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第66回 日本人が囚われている、「満席・満室・完売をゴールにする癖」を辞める!

「空席を恐れすぎる」という呪い

多くのサービス提供者は「満室」「満席」「完売」が大好きです。
僕も少し前まではそうでした。
やっぱり、お客さんがたくさん来てくれると安心するもの。

ただ、今の日本の状況(貧しかったり、人が減っていったり)と向きあったり、海外のセレブに会ったり、ラグジュアリーサービスを利用しているうちに、「必ずしも、たくさん売れたらイイというわけでも無いんだなぁ」と思うようになりました。 #映画やライブの時は相変わらずたくさんの人を呼ぶけども

自分の中での決定打となったのは、伊豆大島に建設予定の『森のひこうきホテル』の宿代についてスタッフと話し合った時です。

ホテルを運営するとなると、ついつい『全日完売』を目指して、「空室を埋めよう」「空室を埋めよう」としてしまいますが、そもそも伊豆大島の一棟貸しのホテルを、年間に365回も埋めるのは現実的じゃありません。 #オフシーズンもあるし

そこで、「365日を埋めよう」から、「月に3日ぐらい借りてもらえたら、モトがとれるようにしよう」に切り替えました。

その為には「一泊(最低でも)30万円」。
そこから、「…さて、一泊30万円のサービスって何だ? 何を用意すれば、その価格に納得感が出るんだ?」と考え始めました。

言い方を変えると、「たくさん売らない!」と決めたことによって、価値創造が始まったわけです。

そこから、勉強の為に、ラグジュアリーホテルをたくさん巡りました。
そこで、たくさんの「納得感のあるラグジュアリーサービス」と、「残念なラグジュアリーもどきサービス」に触れ、「ラグジュアリー」と呼ばれるサービスの値段が何に紐づいているか?を知りました。 #まだまだ修行中の身ですが

そして、それは、「満席にする!」「満室にする!」「完売させる!」をゴールにしていたら、いつまでたっても辿り着かない(見えてこない)モノでした。

たぶん、これ…辞めないと始まらないんです。

たとえば、1週間に6日営業している店を、1週間に3日だけ営業する。
それだと食っていけないから、その時初めて僕らは「どうすれば3日間で、6日分の売り上げを作れるんだろう?」と考える。

1週間に6日営業しても、「食っていけるかどうか?」という不安がある中、営業日を減らすのは、なかなかの勇気が必要ですが、減らすことを決めないと価値創造が始まらない。

考えてみりゃ、僕がクリエイティブに充てる時間を確保する為に、「なるべく少ない稼働で、なるべく大きなリターンを」と考え始め、IPの運用ウンヌンカンヌン(権利に働いてもらう)を始めたのも、「レギュラー番組はやらない!」と決めてからなんですね。

言い換えると「肉体を稼働させることで不安を拭う作業」を辞めてからです。

気がついたら僕らは「満席」の呪縛にハマっていて、空席を恐れるようになっていましたが、価値を作ること(高く売ること)さえできれば空席は怖くない。

そして、もう一つ。
「運用コストをかけない」を覚えれば、空席は怖くない。

僕、兵庫県川西市に『見上げる家』とも言うべき、変な家を作ったんです。


「生活する為の家」というよりも、一軒家のアトリエです。もちろん生活もできますが。
仕事でいろんなところに行くし、東京にも家はあるので、この家を使う日というのは限られてくるんですね。

せっかくイイ感じの家を建てたのに、「使わない日」があるのは勿体無いじゃないですか。

というわけで、この『キンコン西野の家』は、使わない日は「レンタルスペース」として貸し出そうと思って、予約サイトを作ったんです。

僕の自宅が、僕の留守中に働いてくれているわけで、月に3~4件でも予約が入れば万々歳。
これを「万々歳」じゃ無くする方法は、「スタッフを雇うこと」。

これをやった瞬間に『キンコン西野の家』は、予約を埋めることに奔走しなければなりません。
キングコング西野亮廣が連日宣伝し続けなければなりません。

留守中の家に働いてもらうハズなのに、それだと本末転倒です。

話を整理すると、「空席を恐れすぎる体質(空いている席を埋めよう埋めようとする思考)」を問題視しないかぎり、僕らは価値創造を始めないし、運用コストの本格的見直しを始めない。

長い年月をかけて纏まりついた呪いなので、これにはリハビリが必要です。

だけど、ここからの日本で生きていくには必要な作業です。 

まずは「空席を恐れすぎてしまう身体」に疑問を抱くところから。
そんなこんなで、たった今、ロサンゼルスに到着したので、いろんなショーや、いろんなビジネス、いろんな文化に触れてきます。 #お前の移動距離どうなってんの #さっきまで日本におったやろ
現場からは以上です。

西野亮廣

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