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血のつながりは、偶然。

街中にいる人に声をかけ、OKをもらえたら付いていき、取材をするテレビ番組。それを何気なく見ていたときのこと。

小学生の男の子と、そのお母さん、そして半年ほど同居している男性が登場していた。おそらく、近いうちにお母さんが再婚するであろう相手。

男の子は、カメラがまわっている間ずっとニコニコしている。その男性のことも、名前で呼んでいた。親しそう。
3人でよく一緒に出掛けているというエピソードも紹介された。ほんとうに仲が良さそう。

男の子が男性に会ったとき、「お母さんは肉料理しか作らないんだよ…」という話をしたらしい。それを聞いてお母さんはびっくりしたと。
そんなふうに、初めての人に対して自分が思っていることを言うことは、今までなかったと。


男の子は男性のことを「好き」と言っていた。
その表情からは、本当にそう思っているということが、伝わってきた。
親しみを感じ、心を開いている。

言われた男性は、ちょっぴり照れくさそうに笑ってた。

血は繋がってない。
まだ正式には再婚していないから、お父さんでもない。

その関係性に、正確な名前はない。
ただ、2人の様子を見ていると。
なんだろう、年の離れた友達同士みたいな感じの印象を受けた。


いいな、と思った。その関係性が。
周りから見ればよくわからない関係性かもしれないけど、その男の子がその男性に出会って、心からよかったな…と。


人生の中で「好き」と思える人に、いったい何人出会うのだろう。その出会いは、あまりにも貴重だ。

もちろん、そのような出会いがたくさんある人もいるだろう。しかし、自分が好きだと思える人に、なかなか出会えない人もいる。

素直に好きだと思える人に出会えた男の子は、きっと幸せなんじゃないか。
お母さんは、再婚するなら子どもを優先してくれる人でないと絶対無理、と話していた。そう考えると、男の子と男性の出会いは、お母さんのおかげとも言えるかもしれない。

私は、血のつながりにあまり意味を感じない。血のつながりがあるからなんなのだろう、と思う。

自分の家族に対して、強いつながりを感じない。
絶縁状態でもないし、ときどき実家に帰ったりして表面上は「ふつう」なのだが、その縁はとても「うすい」と感じている。唯一つながりを感じているとしたら、おばあちゃんくらいかなぁ。

みんながどう思っているのかは、全くわからない。私だけかもしれないし、家族みんなそう思っているかもしれない。でもそれぞれが独立している今、そんなことを改めて話そうということにもならない。もう「そういうものだ」と思ってしまっている。

家族の縁がうすいことにより、ものすごい孤独を感じているわけでもない。もういい大人だし、家族以外の関係性もある。もちろん、育ててもらったことへの感謝もある。
ただときどき、「家族はこうあるべき」みたいな理想を示されると違和を感じるくらいだ。うちは違ったな、と。
でもそんなことはきっと、誰にでもある。

血のつながりがあることは縁としては強く、大切であることは間違いない。
でも「血のつながりがない関係性」が、「ある関係性」よりももろいもの、軽視されるものではないとも思う。

血のつながりがある、なしに関係なく、心から信頼できる人に出会えるかどうか。心から好きだと思える人に出会えるかどうか。

そういう存在は、たくさんいなくてもいい。
誰か一人でもいい。
できるだけ小さいうちに、出会えたらいい。

生まれて最初に出会うのが家族だから、そういう存在になり得やすいというだけで、絶対に家族じゃなきゃいけないわけじゃない。
家族になることは必然ではなく、偶然。
血がつながっていることは、偶然にすぎない。


テレビに出ていた男の子が好きだと思える人に出会えたように、すべての子どもたちにとって、そのような出会いがありますように。

それを切に、願う。


そんなわけで、今日はここまで。



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