見出し画像

政治家の議会での発言がざっくり分かるサイトを作ってみた@東京都中央区

 今回は、新たなサイトを作ってみたのでその紹介です。そのタイトルは「議員見える化プロジェクト@東京都中央区」。ざざっと言うと、議員さんに関する情報や発言などを分かりやすく見るためのサイトです。このサイトの概要や作成に至った背景について書いてみます。

議員見える化プロジェクト@東京都中央区

どういうサイトなの?

 まず、そもそもどういうサイトなのかについて。それぞれの議員さんを選んで、その方が議会での発言を1枚の画像として見られるようにしています。これは「ワードクラウド」という手法で、その人の議会での質問とその回答というやり取りの中で多く使われている言葉を抽出してその頻度に応じて大きさを並べるというもの。こんな感じです。対象は、わたしが住んでいる東京都中央区。

 この画像を見ることで、その人が議会でどういった発言を多くしているのかが分かります。たとえば「子育て」だったり「まちづくり」だったりといった感じで、その人が関心のあるテーマというのは言葉としても繰り返し出てきますので、大きな文字で出てくることになります。議会で多く発言をしているということはそのテーマに対して何かしらの問題意識を持っているということであって、要するにその人がどういうテーマに関心があるかということが分かるということでもあります

 議会の議事録は公開はもちろんされているので、それを見るというのは不可能ではありません。しかし、会議体ごとの逐語録しかないので、そこから傾向を見るというのはなかなか大変な作業です。

参考)中央区議会会議録(令和4年 区民文教委員会(6月28日))

 1枚の画像としてまとめてしまえば、個人ごとのおおよその概要を掴むことができますし、それを比較することも可能になります。

 もちろんそれだけで終わりではありません。もし興味関心が近い人がいたら、さらに議会の議事録の詳細を見ることもできます。また、WebサイトやSNSへのリンクも調べられる範囲で調べて掲載しています。これはブログのリンクを開いたところ。

 この他、得票数や当選順位、これまでの議会でのやり取りの文字数とその順位、政務活動費の内訳など、議員自身に関する数字で利用可能なものはできる限り持ってきています。こちらは政務活動費の内訳。

なんで作ったの?

実は身近な、政治と政治家

 このサイトを作ったきっかけは「政治にもっと関心を持ってほしい」、「そのためにはもっと気軽に調べられるメディアが必要ではないか」という思いからです。

 選挙のとき以外に政治家の人たちの存在を認識する機会は限られているのではないでしょうか。国の政治家であればまだニュースなどで顔を見る機会もありますが、地方の政治家となるとなかなか見る機会はありません。

 ただ、あなたの住んでいる自治体の子育て支援だったり各種イベントだったりという行政サービスはその「よく分からない人たち」によって生み出されています。そして、近年は自治体によって行政サービスの充実度合いが異なること、そしてそれが志のある政治家の方々によって実現できていることが少しずつ理解されるようになっています。

 特に子育ての分野で有名なのは明石市。様々な支援によって住民の圧倒的な支持を得ており、多くの人口流入とそれによる税収増などもあって、自治体経営のひとつの成功モデルとして有名です。

 このように、政治家の役割は実は非常に大きいものです。一方で、その活動はほとんど知られていません。これは政治家にとっても住民にとっても不幸な状態です

政治家にとっての不幸:選挙に勝てない

 政治家にとっての不幸は、どれだけ素晴らしい活動をしていたとしてもそれが次の選挙での勝利に必ずしも結びつかないということ。

 たいていの政治家の人たちは何かしらの思いがあって政治家となって日々活動をしていますが、すぐに目に見えるような成果が得られるわけではありません。そして、日々の地道な活動が注目を浴びることはなかなかありません。

 バズったりするのはよほどの不祥事や放言がメディアに取り上げられたときくらい。結果として本来の政治家としての活動だけでは次の選挙に生き残ることは難しく、「ご挨拶」などと称してゴリゴリの宣伝営業に終始する人が多いというのが現実です。

 このように余計な宣伝営業に汲々とせざるを得ないというのは、議会での活動やそのための調査研究などがおろそかになることにつながり、そうすると良い行政サービスが実現しないということになってしまいます。

住民にとっての不幸:行政サービスが実現しない

 住民にとっての不幸は、ちゃんと活動してくれる政治家が増えないことによって自分たちが望む行政サービスが実現しないということ。

 日々忙しく生活している中で、地元の政治や行政に関心を持つというのはわずかな時間でしかないというのが実際のところ。多くの人にとって参加の機会というのは4年に1度の選挙のときくらいではないでしょうか(前回2019年の区議選の投票率は44%程度であって、それですら半数以下というのが現実ですが)。

 そして、いざ選挙のときに数十人といる候補者の中で本当にちゃんと活動してきた人、これから活動してくれそうな人が誰なのかを正しく選ぶというのはさらに難しいことです。選挙公報やポスター、各候補者のwebサイトには良いことしか書いてませんし、何せ数が多いのでその比較を十分に行うということも大変です。

 しかし、その一人ひとりの投票という選択によって次の4年の間の「住民の代表者」は決まります。そして、経緯はどうあれそこで選ばれた人たちがその後の行政サービスの方向性を決めるようになります。その後に「何で学童保育に1年生しか入れないんだよ!」とか「臨時給付の対象が何で高齢者だけなんだよ!」とか、個別の行政サービスの中身や対象について文句が出ることもありますが、もう後の祭り。

 選挙で言っていることと、実際の議会で行っていることが必ずしも一致しないという点については先日書いた記事を一例として挙げておきます。

何を目指しているの?

 このようなお互いに不幸な状態を改善するひとつのきっかけが、政治家の方々の議会での活動を分かりやすく見せるということなのではないか。そのように考えたのがこのサービスを立ち上げてみた経緯です。

 そして、このサイトが目指すのはちゃんとした活動を行っている優秀な議員さんの活動が可視化され、その活動が住民に正当に評価されることによって優秀な議員が選ばれ、増えていくという好循環を作ることです。

負のスパイラル

 まず現状は前提として、個々の政治家が普段どういう活動をしてるのか、議会でどういう発言をしているのかなどに関心を持っている人はほぼ皆無、という状態とします。その中で起こっていることをやや単純化して示すとこのような状況ではないかと思います。

 議会での活動などををやっていてもやっていなくても住民からするとプラスにもマイナスにも影響はありません。その結果として、住民は選挙の際には知名度やそのときのイメージによって投票が行われることになります。

 このような場合、真面目に調査研究を行ったり議会で鋭い質問をしたりといったことを行うモチベーションは削がれることになります。そんなことに時間をかけたところで次の選挙で勝てるかどうかは影響しないためです。次の選挙に勝つことが第一の目的である政治家としては、議会の活動に注力するよりは広報活動なり組織票を固めるなりといった本来の役割以外の活動に注力するというのが合理的な選択です。この結果、議会の多くはその手の人たちで埋め尽くされてしまうことになります。

正のスパイラル

 一方で、議会で誰がどういうことをやっているのかについて住民が多少なりとも理解できるようになった場合。住民としては、自分が不満を持っていたり強い希望を持っている問題やテーマについて質問なり提案をしている議員を応援したいという気持ちになるというのは自然なことでしょう。

 住民の側がこのように単純な広報活動やイメージだけでなくて実際の議会活動にまでを見て投票行動を行う場合、政治家の方もこれまでの行動を改めざるを得ません。あまり議会活動をおろそかにしてしまうと、それによって住民からネガティブな評価を得てしまうためです。そうすると、次の選挙に勝つという至上命題が果たされなくなることになることから、政治家は広報活動を続けるにしても議会活動の方にも注力せざるを得ないことになります。

 そうすれば、それぞれの議員によって関心のあるテーマは様々でしょうが、まずは議会が活性化することが期待できるでしょう。さらに、議会活動の良し悪しが評価されるようになることで、(宣伝営業でも組織票固めのスキルでなく)調査研究や政策提案に長けた政治家が増えるということも期待できるようになります。

議会活動だけが政治家の評価なのか?

 このサイトを公開した際、議会には事前審査という慣例があり、議長や幹事長、委員長などといった立場の人はそこで質疑を行うことから議会で議事録として残る部分のみを取り上げて政治家の活動として評価するのは不適切であるといった趣旨のコメントをいただきました。

 このツイートへの返信という形でもお示ししておりますが、わたしのスタンスとしては今回の取組はあくまで数ある中での一つの評価軸であるということ。それがすべての評価軸である!とは思ってないですし、書いてもいないはずです。だからこそWebサイトやSNSなどのリンクもサイト上には掲載しています。ひとつの取っ掛かりとしてワードクラウドでそれぞれの議員を見てもらって、その上で気になったらより詳しく他の発信を見ていただけたらと考えています。

 ただ、後の評価のために意思決定過程を検証可能にしておくという観点からすると記録に残さない形で議論が進められてしまうというのは問題で、事前審査というプロセスは慣例であろうとも改めていく必要があろうかと思います。

最後に

 今回は、わたしが作ってみた議員さんの活動を見られるサイトについての概要と作った経緯、その目指すところについて書いてきました。

 わたし自身も実は選挙に出てみた側の人間だったりしまして、このサイトのコンセプトにはそのときの「選挙のジョーシキ」の類いへの違和感が強烈に反映されています。その最たるものはまともな活動をしている人ほど選挙に勝てない、ということ。

 その人の中身や政策が票に結びつくなどということはなく、まずは戸別訪問なり朝夜の駅頭演説なりでとにかく身を粉にして顔を売って、選挙本番となれば朝から晩まで選挙カーで騒音を撒き散らすというのがこの世界の定石です。

 しかし、やはりわたしはそういった選挙、つまり政治家の選ばれ方はおかしいし、そのような選ばれ方で選ばれた政治家によって抜本的に世の中が変わるとは思えません。その人がこれまでにどのようなテーマに関心を持ち、どういった活動を行ってきたのかという点によって評価されるべきものと考えます。

 正直言って簡単にそんなことが実現できるとは考えていませんので、今回のサイトはその第一歩という位置づけです。ある程度簡単にそれぞれの政治家の情報を見られるようになることで、少しでも議会でのやり取りの中身についての議論が生まれ、さらにはこれまであまり関心を持ってなかった人が政治に新たに触れるようになることを期待しています。


いいなと思ったら応援しよう!