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歌詞のススメ


JC HOPPER Jr.のクワバラです。

バンド活動をして、ソングライティングをしていると、よく周囲から「どうやって歌詞を書いているの?」と聞かれることがある。

そこで今回のノートでは曲の上で「核」となる歌詞の、僕なりのススメを述べようと思う。


しかしながら、そもそも歌詞というものをおざなりにしているものも、それはそれで立派な「曲」であり、そして歌詞の書き方というものは、バンド・ソングライターの数だけ存在する。つまり正解というものは当然のことながら存在しない。


これを言ってしまうとある種今回の記事に対するアンチテーゼになりかねないが、つまり本記事でいうトリセツは「あくまでクワバラ個人としてのトリセツ」であることをここで強調しておきたい。


これを見た、これからバンドを始めるにあたって曲を作るのに歌詞を書こう!という人や、ネタ詰まりを起こしている同業者に「なるほど、こういう方法もあるのか」と思ってもらい、あわよくば参考にしてもらえれば幸いである。


まず初めて歌詞を書こう!という人について言えるのは、「悩んでないで、さっさと1つ仕上げてしまおう」ということである。

初心者にありがちなジレンマとしては、仕上げた歌詞がどうにも満足のいかないと中々自分の中での及第点を超えずに世に出せない、というものが挙げられる。


これは歌詞や音楽だけでなく、全ての表現物を始めようとする全ての者が陥る宿命と言って良い。


しかし一度仕上げて、ライブやメンバーの前で披露すれば、聴いてもらった人からの意見を拝聴することができるし、更には自分の中ではもっとこうしよう、という意見が出てくるものだ。

それを踏まえて少しずつライブを踏んで自分にとってのより良い形を模索していっても決して遅くはないはずだ。


最初の内に巧みな言葉など吐けるわけなどない。ジーパンと同じで吐いた数だけ味になるというものだ。


最初の内はある程度の期限を定めて歌詞を仕上げる、という習慣を身に着けよう。ちなみに僕はまだこれを完全に習得するには至っていない。これは自戒を込めたアドバイスである。


そして次にやってほしいことは、自分の好きなアーティストの歌詞を徹底的に研究してほしい、ということだ。

自分が歌詞を書いていく上で述べておきたいことは、歌詞というものは自分のインプットされた言葉以外のものから引き出されることはない、ということだ。

本や詩集、映画や好きなアーティストの歌詞といった代物を、歌詞を書こうなどと考えた時点で、ある程度は人生の中で見聞きしてきたはず。

そういった代物が自身のイズムとなり、そして血肉になる。そして特に自分の好きなアーティストの歌詞というものは、自分が書く歌詞の正に核となる存在だ。


散文的なのか、はたまた韻文的なのか。


バックグラウンドを大事にしているか、あくまで歌詞・曲単体としての表現なのか。


作詞者がどんな心情で、どんな言葉遣いで、どんな技法でそれらを表現しているのかは少なくとも他のファンの誰よりも知っている、と胸を張れるくらいには把握しておくと、自分が歌詞を書く上でのネタになる。


そして声を大にして言っておきたいことは、言葉というものは出せば出すほど枯渇していく、ということだ。


同じテーマや言葉ばかりを使いまわし、歌詞にしていくわけにはいかない。心の中の引き出しが空にならないように、吐き出すこと以上にため込む意識は常に必要だ。

それは読書をする習慣に身に着けるでもよし、映画を観るでもよし、アーティストのディグをするでもよし、気の向くままに足を外に向けて写真撮影に講じるもよし、気の合う友達と何気ない話に意識を向けるようにするのもよし……なんにせよ、各々の心の中の言葉のストックを切らさないように気をつけてほしい。


さてここまで出来たら言葉を「歌詞」という形に落とし込んでいく作業だ。ここで一番大切なことは、「テーマ」に沿った言葉を綴ることができているか、ということだ。

僕は必ず歌詞を書く前に「このこと」について書こう、というテーマを決めてから作詞にとりかかる。それは「体験」でもいいし、「想い」でもいいし……なんにせよ、その言葉がテーマから外れても、そして無駄な表現が多すぎてもいけない。


歌詞の難しいところは、説明ができないことにある。曲の前に「これはこんな気持ちで作りました」というMCを挟むことで導入できることもあるが、それをライブ中の全ての曲でやるのは土台無理な話だ。

作詞という作業では、メロディという限られた時間と音節の中で、書いた歌詞から得られる限られた情報で、適切な「テーマ」を聴いた人にわかってもらう必要があり、それができなければ、「テーマ」からは遠ざかってしまう。


以上が自分流の歌詞のトリセツだ。正直世に存在する曲のうち、このセオリーに即していない曲が殆どだし、わざわざこの手法を説明したのも、偏に自分のセオリーを言語化しておきたかった、という感情に依拠している。


冒頭でも述べたが、初めて歌詞を書く、という者やどうやって歌詞を書こうかと考えあぐねるバンドマンの「試しにやってみるか」という可能性の提示をすることができたのであればうれしい限りである。




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