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#72 フリーランスの矜持

~ホワイトカラーから自分の能力を自由に売って働くゴールドカラーが分離する:ロバート・E・ケリー~

令和2年12月24日に公正取引委員会からフリーランス・ガイドライン(案)が発表されました。令和3年1月25日までパブリック・コメントを受けてけているので,一家言のある方はコメントされるとよいのではないでしょうか。


「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(案)の策定に向けた意見の募集について

フリーランンス・ガイドライン(案)は41ページほどのPDFで,その概要はA4にまとめられて公表されています。
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(案)
フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(案)概要

また手前味噌ですが,概要について簡単に解説した動画を作成しましたので,お時間がありましたらご笑覧いただければ幸甚です。
https://youtu.be/VqTO7HUink8

前置きはここまでとし,本稿では,フリーランスの仕事のあり方について筆者の考えるところを忘備録的に残しておきたいと思います。いわずもがな,筆者のような経営コンサルタントもフリーランスとよばれる働き方をしています。そしてフリーランスの矜持として,我々は時間ではなく専門性を商品にしている,という意識があります。

「フォーカル・ポイント」という一時期話題となった本の冒頭に,原子力発電所の不具合を調査したコンサルタントの話が載っています。2日間の調査を終えたコンサルタントはひとつの計器にチェックをして,この機械を修理すれば問題は解決する,としました。原子力発電所の所長がその通りにしたところ問題は解決され,大きな損害を出さずに済んだのです。そして2週間後,コンサルタントから請求金額1万ドルと書かれた請求書が届き,所長はその金額の大きさに驚きます。たったひとつの機械にチェックマークを付けただけなのに1万ドルは高すぎる。いぶかしく思い1万ドルの明細を求めたところ,コンサルタントから届いたのは…「機械にチェックマークを付ける費用1ドル,チェックマークを付けるべき機械を探す費用9,999ドル」

フリーランス・ガイドライン(案)は,独禁法,下請法,労働関連法規の3つの法令からの視点で捉えられていますが,そもそも「高度プロフェッショナル人材」としてのフリーランスは,「労働をひさぐ」という考え方は希薄です。ウーバーイーツの配達員がフリーランスとしてユニオンを作り,本社に対して団体交渉を申しこんでおり,個人的には,それはそれで意義があるし本部は交渉に応じるほうがよいとは考えています。しかしながら,それは労働者としての権利を主張しているのであって,高度なスキルや知識を活かして社会発展に寄与するフリーランスというイメージとは少し違うような感じがしています。

ドラッカーの3人の石切り職人のたとえ話で考えると,これからのフリーランスは,労働や時間を切り売りして嫌々仕事をしている職人としてではなく,大して仕事は好きではないけれど技術を身に付けてより高い報酬を得ようとする職人としてでもなく,自分自身の仕事に誇りをもって働きがいと生きがいを感じている職人として働く,ということなのではないでしょうか。締めくくりに,アラン「幸福論」より抜粋しておきます。

われわれ自身の力から生まれる幸福は…,われわれの存在に染み込んでいる。…ワーグナーは音楽を身につけている,ミケランジェロは彼の描いた崇高な絵画をすべて身につけている。

〔こありん先生チャンネル〕YouTube配信しています@(・●・)@

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正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html