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#29 任せるということ

~人を信頼し任せきるということは,どこまでも尊く美しい~

ラグビーワールドカップのおかげでラグビー人気が復活したようで,先日の大学選手権「伝統の早明戦」では5万人を超える観客が新国立競技場での熱戦を楽しんだようです。ところで,筆者は中学から45歳まで選手,コーチ,レフェリーとしてラグビーに携わってきており(趣味程度ではありますがトライアスロンを始めるために45歳でラグビーを卒業しました),仕事上でもラグビー関係者にお会いすることがよくあります。

ある時,愛知の西陵商業ラグビー部元監督の山田耕二さんと対談する機会がありました。山田さんは,監督として西陵商業を花園大会に19回導き,1996年大会では劇的な逆転劇で優勝(決勝試合は1997年1月)を飾った,ラグビーに詳しい人であれば知らない人はいない名監督です。その決勝戦,重量FWの大阪啓光学園と軽量で機動力の西陵商業との試合は,逆転につぐ逆転のスリリングなシーソーゲームとなりました。19対25,啓光学園リードで迎えた後半のインジュアリータイム(ロスタイム),背番号21番の交代したばかりの小川選手がゴールポスト横に飛び込みトライ,これで24対25。コンバージョンキックはポールにあたってゴールとなり,西陵商業の逆転優勝となりました(動画は30分過ぎからが該当シーンです)

山田さんにお伺いしたところ,21番の小川選手はそれまでずっと控えの選手で,この時初めて花園のグランドに立ったのだそうです。これだけのプレッシャーのかかる大舞台でミスなく,思い切りよくゴールポスト横に飛び込んだ小川選手のことを,山田さんはこのようにおっしゃいました。「本当に真面目にこつこつ努力する選手だった。全体練習を終えた後の自主練でも最後まで残っていた。なかなかレギュラーになれず悩んでいたが,最後の大舞台で努力が実を結んだ。」

ところで1996年には,夏の甲子園決勝で松山商業「奇跡のバックホーム」といわれるドラマもありました。投手2枚看板を擁する松山商業はピッチャーとライトに2人の投手を配することが多く,本来の正右翼手である矢野選手はずっとベンチにいました。

古豪松山商業と熊本工業による深紅の大優勝旗をかけた決勝での奇跡は,10回裏3-3同点,熊本工業の攻撃,1アウト満塁から始まりました。矢野選手が守備固めのために満を持してライトの守備についた初っ端の第一球,ライトを襲ったフェンスまでと届こうかという大飛球を見て,おそらく殆どの人は犠牲フライで熊本工業のサヨナラ勝利,甲子園優勝を確信したでことしょう。ところがその大飛球を矢野選手がキャッチするや否や,ホームで待ち構えるキャッチャーの正面にノーバウンドで返球,そこでタッチアウトとなりスリーアウトチェンジとなりました(動画は11分30秒過ぎからが該当シーンです)

結局,次の11回表の攻撃で3点追加した松山商業がその裏を押さえ優勝となりましたが,優勝インタビューで松山商業の沢田監督は,奇跡のバックホームをした矢野選手のことを報道陣に聞かれると「矢野は,本当は控えの選手なんかじゃない,それをあそこで…」といったきり涙ぐみ言葉になりませんでした。

筆者は「人に任せる」というと,この2つのドラマを思い出します。いつでも闘える状態を保つため自らを鍛える努力と,それをずっと見守っていて大舞台で信頼し任せきる度量,任せるということはどこまでも尊く美しい,最近歳なもので涙腺が緩みがちです。

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正しいことより「適切なこと」に重きをおく,プラグマティックな実践主義コンサルタントです。経営の鬼門はヒトとカネ,理屈ではなく現実を好転させることをモットーとしています。 お問い合わせは,https://prop-fc.com/mail/mail.html