見出し画像

今なぜポルトガル!?(世界が注目するポルトガルのこと)

意外にもサステナブルな取り組みが多い

この国に通い、さまざま事物を目の当たりにする中で、日本が学び、応用できる知恵や工夫を持った事例がたくさんあるのでは、と思うようになりました。日本では、オランダやベルギー、ドイツなどの先進事例が紹介されることが多いように思いますが、いやいや、このポルトガルもかなりおもしろいことになってました。

たとえばエネルギーのこと。日本同様に、ポルトガルはエネルギー資源が豊富な国ではありません。長年、国外から化石燃料を輸入し、発電に活用してきた歴史があリマス。それらは財政を圧迫し、結果として再生可能エネルギー(自然エネルギー)の導入へと舵を切ることになりました。

その決断は功を奏し、今では先進的な取り組み地域の一つとして注目されています。2016年5月には国内の電力消費のすべてを、連続100時間を超えて再生可能エネルギーで賄えたことも話題となりました(日本ではほとんど知られていないですが)。

再生可能エネルギーの中で、とりわけ風力発電の導入量が多いのがポルトガルの特徴といえます。2015年の実績では実に7割以上を占めます。海風の強いポルトガルの風力利用の歴史は長く、中世のころよりさまざまな生業に活用されてきた素地があるようです。

ソーシャルグッドなさまざまなプロジェクトも

エネルギー面だけでなく、ポルトガルではサステナブルな取り組みも数多く行われている印象があります。各地にエコ・ヴィレッジ建設の動きがあったり、ソーシャルグッドな活動をする団体や個人も数多かったりします。

たとえば『ビオ・ヴィラ』。リスボンから南へ1時間ほど行った場所にあるここは、ポルトガル国内でいち早くはじまったサステナブルな宿。自然との共存をテーマに、標高700mの小高い山の中腹に立地し、廃棄物ゼロを目指したレストラン、コンポストトイレ、リトリート関連のイベント開催など、持続可能な宿泊形態のかたちを目指しています。

また、たとえば『サーキュラー・ウェア』というプロジェクト。観光負荷が高いとされる衣料業界への提案として生み出された取り組みで、スワップスポットと呼ばれる場所には、プロジェクトに賛同する人たちから集められた衣服が並べられ、使わない衣服と交換できる仕組みになっています。スワップスポットはリスボンを中心に国内で数十ヶ所。ちなみにこれ、旅行者も利用できるのでおすすめであります。

https://www.circularwear.com


オーバーツーリズムにも積極的に取り組む

コロナ前、ポルトガルの首都リスボンは、世界屈指の観光地として知られ、日本の京都同様に、オーバーツーリズムも問題視されていました。Airbnb(民泊)の数は世界有数で(リスボン)、観光がビジネスになる一方で、地価が爆上がりし、同時に家賃も上がり、地元リスボンっ子が郊外に引っ越さざるを得ない状況にも(そういえば欧州随一の地価の座を、リスボンがパリから奪ったというニュースも最近ありました)。

コロナが明け、2023年はコロナ前を上回る観光客の受け入れとなりましたが、この国は、新しい観光施策「FU-TURISM」を世界に投げかけ、旅行者のマインドの変容を促し、ルーラルエリアへの旅を推奨しています。この流れは世界的な動きであり、日本も大いに参考なるようにも思っています。

世界的なカンファレンスも多数開催中

世界的なカンファレンスも、最近のポルトガルでは数多く行われています。ウェブサミットは、イノベーション&スタートアップ、AIやビッグデータ、フィンテックなどをテーマにした世界的なITカンファレンスですが、近年は首都リスボンで開催されることが定例となっています(2024年も11月に開催予定)。

また、2023年、2024年の世界海洋サミットも開催地もポルトガルでした。持続可能な海洋経済への移行に向けた対話と行動を喚起するカンファレンスは、来年は日本での開催になるようですが、こういった世界的かつ最先端の会議・イベントは、ポルトガルでは枚挙にいとまがありません。

背景には、欧米屈指の移住好適地であることが関係しているように思います。欧州では比較的物価が安いことに加え、年間3000時間以上の晴天を誇り、そんな暮らしや自然環境が人を集めます。アメリカからの移住者も、スペイン、イタリアを目指す人の数を凌ぐようになったこともニュースになりました。人が集まるからこそ、情報が集まり、ここでイベントを開催したり、発信したりすることに価値が出るのだと思います。この国には世界の〝今〟が溢れていると感じます。取材対象として、これほど魅力的なことはありません。

この国で取材していると、国土がそれほど大きくなかったり、資源が潤沢でなかったり、高齢化が進んでいたり、観光客が許容量以上に押し寄せたり、ネガティブな状況や環境が、ポジティブな未来を創造する活力にもなっている気がします。日本がポルトガルに学ぶべきことはたくさんあるように思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?