「鍵の掛かった男」を読んだ話。
先日のこちらの記事でもご紹介した、
有栖川さんの「捜査線上の夕映え」を読んでからというもの ミステリ熱が無事復活し、
火村&アリスシリーズの楽しさも思い出したので、現在は片っ端からシリーズを再読しようと試み中です。
長編で特に好きだったのは
朱色の研究
鍵の掛かった男
狩人の悪夢
あたりだったのですが、捜査線上の夕映えが一気にトップに躍り出ました。強い。
今回はそのうち一冊を再読した感想をお届けです。
(今回もちょっとネタバレありかも?にて失礼します)
「鍵の掛かった男」を読んだ話。
何重もの、
鍵と鍵と鍵と、鍵!
読 み 応 え … (喜)
ひたすら「アリス、足で捜査する」というような進行なので、ああああ焦れったあー!とはなるんですけれど、少しずつ少しずつ真相が解明されていく過程はやっぱり面白くて、この着々と感がたまらない。
調査そのものが謎解きの手掛かりになるとか、え、どういうこと?すごいな…?などという驚きもありつつじっくりと読み終え、とても満足な気持ち。
久々の再読なので「こういう展開だったっけ…」と楽しめたし、「解決編の話、めちゃくちゃ頭こんがらがる!」と、前回も終盤は頭がこんがらがりながら読んだことはよく覚えていたので、同じ読み方をしてしまったりなど、ボリュームたっぷりの謎解きを楽しみました。
ただ、自分は地理的・歴史的な描写に興味が薄いこともあり情景がなかなか把握しにくく、そこは少々躓きながらの読了でした。
あとは、相変わらず推理というものを全く出来ない自分を再確認しました。通常運転です。
推理小説家アリスと、
ミュージシャンである作中人物との会話が個人的に大変興味深かったので、ちょっと長めの引用をします。
++++
ここの一連の描写、表向きは人当たりのいい親しみやすさや人畜無害的な印象を持たれがちなアリスの、深く内蔵してる毒とか、実は結構人間に対して厳しい感じ(今作中でも「人間嫌い」とか指摘されていたし)とか、そういう激しい部分が表現されていていいなーと思うのです。
会話の内容的にも「ああ、わかる…」とか頷きながら読んでしまった。
そしてこの会話を読んで、ずっと自分の疑問としてあった「なぜ私は文学が苦手なんだろう」という感覚の最適解をもらったような気がしています。
今はそこまで拒否感は無いし興味深く読めるものも多いけれど、昔は「文学作品」の「答えの無さ」が気持ち悪くて、作者が何を描きたかったのかも当時は全く理解できなくて、それが「文学とはそういうものである」という様式も知らなかったのでますます敬遠していた時期があります。
恥ずかしながら「理解できないものを気持ち悪く感じてしまうド未熟者」の象徴だったわけですが。
今回アリスの見解を読んで
「なるほど。私は「“答えのない謎”を扱っている文学」という世界が、答えが無さすぎて、モヤモヤして、苦手だったということか」と、至極納得しました。
今はというと、そこまで文学というものを敬遠はしていないしむしろ好きだと思える作品もあるけれど、
だけどやっぱり私は「フィクションという物語」が好きで、俗物だろうが何だろうが、エンタメという『答えがある謎や物語』が大好きだな!!とは、つよく実感しているところです。
アリスが常に言葉にする
「火村と関わった現実の犯罪を自作の素材にはしない。本格ミステリは、空想の物語を描いてこそ」という矜持には
「わかる… 空想・フィクション、最高!!」
と同意するばかりの私なのでした。
ミステリ外の部分の感想が長くなってしまった気がする。いつものことです。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
それでは。
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