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カメラは好きだけども、いわゆる写真作品にはそれほどのめり込めないわたし

わたしは、カメラやカメラのレンズのマニアではないですが、好きではあります。

カメラやレンズの、一瞬を切り取るための構造自体が持つ美しさが好きなのです。そこに投入された人間の叡智自体を称賛する感じというか。

ですので、日常使いには使いにくいような、そのカメラ・レンズメーカーの技術力の粋を集めた大口径レンズなど、自分の手の届く範囲のものであれば、ついつい購入し、その危うい描写を楽しんだりします。

機械式の時計も同じように好きなのですが、そちらは仕事と関係無いので手を出しておりません。高すぎてわたしには手が出ませんしね。わたしは日常、時計を使いませんし、コレクターのの無いわたしの生活に入り込む余地もありません。しかし機械式時計そのものはとても好きです。見た目がとても美しいですし、人が組み上げた機械構造によって時を生み出し刻むという事自体に美しさを感じます。

そういうわたしですが、では好きな写真家は?となると誰も浮かびませんし(そもそも知らない)写真家の作品写真集も、資料としていくつか購入した事はありますが殆ど買った事がありません。写真雑誌は全然買った事がありません。

わたしは、写真家の作品写真の「写真業界独自の価値観」に馴染んていないのです。「写真玄人」っぽいものに馴染んでいないというか・・・(わたしの写真芸術に対する無知から来るものであろうと思っております)

そういえば、熊谷元一さんの写真集は、本屋さんで立ち読みした時にたまたま手にし、買った事があります。そこに写る、村の人々の生活、学校の子どもたちの姿に感動しました。その写真そのものは、意図を感じさせないけどもかなり計算して撮られている感じで、撮影者の写真の造形的個性よりも被写体とその場面の方が生き生きと眼に飛び込んで来る、そのストレートさにやられました。それに、変に人々の裏を暴くような事もしていない感じも好ましいと思いました。「プロの写真家」では出来ないアプローチで、かつ完成度が高いんですね。(しかし、熊谷元一さんの童画作品はわたしには分かりません)

もちろん、写真作品で「おお、見事な写真ですな」「お、カッコいいですな」と思うものはあります。ただ「写真作品」そのものに、のめり込むまでは行かないんですね。

わたしは、全く気ままに写真を撮る事自体は好きですし、身近な人たちの写真も良く撮ります。そしてカメラの使い心地やレンズの描写の特性を面白がるのですが、写真美術館のようなところに行くと、その写真そのものの出来よりも、そこに写っているものや、その時代背景などに興味が行きます。

わたしは、そういう「被写体に集中出来るようになっている写真や映像が好み」みたいです。そうなっていれば、ピンが甘かろうが、ブレていようが、構図が多少変であろうが、関係ありません。

自分にとって、写真はそういうものなんでしょうね。

「ああ、この人はこの対象・この瞬間に心動かされて思わすシャッターを押したんだな」という感じが伝わって来る写真は好きですし、あたかもそういう感じに撮られた写真であっても変な意図が写真に残っていなければ、そういうものが好きです。

また、写真は撮るだけでなく「どの写真をチョイスするか」という選別と「どのように観せるか」という編集作業が撮るのと同じぐらい大切だとわたしは思っておりますが、そういう点でも、変にレ点方式で「文句を言われない写真」「写真玄人っぽい感じ」ではなく「分野違いの人が面白いと思い、かつ写真玄人の人がちょっと悔しがるようなものをチョイス出来る人」の写真が良いですね。

プロアマ関係なく、そういう写真だとわたしは魅了されます。

写真を観ているのではなく、まるで自分の眼が直接それを観ているように感じるられるもの・・・それどころか現実を観るよりもその写真を通して観た事で、よりリアルに感じさせるようなもの・・・それが全く日常の平凡な風景でも良いわけですが、シャッターを押した時の、その撮影者の眼と感覚自体を直接感じられるようなもの・・・しかしカメラとレンズでそれを定着したからこそ、その写真が産まれた・・・ようなものが好みです。そこに計算があろうが、偶然であろうが、そうなっているものが好みです。

ようするに「写真を観ている事を感じさせないけども、写真でしか出来ない事をしている」ようなものが好みです。

個人の嗜好として、写真自体に、造形的な意図の強いもの、撮影者の強い主張が乗っているものは苦手なようです。

これはあくまで現状の好みですので、変わるかも知れませんが・・・

上に書いたわたしの写真の好みは別として「カメラは好きだし写真を撮るのも好きだけども、写真芸術にはそれ程興味の無い人」はわたし以外にも多いような気がします。

まあ、わたしは和装染色作品の制作・販売をメインに生業としておりますが「いわゆる呉服は大嫌い」ですし。笑


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