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水の音楽・海を渡った聖人の物語【クラシックピアノを聴いて感性を磨く】


こんにちは!yukiです。

今日は、
「クラシックピアノを聴いて感性を磨く」
シリーズの9回目です。

クラシックに馴染みのない方も、
気軽に楽しめるように書いています!

猛暑が続いているので、
久々に水の音楽にしました。
(涼む感じではないかもですが…)

ご紹介するのは、リスト作曲の、
「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」

キリスト教の“奇跡”を描写した、
けっこう激しい作品です。

楽しんでいただけますように!


【このシリーズへの想いはこちらに綴っています】


波を渡るパオラの聖フランチェスコ


さっそく、演奏動画を紹介しますね。

リスト作曲《2つの伝説》より、
「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」です。

9分と、やや長めですが、
物語のように楽しめるかと思います。


これまで紹介してきた
繊細な水の音楽と違い、
かなり荒々しい作品ですよね!


この作品は、タイトルの通り、
フランチェスコという聖人が起こした
“奇跡”をモチーフとしています。

その奇跡とは、
簡単にまとめしまうと、
下記のような感じです。

海を渡る舟がなかった聖フランチェスコは、
神に祈って助けを求めた。
そして自らのマントを波に浮かべて舟とし、
弟子たちと共に海を渡っていった。

こんなに省略したら
ちょっと怒られそうですが汗



曲の冒頭では、
深くから響いてくる荘厳なメロディに、

「何が始まるんだろう?!」

と引き付けられます。

その荘厳なメロディは、
波に彩られながら何度も現れ、
海は荒々しさを増していきます。


楽譜の見た目も、
まさに波のようなんですよ!


そしていよいよ、
奇跡が起こる瞬間

まるで祈りの十字を切るかのごとく、
同じ音型が4回ずつ繰り返され、
地から天に昇るように音が荒れ狂います。


マントが舟になった後は、
大海原を舟が進んでいくような、
晴々しく雄大な雰囲気ですよね。

そして終盤、
神様への愛を語っているのでしょうか、
しみじみしたレチタティーヴォ(語るような歌い方)。

ラストは神々しい輝きに包まれて終わります。

最後のまばゆさといったら!
光が目に浮かんでくるようです。

物語性を感じる音楽ですよね。

リストの苦悩


作曲者のフランツ・リストは、
19世紀の世を風靡した大ピアニストでした。

彼が作曲した超有名な作品は、
「ラ・カンパネラ」「愛の夢」など。


リストは、
長身、美形(+長髪)、
類稀なる身体能力、
圧倒的な音楽の才能、
外交的で根明、といったように
生まれながらの“スター”だったのです。

もちろん女性に大人気で、
演奏を聴いて失神する人もいたとか!笑

そんなアイドル的な姿の一方で、
若いころから、
強い信仰心を持つ人でもありました。


「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」も、
リストの信仰心が表れている作品です。

激しくはありますが、
“スゴさ”を誇示するものではなく、
あくまで“奇跡の表現”

“スゴさ”を見せる意図がある曲は、
この曲とは比較になりません笑
(「ドンジョヴァンニの回想」など)


「波を渡るパオラの聖フランチェスコ」
を作曲した当時、リストは、
人生でとても辛い時期にいました。

息子と娘を亡くし、
陰謀によって結婚を妨害され、
深い絶望の末に聖職者となるのです。

信仰の強さを音楽という結晶にすることで、
もしかしたらリスト自身も
強く進もうと決意したのかもしれません。

そう考えると、
この作品が持つ「力強さ」が、
いろいろな意味合いを帯びてきませんか?

闇から光への旅路のようにも感じます。

僕はそういった理由から、
この曲を聴くたびに
勇気をもらっているのです。



このように作曲家の人生を知ると、
作品から感じられるものはグッと増えますし、
どこか親近感が湧いてくることも。

作曲家も人間でしたし、
嬉しいことも辛いことも
たくさん経験されています。

クラシックを聴いているときは、
「人生の大先輩」からのメッセージを
いただいているような気もするのです。


ときには、

「作品を通して、
 何を伝えたかったのかな?」

と考えてみるのも面白いですよ!





最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。

それでは、今日も良い1日を!



(今回のカバー写真は、
 南アフリカの海でした!)


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