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#26 財務諸表の読み方

~数字は嘘をつかない?けれど,嘘をつこうとする人もいる~

こんな笑い話があります。コンサルタントと経営者との会話。
コンサルタント:おたくの経営状態は,安全性でいえば○○率は○%となんとか資金繰りは問題ない状態ですが,効率性については○○率が○○なのでやや在庫過多ですな。それよりも問題なのは収益性,○○率が業界平均に較べてかなり低い状態ですな,このままでは将来的に設備投資のためのキャッシュが足りなくなるでしょう。
経営者:そうですか,先生,それではその収益性はどのようにしたら改善できるのでしょうか?
コンサルタントそれを考えるのは経営者であるあなたの仕事でしょう!いったい何を考えてるんだ,あなたは!(憤然!)

MBAコースのコンサルティング実習の現場で同じようなことをし始める実習生がいるので,戒めとしてこの笑い話を最初に話すようにしています。またクライアントの財務諸表を見て,(先生,大変です,この企業,債務超過です…)と驚いて耳打ちしてくる実習生もたまにいます。そんなことで驚いてどうする,中小企業じゃそんなもん日常茶飯事だよ,と教えられさらに驚くという…。

型どおりの財務分析を現場でいちいちやるのではなく,ざらっとB/S,P/Lを見てかつ中小企業診断士試験では取り扱わない勘定科目内訳書にさっと目を通して,3分以内にその企業の問題点を指摘できるぐらいじゃないとプロのコンサルタントとは言えない,と教えています。

財務指標でさっと目を通す箇所のひとつは①内部留保です。資本準備金などの積みあがりは一朝一夕にできるものではなく,その企業の業歴と健全性が推し量れます。次に主な②借入先や未払先を見ます。金融機関なのどの有利子負債ではなく代表者貸付などで借入金が膨らんでいても,いざとなればDES(代表者貸付を資本金に振り替える)できるので問題ありません。そしてやはり③営業利益率でしょう。企業本来の事業での収益性はゴーイングコンサーン(企業存続)の原資となるので,一定基準以上の収益率は欲しいところです。

また子会社がある場合は,それらの財務諸表のすべて見ないと企業グループの全容は見えてきません。たまに,企業グループ内で不良債権や損失などを飛ばして(関連会社貸付とか,関連会社への売掛金とか),特定の会社だけ綺麗な決算状態にあるようにお化粧していることがあるからです。特にフランチャイズ本部となる企業は3期分の決算内容を開示しないといけない(中小小売商業振興法による)ので,あからさまなお化粧をしている場合があります。

さらに悪質なのは,本物の決算書のほかに,税務署用と金融機関用,合計3つの財務諸表を用意している企業があります。こういった粉飾決算の指導をしているのが国家資格を有する士業であったりすることもあるので,まったく噴飯ものです(実際にそういう場面に遭遇した時は,噴き出さずにはいられませんでした)。私文書偽造の片棒を担ぐ気はないので,こういった企業と出くわしたら,丁寧にその場を辞去するのが賢明でしょう。

※you tube 配信しています 「こありん先生チャンネル」

#経営 #エッセイ #コンサルタント #中小企業 #財務諸表


正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html