【オリジナル短編小説】Flow Flies
湖にて羽虫が揺れた。
何を求めて羽を濡らしたのか、水底の私には分からない。
あなたの子供が胸の中で、早くお帰りと囁くけれど、どこへ帰るというのか分からない。
水底だって美しいじゃない、白い子供にそう告げた。
すると、藻と岩の間から湖色の魚が顔を出す。君の手を取った者は帰り道を教えなかったみたいだね、私のお腹に顔を埋めながらそう言った。
白い子供たちは小さく叫びながら散っていく。それは水流に揺られたのか、恐ろしいものからの逃亡か。
君は夢を見てるんだね、魚は私の瞳を見つめた。
素敵でしょ?私は笑顔を作って見せた。
魚は私の、最後の笑顔をつついて消えた。
これで私も白くなる。
濁る水の底に煌めいて。
また子供のように、白く、白く。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?