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中国スマートシティ構築におけるプラットフォームとは?


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中国スマートシティ構築におけるプラットフォームとは?
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みなさま、こんにちは!
IngDan Japanの山田です。

前回はウィルス予防・対策ソリューションについてご紹介をさせていただきました。

今回は、中国スマートシティについてご紹介したいと思います。
中国でのスマートシティビジネスへの参画についてご関心がある企業様は、中国の専門家の意見も交えて、貴社の強みやポジショニング、適切なパートナー等についての議論を行い、進出に向けたご支援、リサーチといったサポートが可能ですので、ぜひご連絡いただければと存じます。
ingdanjapan@infodeliver.com
 

日本においても最近、いわゆるスーパーシティ構想を実現する為の法案が可決される等、動きが活発化しています。みなさんはスマートシティと聞いてどのようなイメージをされますか?
(IT技術の進化によって実現可能となった仕組みを実装することが主体として考えられてきたスマートシティと比較し、スーパーシティは住民の参画により課題解決に取り組み、住民生活を向上させるためのシステム、と説明されることがあります。)

自動運転による車が街中を走り回っている世界、ECサイトで購入したものがすぐにドローンで自宅まで配送される等、皆様それぞれのイメージをお持ちかと思います。中国では効率的な都市構築、各プレイヤーの連携のしやすさ、スピーディーにプロジェクトを進める為のプラットフォームが整備されており、その仕組みに即したかたちでスマートシティが建設されています。

中国では500以上のスマートシティ建設が進み、実際に街の運営に適用を行う中で明らかになった課題を改善するサイクルが高速回転させながら、発展を見せてきました。日本でもスマートシティの設計や建設が進んでいる状況ですが、中国のスマートシティとの違いはどういったところにあるのでしょうか。また、中国のスマートシティにはどういった特徴があるのでしょうか。今回は、スマートシティのOSと言える仕組みを中心に、中国の事情についてご紹介したいと思います。

水道や電力等のインフラ、行政システム、交通システム、データ解析等あらゆる分野の結合によって作られるスマートシティですが、中国のスマートシティビジネスに参画したい、中国で使われているプラットフォームを日本の課題解決の為に活用することにご関心をお持ちの方は、どんなテーマでIngDan Japanとご一緒に進めることができるのか、ぜひ一緒に会話できればと考えております。
それでは、今日のメインコンテンツにいってみましょう!


~ 目次 ~
【スマートシティ構築の流れ及びスマートシティ構築フレームワーク】
【都市ごとの特徴あるスマートシティ:深圳のスマート交通や敦煌の観光シティ】
【中国におけるスマートシティの特長とは】

~ メインコンテンツ ~
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スマートシティ構築の流れ及びスマートシティ構築フレームワーク
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スマートシティは誰がどうやって企画し、どのように作られるのでしょうか?中国においては、毎年数兆元!の予算が投入され、スマートシティが構築されています。都市構築における共通の流れについてご紹介致します。通常の都市デザインにおいてもそうですが、皆が勝手に自分の作りたいものを作り、それぞれが好きなように生活していては街全体としての統一感はなく、効率面においても非常に良くない街となってしまいますね。この点はスマートシティでも同じですが、中国においては、中央政府主導で中国情報通信研究院がスマートシティの技術標準を定めており、各都市での実行においては地方政府が強いリーダーシップを発揮して推進する構造となっています。

まず、地方政府が3~5年の中長期の都市発展計画を策定します。その上で、ICTインフラを整備、スマートシティの脳といえる指揮機能の開発、スマートサービス、アプリケーションを通じてデジタルプラットフォームが構築されるという流れです。このデジタルプラットフォーム構築に関しては先の中国全体で統一された技術標準に準拠しています。通常これらは政府の入札で決まり、Huawei、テンセント、アリババ、平安といった企業が主要なプレイヤーとなっています。さらに、地場企業や中小企業がアプリケーションの開発を行いサービス化しています。サービス設計、構築ができたら、その後の運営はまた別の運営の得意な会社に任せるといった分業体制が取られていることが一般的です。

効率的にスマートシティ建設がなされるよう機能に応じて4つのレイヤーが設定されていることも大きな特徴です。4つのレイヤーとは、「スマートシティの脳(IOC))「デジタルプラットフォーム」「ネットワーク」「感知設備」です。以下にそれぞれの内容について、下位のレイヤーからご紹介いたします。


1. 感知設備
センシング技術を活用したデータを収集する設備です。例として、スマートマンホール、スマート電柱、スマートポール等が挙げられます。

2.ネットワーク層
感知設備で取得した情報は、ネットワーク層を通じて収集されます。例として、NB-IOT、5G、IoT等があります。

3.デジタルプラットフォーム
感知設備で取得した情報は、デジタルプラットフォームに送られます。例えば、クラウドPF、BigデータPF、AIPF、ユニファイドPF、GISPF等が挙げられます。

4.スマートシティの脳(IOC)
各都市における指揮センターです。各都市におけるデジタルアプリケーションが含まれ、例えば、スマート行政、スマート交通、スマート医療、スマート教育、スマート販売等が含まれます。

モニタリングは、マクロとミクロそれぞれの観点で行われ、マクロでは、経済・人口・交通・環境、ミクロでは街頭状況・マンホール・水道・電気の利用状況といった情報を収集します。これらの情報は、計画、管理、意思決定を支援する為、デジタルツインの視点で活用する仕組みが実用化されています。

ここまでを纏めると、スマートシティの構造は1つのデジタルプラットフォーム、スマートシティの脳及び複数のスマートアプリケーションから成り立っていることがわかります。
例としてHuaweiのような企業が、スマートシティのOSともいえるIOC(Intelligent Operation Center)を提供し、様々な企業の連携を支援しているのです。HuaweiがIoT機器開発や5Gネットワークの構築等、神経系統にあたるインフラを強味とするのに対して、テンセントであれば行政と市民とのサービスの接続インターフェースが強い等、既存ビジネスのノウハウを活用した特徴を持っています。


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都市ごとの特徴あるスマートシティ:深圳のスマート交通や敦煌の観光シティ
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中国のスマートシティは統一されたプラットフォームに基づき構築されるわけですが、実際のところ、その中身については、地域によってかなり特徴的な内容となっています。地域によって抱える人口も違えば、主要な産業も異なり、目指すビジョンや抱える課題も異なります。地方政府は積極的に各エリアの特長を活かす為に知恵を出し、スマートシティのプラットフォームにおいて具体的なサービスに落とし込み、各地方政府が互いに競うことで互いに発展し合う構造となっています。

事例の1つ目として、深圳のスマート交通をご紹介致します。深圳は人口1,400万人を抱える中国国内においても有数の大都市です。それにも関わらず、実際のところ、発生している交通渋滞はその都市の規模の割には非常に少ないと言われています。何故だと思われますか?

その答えは深圳のスマート交通システムにあります。画像認識、AI技術、ビッグデータ、クラウド技術を活用することで、統合的交通管理システムを構築し交通の課題に対してうまく効果を出しています。街中に巡らせたカメラやセンサーにより、自動車等全ての車両の走行ルートをリアルタイムにモニタリングし、混雑度、路面状況、交通量等のデータを収集します。収集したデータをAIで解析することにより、信号の最適化を行い交通量の最適化を実現しました。また、異常検知も可能で、交通事故や信号の異常が発生した際にはリアルタイムで検知し、関連部門に通知され、即座に必要な対応を取ることができるようになっています。

2つ目は敦煌のスマート観光システムです。
敦煌市をご存じでしょうか。甘粛省、シルクロードが3つに分岐する地点にあり、人口20万人に対して年間900万人が観光にくる観光都市です。市の産業の60%が観光を占めており、スマートシティはスマートツーリズムの観点で開発が進みました。

観光スポットのスマート管理、観光地のマーケティング強化にもつなげる仕組みを構築しています。例えば、月牙泉名勝区では、入場チケットの35%以上はオンラインチケットとなっており、顔認証、指紋認証、QRコードなどで認証することで観光地エリア、施設に入場でき、観光客の体験向上や混雑解消に貢献しています。
また、鳴沙山は夏場は45度にもなり熱中症になる人も多いのですが、カメラの活用により、もし症状が出て倒れる人がいれば10分以内に救護できる仕組みを構築しています。
その他にも、移動に伴うWi-Fiネットワークの自動切り替え、ビッグデータ解析による観光地リソースのリアルタイム管理を通じて、広告、宣伝への活用や混雑緩和に役立てています。人の密集度合や流れを予測し、リソースに余裕のあるエリアに観光客を誘導することにより、前年比16%の増加を実現できた観光地もあります。

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中国におけるスマートシティの特長とは
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ご紹介した事例は一部となりますが、その他にも地方政府による競争、各地域の特色をどう盛り込むか、課題をいかにスマートシティの仕組みで解決するか、の観点からプロジェクトは日本と比較し圧倒的なスピードで推進されています。中国におけるスマートシティの特長を整理してみましょう。

まず、統一的なデジタルプラットフォームの活用です。都市構築のフレームワークが整理され、各プレイヤーに共有されており、エコシステムとして構築されていることで、全体として非常にスピーディかつ効率的に都市構築が進みます。また、都市運営指揮センターの働きにより、異業界の垣根がなくなり、連携がスムーズに行われています。行政のサービスと民間のサービスがシームレスに連携したり、プラットフォーム上で企業間の連携が生まれる等、オープンイノベーションの思想のもと、互いにアイディアを出し合い、実装する流れが加速しています。そして、スーパーアプリの存在です。行政申請アプリやフードデリバリーといった圧倒的な人数に使用されるアプリの登場により、市民の生活に大きなインパクトをもたらしました。

かつてのスマートシティは技術の活用を通じた都市機能の効率化、生産性向上やエネルギー効率の改善を目指したものが多かったのですが、近年は特にAI、IoT、ビッグデータ活用により、市民生活を向上させるための都市機能の再構築をビジョンとしたものが増え、実際に市民生活の向上に繋がるかどうかが指標となるケースが増えています。

かつてHuawei社において多くのスマートシティプロジェクトを手掛けた徐さんのVideoをご紹介いたしますので、ご関心がありましたらぜひご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=BJgrZBxgLZU&t=485s

いかがでしょうか。今回はスマートシティ事情、特徴についてご紹介いたしました。
次回は、中国における店舗(リテール)への技術応用についてご紹介を予定しています。店舗におけるロボット活用、無人販売、画像による顧客解析、スマートロッカー活用等は、感染対策による非接触の隆盛の流れも合わさり、ますます加速しているようです。

今回の内容についてのご質問、お問合せにつきましては、以下までご連絡ください。
ingdan@infodeliver.com


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編集後記
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
圧倒的な人口を抱えながらもスピーディーに様々なサービスが実用化される中国のダイナミズムには驚かされることも多いですが、スマートシティの構築においても同様の状況であることがおわかりいただけたのではないでしょうか。その根底にあるのは、最初から完璧なサービス、製品を設計し提供するという思想ではなく、まずはトライアルからでも始めて実際の社会の中で試してみる。実際の運用で得られた情報や課題を収集し、さらにどう解決できるのかを考え、解決できるサービスを設計し、また社会の中で試してみて、というプロセスの高速ループを回せることが中国の強味となっています。

当然ながら、サプライヤ側の都合だけではなく、サービスを受ける人たちが、不完全ともいえるサービスでも、まずは世の中に出してみて、フィードバック、改善を繰り返すことにより、より良い社会に近づくのだという理念の共有がなされ、受け入れられてきたからこそであるのは言うまでもありません。そもそも、サービスに対する期待値が高くない、という事情もあるのでしょうが・・・

さて、こういった中国の技術や実用で得られた知見を活用して、日本における課題を解決すべく、試作品を作りPOCを実施したい。トライアル、改善の高速ループが当然のように行われている中国において、今回であればスマートシティのプロジェクトにおいて、自社の製品、サービスを用いて参画したい。
こういった思いをお持ちの方がいらっしゃれば、ぜひ、IngDan Japanにお問合せいただき、一緒に何ができるのか、会話させていただければと考えています。

次回は、中国のリテール、つまり店舗における先進事例についてのテーマを予定しています。移動、特に海外への移動が困難な状況だからこそ、IngDan Japanでは、まずは動画やオンラインの手段を使って中国の情報をお届けできればと考えています。ぜひ、役立てることがあればお声がけをいただければと思います。
ではまた次回、お会いいたしましょう。


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