#88 あまりの低レベル・・・ニューヨーク1人旅 2018年11月7日(水)7日目・・・3

Grand Central Terminalから外に出ると、今まで出たことのない出口だったが、2、3人にアベニューを聞いただけで、すぐに英会話スクールの入っているビルに到着できた。

さっき、顔面蒼白で走り回ったことなど微塵も感じさせない余裕で、事務所に入る。

日本人の姿、飛び交う日本語、トイレの注意書きの張り紙も日本語が、何だか落ち着く。日本語が恋しいとか、英語が分らないとか関係なく、やはりホッとした。

早速部屋に案内される。今日の部屋はG。5畳ほどのスペースに、5、6人分ほどのテーブルとイス、テーブルの上にはラジカセが1台置いてあった。

窓からは近隣のビル群が見え、お向かいのビルでは、高層でゴンドラに乗って窓掃除をしている人たちが見えた。

すぐ近くにはEmpire State Building(エンパイアステートビル)が、青空の中に凛と建っていた。

Manhattanのビルの高層階の窓からManhattanを見る。
どれほど憧れたことだろう。しかもそこで英語のレッスンが受けられるのだ。なんて幸せなことなのだろう。憧れ続けたことが次々と現実になり、
今これから始まろうとしていることが、まだ夢のようで、全身がふわふわした感じだった。

しばらくすると、初老の女性が入ってきた。
スーザンというおばあさん先生だった。何を言っているのか、ほとんど理解できなかったのだが、言葉がとても聞き取りやすく、何を伝えられていたのか、何となくその内容がわかったような気がした。
けれどもやはり35年以上前に、高校の授業で単位を取るためだけに、惰性で受けていた英語の授業。
すっかり老化した脳に、初級にも達していないレベルでは、意思の疎通は測れなかった。
かなり困ったスーザン先生は、説明を受けに来たときに出迎えてくれた、私と同年代くらいの事務の女性を連れてきた。私があまりにも英語が理解できないので、間に入って通訳をしてくれるとのことだった。

実は、スーザン先生の英語は、ほとんどしっかりとは理解できなかったが、言っている内容は不思議と何となく理解できた。
言葉の壁はもちろんあるのだが、そんな状態でもNew York・Manhattanで1週間近く1人で観光ができていたのは、この不思議のおかげもあったと思う。
さらに、ジェスチャーができ、数字が分かり、人差し指で何かを指差せて、〝Thank you〟と〝Sorry〟が言えれば、何とかなってしまうのだ。だから、実際にしっかり何を話しているのかわからなくても、雰囲気やある程度の洞察で理解できるのである。

そんな状態でも、あっと言う間に楽しい90分のレッスンが終わってしまい、1人、満足感と心地良い疲労感で、ウキウキしていた。
そもそも日本にいて、日本人以外と対話することなど皆無なのだ。ネイティブの人と向き合って言葉を交わすこと自体、かなり特別なことで、しかもNew York・Manhattanで、90分もマンツーマンで特別な時間を過ごせたのは、私にとってはもう異例中の異例な事だった。
そして、私の嬉しさはどんどん加速するのだ。

きっと、スーザン先生も事務の女性も、私がここまで低レベルだとは思わなかっただろう。けれどまったく恥ずかしくはなかった。レベルの低さは当たり前だし、低いからこそ来る場所だ。
ネイティブの人と対話できただけで、私は充分嬉しかった。

これから8日間も通えるのだと思うと、明日からがますます楽しみになった。ただ、毎日午前中が潰れてしまうので、多少なりとも観光に支障が出るのは致し方なかった。

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