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緑地帯 映画監督へ(中国新聞にて)7話

2作目は大手の松竹から声が掛かった。前作の「おじいちゃん、死んじゃったって。」を見た制作担当者から「さんかく窓の外側は夜」の監督を僕にやってほしいとオファーがあったのだ。
 キャスティング段階から関わり、プロデューサーたちと意見を交わした。志尊淳や岡田将生といった旬の俳優を起用し、大ヒット作を目指した。この作品は全国の300を超える映画館が上映してくれ、初日は大ヒット記録を塗り替えている「鬼滅の刃」を抜いた。しかし折しも新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が全国に発令された直後。映画館を訪れる観客自体が減り、残念ながら目標人数には達しなかった。
 上映が始まると、毎日、全国の動員数がメールで送られてきた。ここでこけると次がないかもという重圧もあり、毎日、胃が痛かった。しかし、見た人たちから「見て良かった」「救われた」という声を聞くと、作って良かったと励みになった。僕の作った映画で若い人たちが映像業界に興味を持つきっかけになったらうれしい。
 陸上ばかりやっていた少年時代の自分からしてみれば、映画監督になった自分は想像できないだろう。昔の自分に「夢がかなったんだ! すげーな」と言われているような気もしたが、次の作品を作りたいという制作欲はどんどん湧き上がってくる。
 そしてやはり面白い作品を作らないとだめなんだ。だからこそ、人の心を常に勉強して掘り下げる努力をすることが大切なんだ。これが、2作品を取り終えた、いまの僕の率直な感想だ。(映画監督=広島市出身)

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