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オタクには遊泳魚タイプと深海魚タイプがいる

私は一般的にいうと「オタク」寄りの人間だと思う。

ところが現職のピースオブケイク社は、noteやcakesを運営しているだけあってか、社員の「オタク」度平均値が高いのである(「趣味人」「サブカル」などいろいろな言い方はあるだろうがいったん「オタク」で統一する)。

ツーカーで作家カレー沢薫氏の良さを理解してくれたり、ハロプロ話を共感してくれたりするオタリテラシーの高さはこれまでの交友関係と比較すると僥倖ともいえる事態である。
そのくらい基本ステータス値が「オタ」にふれた人材に満ちた空間で1ヶ月過ごし、何が起きたかというとオタクのバリエーションの発見である。
なにせほぼ全員が何らかのオタクスキルセットを含んでいるのでサンプル数が多いのだ。

突然だがオタクとは「魚」のような生き物だ。

程よく趣味や流行を楽しめる、非オタクの人はカルチャーという海の水面をサーフィンのように軽やかに高速に滑っているような状態ではないかと想像する。水面は水面であり、表面を滑って楽しむものなのだ。
オタクはというと、なぜかその水面をじっと見つめて気づくのである。「これ、潜れんじゃね?」と。「潜ろう」と。

そう、オタクは「潜る」才能がある人間といえるのだ(そう思うと「沼」ってなんとしっくりくる言葉だろう)。

オタクは大きく分けると稼働性に優れた遊泳魚タイプとガチ性に優れた深海魚タイプがいる。

遊泳魚タイプオタは色々な海域に次々と興味を示し、行動範囲を広げてスイスイおよぐ魚をイメージしてもらえると良い。水深はソコソコである。
この手のオタクは関心フットワークが軽く、比較的多くのジャンルに触れたことがあり、ゆえに客観的な視点を持てるという美徳がある。おそらく編集者的な人にはこういうタイプが多いのではないだろうか。ただし、海域が広い分、潜水の深さについては「この海だいたいわかった」という手応えを得られるところまでで満足してしまうことが多いのではないかと思う。

深海魚タイプオタは、特定の海域を好み、想像を絶する水深で生命を燃やしている。
このタイプは生息する海への愛と探究心がハンパではないため、広い海域へクイックに移動したりはあまりしない。その分、普通の生き物では身体がブッ壊れるところまで潜ることができる。どういうわけか身体が深さに最適化されているのだ。何か一つの対象にワケのわからない投資ができたり、偉大な実績を残したりするのはこちらのタイプだろう。

私はどちらかといえば遊泳魚タイプのオタクである。
幼少のころから深海魚タイプオタに憧れがあった。何度かトライしてきていたのだが、残念ながら一定以上の潜水になかなか成功しない。身体が深さに適応していないようなのだ。深さへの肉体耐久性は “ギフト” なので大事にしてほしい。深海魚の生き様を見聞きするのは相変わらず大好きである。

弊社デザイナーは現在4人なのだが(もちろん全員オタクである)

私と沢登氏はどちらかといえば遊泳魚タイプ、佐賀野氏と川井田氏は深海魚タイプだと酒の席で結論づけられた。

フォントを自作する人間は変態だとデザイナー界では語られがちである。
佐賀野氏はクオリティの高いフォントをいくつも生み出しており、フォントへの執着心と萌えポイントの目の付け所は立派な変態であり、圧倒的深海魚タイプオタのそれである。
そのため弊社デザイナーの間では敬意を表して「フォントガチ勢」と呼んでいる。

ただ、どうやら深海魚は深海魚で、常に目線が深海基準になっているため「いや、俺まだ2千メートルだし大したことないよ…本当にスゲーやつは一万メートルとか潜ってるからさ」などとスケール感がバグった謙遜を持ちがちである。深さのインフレである。ディープにはその上をいくディープ(いやこの場合は下か)があるのだ。

なにはともあれオタクはみんな違って、みんな良い。
リスペクトを忘れずに楽しく泳いでいけたら良いものである。
(ピースオブケイク社は多様性を大事にしています)


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