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世界を蔑むことで自分を保っていたわたしと、住職さんからの課題

中村文則さんの長編小説、「教団X」を読み終えた。

彼の小説は「銃」「何もかも憂鬱な夜に」「土の中の子供」「私の消滅」「去年の冬、君と別れ」などを読んできた。
めちゃめちゃ暗いけど、そのなかに光も見えるお話が多い。

とはいえ「教団X」はとても分厚いので、最後まで読めるか不安だったけど、ところどころにある、細やかで美しい卑猥なシーンのおかげでモチベーションが保てて読むことができました。笑

こんなことを書くと軽くなっちゃうけど、読み終わったタイミングと、この本のメッセージ(一つではないけど)がとても今の私に刺さった。

彼の小説には、日陰に生きていて、生きてることに絶望しながら世の中を斜めに見ていて、世界を蔑むことで自分を保っている人物がよ~く出てくる。
そして、その目線が、すがすがしいほど残酷に諦めている目線が気持ちいい。
なんで気持ちいいのかって、私自身は一応人前では明るめなタイプをやってるくせに、たぶん、心の中はそんな登場人物と同じで、「どうせ」などと諦めながら、斜めに見ている歪んだ性格の持ち主だったから。

何度かこのnoteにも書いたけど、平凡が嫌いだったし、そんな平凡しかやれない、何者でもない人間には絶対になりたくない、という想いがあった。
・・・と、思いながら、これまた平凡しか生きれない自分にモヤモヤしてた。


京都の住職さんからの課題

最近、なぜか京都の住職さんとご縁があって、前は数か月に一度お話するぐらいだったのに、最近は強制的に(?)月イチとなり、先週から、なぜか毎週話すスケジュールを組まれてしまった。(「しまった」笑)

そして課題を突きつけられた。
「あなたはこの一週間どう生きたのですか。今週はどう生きますか」と。
「いや、どうって、べつに、ふつうに、生きて、ますけど・・・・(汗」な、私。
「一週間あったらたくさんのことができるんですよ。でも、何も意識をしていなければただ過ぎ去ってしまうだけなんです」と教わったけど、私は「いやそんな一週間ごときで・・・( ´Д`)y━・~~」と思いながらSkypeを切った。


「教団X」のワンシーン

ここで、教団Xの最後のシーンを。
思いっきりネタバレだし、このセリフの重みは500ページに及ぶストーリーがあってこそ重みが伝わるものなので、是非小説を読んでほしいのですが、伝えたいので、書きます。

世界に絶望し、テロをしようとしている男と、その恋人の会話です。

女「(中略)・・・あなたは他人を見下してる」「あなたは、そのまま過ぎていく自分の人生を否定しようとしてたんでしょう?テロリズムをやって死ぬことを、あなたの中のどこかが望んでるんでしょう?」

男「そうかもしれない」「でも、どうやったらこの世界の連中を尊敬できる?仮に君が言ったように警察に自首したとする。そうしたら、俺は何もできず、過去に屈服し、これまで蔑んできた連中から罵倒され細々と味気ない人生を俺は」

女「だから(中略)あなたの一部は、今こうなってることを望んでるんだよ。テロをやって馬鹿みたいに伝説になろうとしてる。でも本当の強さはそんなことじゃない。たとえ不満を持ってても、自分の人生が苦しいと思ってても、最後まで生きなさいよ。それが本当の強さでしょう?」
「(中略)ねえ、いい?よく聞いて。ほかの人と比べることなんて、どうだっていいの。大事なのは、目の前に出現したその自分の人生を歩くってことなの。(中略)どんな人生だって、それがもし満足いくものでなかったとしても、それを最後まで生き切ったあなたは格好いいじゃない。平穏な人生より、それが困難であればあるほど、なんとか改善しようともがいたりしながら、生き切ったときに格好いいじゃない。・・・」
中村文則『教団X』集英社 2017年

これを読んでね。
あ~平穏でいいんだ。平穏でいいから、自分の人生を生きることが大事なんだ、と、思って、涙が出たの。

流されるんじゃなくて、生きないといけないんだって。
ちゃんとできなくても、あきらめないで、「在りたい姿」に沿って、それをやる。それが住職さんに出された課題とも重なって、ずーんと響いた。

どうせ一人の人間が与えられる影響力なんて微々たるものなのに、その微々たるものすらやろうとしてなかった自分を省みた。
さらに、平凡すぎて蔑んでいた親という存在が、どれだけ平穏な日常のなかで懸命に生きて、私や家族に影響を与えてきた存在だったか、ということを思い知った。


影響力なんて無くていい。

一向に増えないSNSのフォロワー数を見ながら、「やる気出ない・・・」と諦め、いつか有名な人に見つかってそのフォロワーが流れてこないかな、と、他人任せの思考になっているYouTuberの私。

ベテランと呼ばれるようになって、単純作業のようにできるようになった仕事の時間をただ待つように過ごし、いつか条件の良い楽しい仕事が来ないかな、と、運頼みになっている社会人の私。

素敵な家族のブログを読みながら、いつか私にもこんな素敵な旦那さんに出会えたらいいな、と自分を棚に上げて、いるかどうかもわからない将来の旦那頼みの独身女の私。

もう、それを辞めようと思った。
微々たるものでいいんだ。結果だってどうでもいい。
この世界に、働きかけることが大事なんだと、小説と、住職さんと、私の悩みとに、教えてもらった出来事でした。

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