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夜の街での過ごし方

何とも言葉にしづらい気持ちになった。
怒り、失望、悲しみ、安堵、どれも違うようで、足し算してそれを割って、それから希釈したような薄ーい気持ち。
その時私はこの薄い気持ちの内訳も、核心部分も分からなかったから、ただただ気持ちを抱えてぼーっとしていた。出張先の街は夜も明るく、土地勘もある。そんな街の風景を、スーツのまま倒れ込んだ、ベッドの上から見ていた。

仮眠から起きても、あの気持ちがどこかに残っていて、なんだか胸糞悪かった。とりあえず外に出て、ご飯でも食べようかと思うも、周りのサラリーマンたちのようにワイワイとした雰囲気のお店には寄り付けなかった。
持って出た仕事の書類に目を通すことなく、ラテを飲んだ。ラテを一杯分飲み終えたら、なんだか不思議な気持ちになった。

「よし、カラオケに行こう。」
私としては、普段では考えられない発想と行動なのだけれど、その時はとてもピッタリだと思った。淡々と受付を済ませ、1時間きっかりひとりで歌い続けた。どうやら私は男性の歌う歌の方が腹から声を出せるらしい。

初めての「ひとカラ(一人カラオケ)」を終えた帰り道、薄い気持ちの核心にたどり着いた。仕事で「ナメラレテイタ」ことに気づきながらも、笑顔で牽制することしか出来なかった自分に辟易としたのだ。いや、牽制出来たことは良かったのだろうけれど、まだ腹の中に叫ばないと消化できない気持ちが残っていたのだと思う。

夜の街は、一人で歩く私の表情を隠してくれた。
叫んでもいい場所で、ひたすら無心に腹から声を出すことを許してくれた。
酒を飲んで気持ちをなぁなぁにするのでなく、何に気持ちを抱いたか、どうしたいか考えさせてくれた。

これは、出張先での新しい夜の過ごし方のレパートリーに食い込んでくること必至である。
素敵な過ごし方ができた私に賛辞を送りたい(大袈裟)。

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