこいつ、くたばりやがれ」と言った感情を心に浮かべるだけで済むだろう。しかし、一回推しになり心の支えにしていた人にそのような事をされたら…

もうメンタルをアイスピックでメッタ刺しである。

だから私は自分のお気に入りのおじさんを
推しとはせずあくまでも推し(仮)という形にすることにしている。いってしまえばこれは自分が傷つかないための自己防衛だ。

前置きが長くなってしまったが、今日そのおじさんが会社を休んだ。理由は新型コロナワクチン接種による、副反応。何とも現代的、今最もニュースになっている理由での欠勤である。

いくら推し(仮)だとはいっても私はその人と特段仲が良いわけではなく普段からLINEなどで連絡を取り合うこともない。よって、私がその人の欠勤理由を知ったのは朝デスクで上司たちがひそひそと話している声を地獄耳で聞いたためである。

「○○さん、副反応で熱出たんだって〜」

なんだと!?熱が出ただって!?

瞬間、私の脳内には推し(仮)が発熱し
息を切らしながら苦しそうに
布団で横になっている姿を思い浮かべ、
そして少し興奮した。

彼は物静かな性格であり、人から振られないと自分からはあまり言葉を発さない。しかし電話応対の声は大きく、意外と笑い上戸で初めてそれを聞いた時は普段のイメージと遠くにあったため少しビックリしたのを覚えている。

最初は同じ部署といえどほとんど接点がなかったのだが、ある時を堺に私がその人の今まで行っていた仕事を少し引き継ぐ事が決まってから業務を通じて少しずつ交わりが増えていった。

最初は優しいな〜くらいの印象しかなかったのだが、会話の中でちょいちょいいじってくる
(例えばわざと○○しな〜などといってはその後に嘘だよ、といっておどけてみたり)

淡々とした時々よく笑う、大人しい人というイメージが自分の中で関われば関わるほど大きく変わっていったのだ。

で、その結果まんまと私はその人の沼にハマった。

年齢は自分の親とほぼ同じくらい、しかし結婚しているか、子供はいるか、ということは職場の人はほぼ知らないし気になるがだからといって何となく聞くのはきまずい。

でも顔は比較的整っていて、年の割に髪の毛も量があって、ああこの人若い頃はきっと好青年で二枚目だったのだろうなと感じざるを得ない。

最近はずっとマスクをしなければならないので正直入社してから今の今までその人の素顔を見たことはあまりないのだが、まぁ…そこまで変でない事を信じよう。

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