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わたしの移住歳時記 夏の思い出

関東から四国(香川)に引っ越してきて、季節の感じ方も少し変わった気がします。


2023年夏の思い出を3つの季語で振り返ります。

白靴

瀬戸大橋を新幹線が走る日はくるのだろうか

2023年の夏は岡山に用事があったので、「青春18きっぷ」を使い何度も瀬戸大橋をわたった。最初は興奮していたが、3回目4回目ともなると橋や海をわたることに慣れてきてしまった。観光客とおぼしき人たちがいっせいにスマホカメラを掲げる様子を、観光客だったことなど一度もないかのように観察する。忘れられないのは、坂出あたりで乗り込んできた、おそらく下ろしたての真っ白なスニーカーを履いた大学生風の青年が、岡山に到着するまでのあいだ、車窓には目もくれず暗記帳に目を落としていた姿だ。勉強熱心なのか、それともテストのためにやむなくなのかは分からないが、あの真っ白なスニーカーがこれから若い彼の色にどう染まってゆくのか、今頃あのスニーカーはどこを歩いているのか、時々思い出すことがある。

しず(イボダイ) 

「地物です」とあると手がのびてしまう
ツボ(経穴)だとしたら何に効くツボなのだろう

俳句歳時記には季語としてさまざまな動植物が収録されている。俳句を趣味にしてもう3~4年になるけれど、いまだすべての季語を使ったことはないし、字面を見て脳裏にぱっと映像の浮かぶ季語は少ない。結果、毎年なんだか同じような季語を使っているうちに季節が移りかわってしまう。そんな時、スーパーに行って魚コーナーを覗き、歳時記で見かけた魚の入荷があればラッキーだ。この夏初めて料理したのは「しず(イボダイ)」。まん丸い愛嬌のある目に、お灸のあとのような黒い「いぼ」がなんともかわいらしい。購入し撮影したしずは残念ながら頭を落とした状態のものだったため、絵を描いてみた。小ぶりの魚なので煮魚にしたのは失敗だった(鍋の中でほぼ崩壊してしまった)が、欠片を拾い集めて食べると、ぷりぷりしていて旨味があり、なかなか美味だった。ちなみに香川には「灸まん」というお灸のもぐさをかたどったお饅頭がある。

麦の秋

白黒で撮影すると小津映画っぽくなる


香川が「うどん県」という別名で呼ばれていることをご存じの方は多いだろう。はがきの住所欄に香川県ではなく「うどん県」と書いても郵便物は無事届く。県内は文字通りのうどん王国で、車を走らせている時などは「ここにコンビニがあればいいなあ」という場所にうどん屋があってガックリすることもある。家族との会話で「○○あるでしょ、あのうどん屋の隣の」と言ってから、町にうどん屋が多すぎてそれでは場所の特定が不可能だと気付くようなこともあった。うどんを作るには小麦粉が不可欠だが、国産小麦を使用しているうどん屋はあまりないようだ。昨年始まったロシアのウクライナ侵攻により小麦粉の値段が高騰し値上げに踏み切ったうどん屋も少なくないと聞く。しかし県内における小麦の生産はゼロではない。ある日道を歩いていると金色の畑に出くわした。カラカラという乾いた音を立てて風に揺れていたのは小麦だった。麦が一斉に実りの季節を迎える夏の「麦の秋」とはまさにこれなのかと膝を打ちつつ、スマホカメラを向けた。

現在ZINE「移住歳時記」(仮)を計画中です。


乞うご期待!

🍩食べたい‼️