【ビジョン策定の体験より③】必要なスキル。

中規模(数十人~300人くらいまで)事業のビジョン策定をファシリテーションをしながら議論してまとめていく手法を前提とします。
結論からいうと、結論を知っていること。が結論を導くことができる1番のスキルです。豊富な経験やケースに関する知見をもとに、おおよその着地点を想像し、そこに向けて、フレームを用いた整理や議論のファシリテーションを行なってきます。ただ、その着地点にたどり着くためのには、細かいテクニックも重要でした。

|フレームワークを道具として上手につかう

フレームに要素を当てはめるだけでは、何も生まれません。フレームは原始的な道具に過ぎず、それを高度に扱う地力が必要になります。3CやSWOTなど、環境を網羅的に把握するための便利なツールです。しかしながら、整理する情報がマクロすぎる、もしくはミクロすぎたりすると、事業との関連性を見いだしにくく、方向性を考える材料になりません。『こんな状況があるから、我が社はこうしなければならない。』と言える、ちょうどいい粒度の情報を突き止めることが必要です。

|”本質”を引き出すファシリテーション

基本的なことではあるのですが、議論のコントロールは難しいです。方向性を見出す材料が見つかる議論のためには、下記のようなことに注意する必要があります。

✔そもそも論ばかりにならない。
社長がダメだとか、経営がこうあるべきだとか、不可抗力の話に終始する。
このようなそもそも論は、最初からしないルールをつくったほうがいいです。
✔局論にとらわれすぎない。
あの部門がどうだとか、その解決策に終始しすぎると、議論が偏ってしまい、大局観のある結論に行き着きません。バランスよく話題を変えていきます。
✔表面的な議論で終わらない。
例えば、商品の魅力が弱いという課題が出た際に、意匠なのか、品質なのか、それは誰に対してなのか、なぜそうなっているのか?など、解決策に結びつく、要因やポイントまでたどり着いていないと、中身のない解決策しかでません。

これらのことを避けながら、本当に解決すべき課題をしっかりとあぶり出しましょう。

|不思議と決まる ”選択と集中” をする

MBAの学びの一つで、よく覚えていることの一つ。それは、『総花的になる戦略ほどだめものはない』というものでした。そもそも限られた資源の配分が戦略の要点です。選択の判断こそが経営。だから、とるべき戦略の要点は絞らなければなりません。やり方は意外と簡単。投票です。しっかりと議論と自分の考えを踏まえた上で、重要な案に投票します。意見が割れたり、票が少ないがどうしても重要と考える人がいる案がある場合は、さらに議論をして、もう一度決をとります。そうすることで、方向性が絞れて見えてきます。割れた意見でも意外と決まっていく様は、少し不思議な感じもしましたが、優先順位を本気で議論すると自然と本当に今大事なことは見えてくるものでした。

|分かりやすく、美しく整理する能力

フレームワークを用いながら、本質を導く正しい議論をして、色々と要点がでてくる。そして、重要なポイントや案を選択する。これらのことができたら、それらを分かりやすくまとめる必要があります。できるだけシンプルな形で、誰でも理解できるを言葉や図式は、人を動かす力をもちます。ロジカルでクリエイティブなまとめで、組織やブランドの旗印をつくることで、ビジョンや戦略が完成していきます。これは、特に得意な人に任せるのがいいと思います。

|そもそも”完成像”を大体分かっていること

冒頭にも書きましたが、ファシリテーターがある程度ぼんやりと方向性を持っていることは、非常に重要なことだと思っています。仮説というやつです。仕組まれた誘導になってはいけませんが、仮説があるからこそ、議論をどの範囲でどこまで深掘りするべきかが見えてきます。逆にいうとファシリテーターの見識が浅いと、十分な議論を引き出せずストッパーになってしまうこともあると言えます。そのためには、十分な見識があることが大事であり、実戦経験が豊富であれば申し分ないです。少なくともビジネススクールでやるようなケースや事例を多く勉強しておくことが欠かせないことだと言えます。

ビジョンつくりのためのスキルは、必要な環境分析をして、それを踏まえた上で議論して、決めるだけ。それだけのことだと思います。ただし、客観性を持って強い意見に流されず、バランスよくかつ本質にいたる議論を展開するには、社内のファシリテーターだと少し厳しい面があります。うちわの関係性から、力関係が働いてしまうからです。ビジョンつくりの中心に立つ人は、フェアな精神でブレない軸を持ってファシリテーションやプロジェクトマネジメントを行う必要があると思います。

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