寝ても覚めても俳句な日々

当たり前の日常の小さな気づきを自由に俳句に詠めたなら。

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ひとりなら/榮猿丸 鑑賞文/ゆきまち

俳句四季 2021.12月号 俳句と短歌の競詠より  榮猿丸先生の ひとりなら~10句の鑑賞文です 重ね脱ぎせる女の胴や捩れ伸ぶ白息のおほいなる君悩むなよ黙の果モヘアの胸の糸くづ摘む電子レンジの扉に映る毛布かな別れ告ぐれば残響あはし冬苺蜜柑一房抓み胎の子これくらゐ鼬ひき殺しただらうひとりなら電線に天使ぎつしり聖夜の果君消えて黝き穴や布団の中五感のみ目覚むるからだ十二月

    • 一匙のつぶやき

      あれこれと、知りたくて、わからなくて、答えを早く見つけたくて、遠くへ遠くへ手を伸ばす。 掴んだと思うよろこびもつかの間に、またすぐに不安になり、求め、手を伸ばす。 もう少し、呼吸を整えて、足下をみてごらんよ。 こぼしてしまった大切なものを、たくさん踏みつけてしまっているよ。 なんの為に、誰のために、なんて、どれだけ考えても答えはないよきっと。「考えること」、それが答えなのかもしれないよ。 息急き走り愛想笑いを振りまいて喉がからからでしょう。 花曇り銀貨落としてしま

      • わしはあなたを思っていますと あなたにつたえてしまいます この思いをつたえたところで わたしの生活もあなたの日常も なにもなにもかわりはしないのに 物理的距離が救いです なりふりかまわずの若さもなくて ほっとしている自分もいます 広い空に雲がかたちを変えてゆっくりと あなたの街へわたしの思いをのせ きょうも流れて届く前に 消えてゆきます

        • 鎮魂句

          鎮魂句に順位なんてあるのか。 選をすることなんてできるのか。 祈りの句を願いの句を誰に評価してもらいたいのか。 なあ、違うだろう。 何がわかる。 あからさまにワードを出して露骨にして 自己満足だよ。 それは鎮魂句じゃない。  来月のとあるラジオ。 毎回選者イチオシ句が選ばれる。 しかしその回だけは句を紹介するのみだ。 鎮魂句は評価の対象ではないから。 百歩譲ってもそういうものだろ? みなで忘れぬよう(本当は自分自身だけでいい) 心に刻むためだろ。 飛びつくよ

          ひとり占め

          ひとり占めなんてできなくて 翼を渡したのはわたし 「いらない」って言って そばにいてくれると思ってた リードはすぐに外れるし わたしも背を向けた  だけどどちらかが 振り向くはずだと信じてた 闇は思いの外居心地は悪くない 空は冬鳥を隠し雪もよい 容赦なく時間は流れ 間違い気づいても言えない 砂場にもらったものを全部埋めて 何か変わった 変わらなかった からからに乾く川の小石ひろえば なで肩の石はきみのようだ 笑った顔が泣いて見えるよ 違う歌が好きだったんだ カチューシ

          怒りと悲しみとバイバイ

          見たくもない、読みたくもない言葉の羅列がスクロールすると目に飛び込むシステムは時にゲリラ豪雨に見舞われた感覚に陥る。 あまりにきついとミュートする。 ミュートも言葉の羅列も自由だ。 甘やかすのは簡単だ。 仏の顔も三度までいや、ニ度までだ。 三度目は相手に考えて欲しいからきちんとした言葉で伝える。 冷たいひどい、わたし今心が病んでるのに。 うるさい。 それはあなただけじゃない。 あなたのせいで困ったなあと思う人がいる。 いいよ、いいよと甘やかすのは簡単だ。 敢えて突き離す

          怒りと悲しみとバイバイ

          耳遠く

          頭皮を揉む指の腹なる髪おぼろ 啓蟄やタロウをがしがしと洗ふ ぶくぷくと網のホルモン春の宵 声は大きく耳遠くなり土匂ふ 青饅のぬた目分量小指に舐むる ぐつと髪束ねイマジン昭和の日 薄暑光びるびる脳のしゆわしゆわの ノーブラの打水や会釈の屈む 実梅なる夜半のスキップ辿々し 目と口の飛び出してゐる金魚かな 夏果ての「愛人/ラマン」映画館 山の秋ケーブルカーまでが遠し 水飲めば噎せて盆の月を嫌ふ とんぼうに負けぬ太もも漕ぐや漕ぐ 生理まだくるか道の駅のオク

          2023上半期自選十句☆☆☆☆☆☆読売俳壇小澤實選入選句

          ルービックキューブ二時間着ぶくれて 知らぬ間に雪それほどに愛し合う 初午やけつね饂飩の甘き揚げ 仲良くなるための喧嘩やミモザ咲く 花の昼日替り弁当のマリネ くすぐればくすぐり返す桜草 くしやくしやのストッキングや藤の昼 雑巾を二枚縫ふ朝麦の秋 蠑螈みる吾も蠑螈に見られをり 火取虫場内指名本指名 (自選句) 自選をして投句する中で小澤先生に選を頂いた句を纏め最後のみ私自身の自選句です。 下半期も徹底した描写と一匙の思いを季語に託す俳句を詠んでいきたいと思い

          2023上半期自選十句☆☆☆☆☆☆読売俳壇小澤實選入選句

          暮の春~夏来る

          いつの時代にも憧れの先生がいました。 ギターの弾き語りで授業時間の半分以上を使ってしまう国語の三田村先生 (岸谷五朗+所ジョージ÷2風でした🎵) この先生のおかげで国語が大好きになった。 先生への思いというのは尊敬や憧れの他に一匙の恋心があるのだといつも思う。 この一匙の恋は多くなることも少なくなる事も多分ない。 そんな風に思える先生に出会える事はいくら探して望んでも叶わない事の方が多い。 私は俳句に出会い、心から信頼と尊敬と一匙の恋をする先生に出会えた。 俳句を続ける限り変

          2023 花百句より

          リュックから箸と花片二三枚 花の香に生後五日の犬や伸ぶ 花房や猫の丸みとくにおしり 実家てふ言葉酷なり花の陰 花月夜生卵溶きぬるき飯 花の露甘し恋にしては苦し 病窓は天井までや母の花 花を惜しむ猫の項をさがしをり 絡ませた小指残花のエレベーター 徒花や乳房は重き罪のやう

          風の仲間とやった四角二十句(推敲しました)

          ドミノ倒し 藤田ゆきまち 種蒔くや四角いサクマドロップス カステラの四角へフォーク水温む 輪ゴムの箱四角や菜の花束ね  行く春や野良と四角いランドセル 遠足や友の紙石鹸四角 占いの館は四角蔦若葉 春惜しむ壁の表彰状四角 帰省子やモスの四角い紙袋 初夏の休符の四角パスタ茹で 婆ちやんと四角いバスと麦茶かな カンニング夏至の四角い生徒手帳 水槽のお水は四角ハンカチも 換金所の四角い小窓大夕立 ががんほが四角い窓を理解せず 食パン四角や白夜のおままごと 銭湯のタイルは四角じんべ脱ぐ

          風の仲間とやった四角二十句(推敲しました)

          面白すぎる句(自選)

          面白すぎるからきっと選外 生贄のリカちゃん留守番の余寒 点滴を酒と間違ふ冴返る 簡単な服に春ショールで松屋 このバスは春風経由あなた行き 春雷やあヽ好きな人まで酒乱 出席を取ります春の鹿います 春休み父は野球を観てばかり 春深し枝毛ばつかりだから切る 春暑しハグを厄介がるやパグ 炊飯器がパンケーキやりたがり初夏

          俳句10  短歌10  詩

          愛撫 膝撫する母と都電の春浅し うぐひす餅挟むゆび鼻擦るゆび 背中撫すれば母眠くなり椿 春雨のテスト子の頭を撫する 手のひらを擦る入学試験かな 野良猫を撫する弥生の防波堤 麗日に壺擦りをる少女かな 手の甲を撫する花冷の薬局 花よりも眼擦るや花よりも 逝く春や母の写真を撫する朝 洗い直しやり直し  中辛のカレーライスが物足りぬ私の前で辛いと夫 二日目でカレーうどんになるカレーいつの間にかに許し合う日々 快晴の理由わからぬイライラがぶり照焼の焦げに出ている 手作りのコ

          俳句10  短歌10  詩

          俳句生活~よ句もわる句も~風のまとめ

          風組の2019年組2023年1月兼題 春待つ 待春や閑雲といふ水の仮死 いかちゃん 入院のための退院春を待つ 磐田小 絵馬殿を吹き抜ける風春を待つ 詠頃 ごめんねのねを言ひたしよ春を待つ 髙田祥聖 春を待つお手玉二つ三つ四つ 藤田ゆきまち 春待つやハシビロコウに嫁来たる 藤雪陽

          俳句生活~よ句もわる句も~風のまとめ

          うるめ焼く 五十句

          うるめ焼く 藤田ゆきまち 膀胱をけられ陽春の胎動 新聞のにほひと春風のにほひ 亀鳴いて父の手を引く日曜日 山里の暮らし彩る菜飯かな 春泥春泥スニーカーは真白 神様のコーンフレーク万愚節 焼跡の更地二年や霾れば 手づかみのシュークリームや花衣 ふるふるんお玉杓子の尾つぽつぽ 前籠へ放るエプロン花の陰 行く春のサラダ残してしまひけり 夏来るそろばん塾の薬缶かな ジャスミンや兄の拳の拠りどころ 赤白黄色てんやわんや夏物 泣きさうな椅子を擽るてんとむし 空梅雨や卵と鉄のフライパン

          昆布茶 (短詩)

          昆布茶は父ちゃんの味 あの日父ちゃんがうまそうに そろそろ そろそろ すすってた 昆布茶は父ちゃんの味 だけどいま 飲んでいるのは梅昆布茶 昆布茶を飲めば どうしても また 父ちゃんに会いたくなるから 昆布茶は父ちゃんの味 梅昆布茶はわたしの味