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【エッセイ】おとしもの

朝の駅に向かう道
歩道の手すりのうえにポツンと年期のはいったお財布が置かれていた。

一度通りすぎて──
ふと駅前に交番があったことを思い出し
もどって、お財布を手に取る。

中身もしっかりはいっていそう──ちらっと開くと保険証やらいろんなカードもそのまま残っている。

詳しく見るのも気がひけるから
そのままそっとカバンにいれて交番へと向かう。

駅前の交番には女性の警官がちょうどいてくれたので、すぐ近くの公園沿いの手すりのうえに
お財布が置かれていた旨を伝えた。
時間もなかったのでそのまますぐに行こうとすると──

「お礼や連絡などはいりませんか?」
と申請書のような紙をだしながら話しかけられた。

「大丈夫です、時間もないからそのままで!」
「わかりました。ではこれで結構です。ありがとうございました」

警官は、なれた手付きでお財布の中身を確認している。
お金も一万円札が何枚か入っていたようだ。

盗っ人扱いもされたくないから
そっと横目でそれをみながら
何も取られていないようで良かったと
ほっとした気持ちになった。


きっと、昨日は金曜日だったから
四谷の飲み屋街で酔っぱらって
あわてて帰るときに落としたのかな──
早く気づいて交番に行ってほしいなぁと
おせっかいな気持ちになる。

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過去に僕も何度かおとしものをした時に
交番に行った時の気持ちを思い出した。

心臓ばくばく、焦っても仕方ないけど
落としてしまった自分が悪いから何もいえないし──

ただただ、善良なひとが見つけてくれて
──ちょっと考えて
交番に届けてくれていないかなぁと祈るのみの心境。

警察官は仕事だからドライに対応する。
僕は、名前や住所など個人情報と落としたものの詳しいことを紙に記載して、しばらく待つ。

──奥から警官がそれらしきものを持って現れた!
その時の安堵感は、今でも新鮮に感じる記憶。

「拾われた方は、お礼や連絡はいらないということなので、これでもう帰っていただいて結構です」

大きな声で「ありがとうございます!」と御礼をいって交番をでた。

──やっぱり日本っていい国だなぁとつくづく感じた日の思い出。

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よくよく考えてみると──

僕が今朝拾ったお財布は、
僕より先に、昨晩見つけて拾ったひとがいて
その人はちょっと考えて
落とした人がすぐもどってきた時に
見つけやすいように手すりのうえに置いたのだろう。

それを僕が朝に見つけて
ちょっと考えて
交番に届けただけ。

ちょっとした善意の気持ちが連鎖して、
大きくなって落とした人に届けばいいな、
とふと思った。


──現金には少し目が眩んだけど(笑)

お礼や連絡はやっぱりいらないかなぁ。

「落とした人が一定期間見つからなかった時は全部もらえる?」

うーん。。。


でもやっぱり大人になると
そんなところで得をしても罰あたりな気がするから──



お礼や連絡はやっぱりいらないかなぁ


落とした人へ
あなたの大切なお財布は交番に届いてますよ!
早く取りに行ってくださいね😊
お礼は要らないので笑


おわり


©️2023 Mahalopine

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