#81 Wannabeでは起業できないということ:Entrepreneurship #1
ワナビーでは起業できない
Twitterまんがの「社長と魔法のランプ」とのコラボ企画ということで,これから12回に亘って起業家精神=Entrepreneurship について,思うところを書いて行こうと思います。今回は第1回「ワナビーでは起業できない」です。
ワナビーというのは米語俗語で wannabe=want to be ,つまり何かになりたい,という気持ちのことです。でもこのワナビーは曲者で,ワナビーでは決して望むものになれない,とよく言われています。例として「小説家は小説家になりたい人がなるのではなく小説を書かないと生きていけないほどの内実がある人がなる」という主張を考えてみると良いでしょう。つまり,起業家になりたい,社長になりたい,という人が起業できるのではなく,何としてもやりたいビジネスがそこにあるから起業してしまった,ということなのです。
シャインの3つの問い
次に考えるのは,どうしてもやりたいビジネスは何なのか,あるいはなぜどうしてもそのビジネスをやりたいのか,ということです。これを考えるには,キャリア開発の場面でよく見かける「エドガー・シャインの3つの問い」が役に立ちます。すなわち,自分がやりたいこと=WILL,自分のできること=CAN,自分がやらなければならないこと=MUST,は何かをじっくり考える,ということです。もちろん,この3つの丸が全部重なるのが,あなたにとっての理想のビジネスということになります。
ビジネスは強みの上に築け
さてそれでは,自分が得意なことと,自分がやりたいことと,どちらを優先すればよいのでしょうか。シャインの言うところの,CAN か WILL のどちらかという選択でしょうか。この答えについては,P. ドラッカーの「ビジネスは強みの上に築け」という言葉が参考になります。自分の得意なことは何なのか,客観的に自分を捉えて(メタ認知),その上にビジネスを組み立てるのが良いということです。
これは,戦略策定の常套フレームワークであるクロスSWOT分析(自分の強みStrength と弱み Weakness,まわりの環境の機会Opportunity と脅威Threat,を掛け合わせて戦略に優先順位をつけるフレームワーク)でも同じようなことが言えます。つまり,世の中のブーム(機会)に目がくらんで,自分が得意でない(弱み)のビジネスに手を出してはいけない,ということ。いくらアプリ開発が伸びているからと言って,IT技術のない人がアプリ開発のビジネスを始められないのと一緒のことです。
起業家の内実とは何か
今回は起業する時の心持ち,といったことを書いてみました。実は筆者も35歳の時に勤めていた会社(サントリー)を辞めて起業しました。その頃の自分の内実は何だったのか,についてはまたの機会に改めたいと思います。今回は最後に,筆者のその当時の「他山の石」を紹介しておきましょう。ある営業部門の先輩が「好きなお酒が飲めて=WANT,スナックのママと話すのは得意だし=CAN,それで成績が上がって会社に役に立つ=MUST,こんな素晴らしい仕事はない」とバリバリ働いていたところ,お酒の飲み過ぎで身体を壊してしまいました。何事も中庸が大切ですね。
正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html