もう一つのブルターニュ展 「ブルターニュの光と風」@SOMPO美術館

前回、上野で開催中の「憧憬の地 ブルターニュ」展をご紹介しました。

今回は新宿のSOMPO美術館で開催中の「ブルターニュの光と風」をご紹介します。

「ブルターニュ」というテーマは同じですし、描かれているのはブルターニュの自然やその地方の人々の生活なのですが、SOMPO美術館の展示されていた作品はブルターニュに関する作品を多く所蔵しているフランスの「カンペール美術館」の作品を中心にしています。

展覧会のパンフレットによると、1872年に開館したカンペール美術館は「失われつつあるブルターニュの伝統の保存に意識的であった歴代艦長の尽力により、ブルターニュを主題とする絵画が積極的に収集され、その充実ぶりは現在、フランス随一を誇っています。」
 
そして、ゴーギャンやモネなどの知名度の高い画家の作品だけでなく、
「19世紀のサロン(官展)で活躍したアカデミズム系の画家や、20世紀に入ってもなおブルターニュの諸相を様々な様式で描き続けた新たな世代の画家たちによる作品群が、フランス<辺境の地>の魅力を今に伝えています」
とのこと。

ですから、展示されている作品の画家の名前を見ても(わたしが知らないだけなのかもしれませんが)初めて聞く名前も多かったような。
 
上野の展覧会の後でこちらを拝見したので、どうしてもなんとなく比べてしまうのですが、上野の方は国立西洋美術館の所蔵物を始め様々な所蔵先から集められた作品で構成されていて、有名な画家の作品も目立ち、全体的により洗練された印象だった気がします。
 
SOMPO美術館の方は展覧会のタイトルが「ブルターニュの光と風」となっているだけあって(?)、こちらの展覧会の方がこちらの方が自然の力や地に足のついたブルターニュの人々の日々の生活をより強く感じました。
(あくまでも個人の感想です)

そして、SOMPO美術館の方がそれぞれの作品に添えられた説明が詳しく、作品の背景を理解しやすかったのです。
 
例えば、ポスターやパンフレットにも使われてたアルフレッド・ギュの「さらば!」にはこのように記載されていました。
(この後掲載しているのは撮影OKの作品です)

「本作を評した当時の『フィニステール』紙の批評文によれば、ここに描かれるような悲劇は、ブルターニュの海を舞台にこれまで幾度も起きてきた出来事だという。
嵐に遭遇し、起きで転覆した舟にしがみ付く漁師の男は、激しく襲いかかる波と格闘しながら若き息子を抱きかかえている。
父の逞しく日焼けした腕の中で、今まさに息途絶えた息子の体は青白く脱力している。
父は息子に最後の別れの口づけをしようとするが、この若き漁師の華奢な体つきは
その痛ましさを強調し、これが男女の悲劇の場面かと見紛う想像力を、観る者に喚起する。」
 
かなり大きなサイズで、作品そのものの迫力も強いのですが、この説明があるかないかで、見る側の受け取り方も随分変わります。
 
面白いなあと思いつつそれぞれの作品を説明とともに楽しみました。
もう一点、説明を読んで印象が変わった作品をご紹介しますね。
 
ポール・セリュジェの「さようなら、ゴーギャン」。

何も知らずに絵をみると、のんびりとした雰囲気の中で知人同士が
「これから街に行ってくるんだよ」
などと気軽に会話しているように見えますが、実はそうではなかったのです。
 
「セリュジエが、師であり友人であったゴーギャンの旅立ちに立ち会う場面である。
肩から袋をかけ杖を手にしたゴーギャンは、遠くの海を指差し、これからタヒチへ向かうことを告げている。
一方セリュジエは、草の上に腰をおろし、ブルターニュに残ることをその姿勢で表明している。
ゴーギャン没後の1906年に描かれていた本は、<こんにちは、ゴーギャンさん>(1889年、プラハ国立美術館蔵)の中でゴーギャンが着ていたコートと同じものをセリュジエが身につけていること等から、ゴーギャンへのオマージュの意が込められているとされる。
しかしながら、二人の間には冷めた空気が漂い、師とは異なる道を行くセリジエ自身の決意を感じさせる。」
 
解説を読んでから絵をみると、印象がガラリと変わりました。
 
特に好きだなあと思ったのは、フェルディナンド・ロワイアン・デュ・ビュイゴドーの「藁ぶき屋根の家のある風景」。 

初めて知った画家でしたが、日の出か日の入りの美しく、あたたかな光に満ちた作品は、見ていて幸せな気持ちになりました。
 
上野・新宿のどちらのブルターニュ展も、6月11日(日)で閉幕します。
 
「見逃していた!」という方、明日の最終日に間に合いますように。
 
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 
*SOMPO美術館の後、立ち寄った伊勢丹新宿店のアートギャラリーで見た
柳田晃良展「アニマルスピリッツ」(すでに終了しています)。

本当に可愛らしくて、できることなら原画を購入したかったです。。。


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