マガジンのカバー画像

81
運営しているクリエイター

#黄昏

風がささやくとき

風がささやくとき

こぼれ落ちる涙を
暗闇に投げてしまおう
黄泉の国で待つ鬼が
飲み干してくれるだろう
黄昏に揺れる髪が
憂いに浸っている
沈み行く陽の光が
優しく微笑んで
私の頬を赤く染める
ああ私はどこへ行くのですか
ああ私はどこから来たのですか
流れる雲は何も言わずに
遠く離れて
ささやく風は全てを
洗い流して

慈雨

きらめき体を濡らす雨に
私は何を委ねよう
一歩二歩の歩みの先に
私は何を見るだろう

金色の雲に見とれても
明日にはもう忘れてしまう
空を照らす海に飛び込めば
何かを掴めるだろうか

葉の囁きは私を誘う
ありもしない幻想に
赤ん坊が泣いている
何も知らなかったあの頃に
戻りたいと想うのは間違いだろうか

死の淵を越えて舞い降りる
それまで決して死なないで
全ては神の紙芝居

黄昏

握りこぶしが見えないか
おまえの瞳の奥底に
手のひらに積もる感情の
解放されない悲しみを
越えられない憎しみを

ああ人の世の過ちと
ああ人の世の切なさを

おまえのその強情と
救いきれぬ悪業を
気づき与えるその力
おまえはいつ知るだろう
例えばあの風のように

ああ人の世の苦しみと
ああ人の世の平安を