見出し画像

やまびこラボです

信州を拠点に活動する音楽家コレクティブ「やまびこラボ」の紹介をしつつ、信州と新しい音楽を繋ぐキーワードについて書いていきたいと思います。思いがあふれているので、若干長文です。紹介だけさらっと読みたい方は一段落だけでも読んでいって頂けたら。

わたくし、作曲家の渡辺裕紀子は長年欧州で活動し、数年前から故郷の長野県松本市を拠点に活動しています。松本真結子は長野市出身、バイオリンの加藤綾子は茅野と東京二拠点で活動しています。やまびこラボはそんな三人を中心に現在活動している音楽家のグループです。今(2023年8月現在)は2023年10月28日に向け「こども(と大人)のためのさっきょくワークショップ」を準備しています。紹介はここまでです。

メンバーの松本もわたしも長野県出身ですが、長野県出身の、というよりは田舎出身の多くの音楽家が大学進学と共に都会へ移住します。というのは、長野県には音楽大学がないからです。多くは東京や関西、または名古屋などの大都市に出ることになります。長野県は音楽環境は田舎の中では整ったほうです。音楽フェスティバルなどもありますし、多くの子供たちがここ、信州で音楽を学んでいます。しかしながら、その若い音楽家が帰ってくることは残念ながら多くありません。ここには一時的なフェスティバルはあっても、大きなシーンがないからです。

わたしは、オーストリアとドイツで10年間現代音楽というジャンルの作曲家として活動してきました。これまで住んできたどの街にも、劇場があったりオペラハウスがあったり、音楽はどんな田舎でも聞ける環境にありました。劇場がない小さな村でも教会に音楽家が来て、新しい音楽や境のない音楽のコンサートを行っていたり、住んでいる環境の中に音楽があり、アートと子供たちは近しい関係にありました。コンサートホール以外の場所で音楽イベントが行われることも多く、夏休み中の小学校がリハーサルで使われることもあったし、閉館時間の美術館や工場などもコンサート会場として多く使用されていました。とにかく身近なところに、いつでも音楽を聞ける条件が、どこの村にもありました。

大きな街で、例えばウィーンで毎年行われているウィーン・モデルンという現代音楽のフェスティバルは、もちろん会場としてウィーン楽友協会なども使っていますが、クラブや通常はジャズクラブとして使われる場所、多目的で若者が多く集うスペースなど、街のあらゆるところでジャンルの境のない音楽が演奏されていました。

コンサートホールで、何千回と演奏されているクラシックの名曲を演奏することも伝統を繋いでいくために必要なことですが、それと平行して今生まれている音楽を、コンサートホールという場所から飛び出して、様々な場所で提供する活動が多く行われていて、それは広く「音楽を聞く体験の根本」を異化させるもので、とても楽しい体験でした。ビールを飲みながらエネルギッシュな即興を聞いたり、その中に作曲された新しい作品があったりと、通常椅子に座って正装して聞くものとは違う体験が提供されていました。

わたしは自分が住む信州が、そんなオープンで、誰でも音楽を楽しむことが出来る、そんな環境になればいいなと思っています。ここはそれができる場所なんじゃないかと今思っているところなんです。場所はありますし、何よりここには自然があります。わたしたちは情報からだけでなく、自然から多くのことを学ぶことが出来ます。戦後の現代音楽の発展がナショナリズムと繋がっていることは周知の通りですが、大きな代名詞を背負うことなく、自然の中から音を見つけ出すことができると思っています。そして信州にいる多くの若い若い音楽家と共にそんな新しい音楽を見出していけると私は信じています。今ないのは、そんな彼女・彼らが長く広く活躍できる場所だけです。

というわけで、長野出身・長野に所縁のある素晴らしい、私より若い音楽家の二人に声をかけて、「やまびこラボ」をスタートさせました。まだ活動は始まったばかりです。まずは、小さな音楽家のための場所を作ること。そして、大人もそこへ巻き込んでいきたいと思います。「やまびこラボ」としてスタートは、2023年10月28日、我らがあがたの森公園が舞台です。ぜひ、多くの皆さんに、このスタートを体験してもらいたいと思います。現在、参加する子供たち、見学したい大人も募集しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。詳細は以下の記事からどうぞ。

こちらのマガジンでは、今の信州について、また自然と音楽についてスローペースで書いていきたいと思います。マガジン、チラチラチェックしてもらえたら嬉しいです。


若手作曲家のプラットフォームになるような場の提供を目指しています。一緒にシーンを盛り上げていきましょう。活動を応援したい方、ぜひサポートお願いします!