質感の話


Uniteで中村勇吾氏の講演を聴いた。

「ゲームの中の質感」というテーマだった。

内容を大雑把に言うと、質感や性質など「質」というものは対象に内在していて、我々はそれを目に見える「現象」を通じて察知している。この原理を元に質感というものを表現する、それを可視化する現象をデザインしていく、というものだった。


実装も含めてやっぱthaすごいなあ〜とか考えていた帰り道で、最近の出来事をふと思い出した。


大きく話は変わるが、メッセージングアプリというものは現代人にとって欠かせないコミュニケーションツールだろう。僕は諸般あり、FBメッセンジャーをよく使っていて、友人や家族、何かしらFB上で繋がった人はもちろん、彼女とも生活上の連絡事項やその時思ったことなど、様々な話をメッセする。それは、文字であったり、あるいは写真やスタンプといった形で表現される。

その延長として僕は彼女に対し、これおもろいやんと思ったTwitterの投稿やWebの記事へのURLを送ることで、よく共有している。そこからツイートや記事の内容についての感想が返ってきたり、議論が起きたり、もちろんそのまま流れることもある。同じように、相手からもおもしろいツイートや、バズっている記事などが送られてくる。

このやりとりでの、僕の行動はこうだ。

まず、iPhoneでSNSを眺める。あ、これおもしろいなと思う。しかしリツイートやファボをする、というよりは誰かに「これおもしろくない?」といった共有がしたい。そんな時は、気になったツイートのURLをコピーする。FBメッセンジャーを開き、彼女とのトークを開く。コピーしたURLをテキストボックスにペーストする。そして送信ボタンを押す。


ある日、自宅にて2人でゴロゴロしていた時、彼女はSNSを眺めていた。その様子を僕は眺めていた。すると、おもしろいツイートか何かを見つけたのだろう。いつものように、彼女は僕にURLを送ろうとしている事を察した。彼女の指先がアクションシートの「その他の方法でツイートを共有」をタップする。

次の瞬間、驚愕する。

前述の通り、僕はここで「ツイートへのリンクをコピー」を押し、メッセンジャーアプリを起動し、彼女とのトークを開き、リンクをペーストして送信している。

しかし、彼女が押したボタンは違った。というか、僕が単純に知らなかっただけなのだが、中段のアプリが並んでいる行でFBメッセンジャーも選択することができる。すると、トークルームの一覧が現れるので送りたい場所を選択し、送信ボタンを押すとURLを通常のテキストメッセージと同様に共有できるのだ。FBメッセンジャーを立ち上げ、トークルームを選び、テキストボックスにペーストして送信する必要はない。

そうして共有を終えた彼女は、何食わぬ顔でタイムラインへ戻っていた。

同時に、この仕組みに気付いた僕はハッとしてしまったのだ。当然のように、自分と同じ方法でURLを共有していると思い込んでいたからだ。

もちろんトークルームに表示される内容は同じだ。おもしろいなと思ったツイートや記事へのリンクがお互いに表示されている。だが、そこへ情報が送られてくるまでの行為は、全く異なる経路を辿っていた。

いつしかこのURLを共有する行為について、彼女は「メモ代わりに送ってるだけだよ。」と言っていたのを思い出した。言われた時はたぶん、照れ隠しかな?とか、随分とめでたい解釈をしていたように思う。だが、彼女が言っている、そのうちの何割かは言葉通りなのだろう。つまり、メモをするように、ということ。彼女のURL共有は、まさしく「いいね」を押すような、Pinterestでピンどめするような、そういう所作だ。


試しに彼女が行なっていた方法でツイートを共有してみた。

たしかにこれは楽だ。タイムラインを離脱することもなく、わざわざアプリを立ち上げる必要もない。だが、それまでとは「質感」が異なっていた。そして、今まで通りトーク画面に表示されるURL。あいまいなものが立ち現れてしまった気がした。



#コラム #インターネット #Design #デザイン #UI

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