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easy poem「境目」

ひと雨ごとに
季節が進むことは
私だけに与えられた
特別な感覚だと思って
ずっと生きてきた
ある人が時候の挨拶として
「ひと雨ごとに寒さが
増してきますね」
と、メッセージを送ってきて
私は特別ではないと知った
あるいは私とある人にだけ
特別に与えられた特別な感覚 
なのかもしれない
あるいはそう思いたいだけ
なのかもしれない

春が好きではないらしいので
ある人は秋が好きなのだ
と、勝手に思っている
正確には秋と冬の境目あたり
ちょうど「水」と呼べるくらいの温度の
雨が降る境目の日
オブラートのように
知らないうちに溶けて
混ざり合う境目を
超えるか超えないかくらいの日

境界線というものができた
私は境界線を超えた
ある人は境界線を超えなかった
深くて暗くて二度と渡れない
ようやく地図で確認できるくらいの
向こう岸が見えず「線」とは呼べないくらいの
幅の広い境界線

週末は雨が降るらしい
気象予報士の平井さんが言った
(雨を境目に気温が低くなり
季節が一気に進むでしょう)

私はテレビを消して
リモコンをソファーに投げつけた

#日記 #詩

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