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[漫画&ブログ] カワムラくん 第3話 ~妻カッパちゃんくん~


この漫画は、私と妻ちゃんの関係性をモチーフに描きました。社会になじむために無理をしてしまう人、優秀でい続けようとしたり、常におもしろキャラでいようとしたり、そういう人は現代に多いですよね。妻ちゃんもその傾向があります。それはその人の、「私が素の状態or何にも気を使わない状態であるとこの世の中に受け入れてもらえない」という思考パターンから来ています。そしてその思考パターンは、生育環境に原因がある場合が多いです。例えば親が、子供が良い子にしている時だけ機嫌が良く、わがままを言ったりするとすごく不機嫌になってお前なんかいなきゃよかった的な雰囲気を出すのが日常だったりすると、子供は「自分が優秀とか面白いといったポジティブな状態でい続けないと親に受け入れてもらえない」と学習します。そして子供にとって親は最初の他人です。つまり「自分が優秀とか面白いといったポジティブな状態でい続けないと他人に受け入れてもらえない」と学習し、他人の集合体が社会なので、「自分が優秀とか面白いといったポジティブな状態でい続けないと社会に受け入れてもらえない」というふうに学習し、妻カッパちゃんのような感じになってしまうのです。

それに対して、私の中学生の頃をモチーフに描いた「杉村くん」は、あまりポジティブな状態の人は出てきません。優秀ではないですし、みんなだるそうです。でもそれが、「自分が優秀とか面白いといったポジティブな状態じゃなくても受け入れてもらえる」という楽ちんな居場所として機能していた、という内容です。要は「受容」を描いた漫画です。

そういう受容フィールドって人格が固まるまでの時期、特に10代の頃は絶対に必要だと思うんです。世の中の事、自分自身の事をあまり知らない子供なのですから、世の中はもっと優しいもの、自分はもっと楽ちんに生きて良いんだという意識を学習したほうが、心の健康につながります。人間は肉体よりも心がメインなので、心が健康イコール人間として健康という事ですからね。実際に世の中が厳しくて、自分はもっと努力しなくてはいけないというのが現実だとしても、優しくて楽ちんで受容されるはずという意識が底の部分にあれば、人生のいろんな場面で余裕を持って取り組め、それが良い結果をもたらすはずです。少なくとも私はそうでした。

少し脱線しますが、先日、ヤングキングの編集部に行って、連載に向けた打合せをしました。そして先日掲載された杉村くんは、担当編集者はもちろん編集長も、今年入社した新卒の編集者たちも、さらには営業の社員まで、色々な人に好評だったという事を教えてもらいました。それはこれまでのnoteやTwitter、Pixivと一緒ですよね。年齢も性別も関係なく、色々な人が楽しんでくれたという事です。そうなった理由は、↑↑で書いたように杉村くんが受容の話だからだと思います。我々の根源にある「受容されたい」「受容されてる感は良いな~」という部分に訴えかける漫画だからだと思います。それは担当編集者も言っていました。そもそもヤングキングに持ち込んだきっかけは、去年の夏ごろに編集長からコメントをもらったからだったんです。

https://daysneo.com/author/yuki1192/


「人間への優しくあたたかい眼差し」、つまりは人間愛を感じるというコメントをいただきました。愛と受容にも深い関係がありますよね。愛情とは受け入れる事なのですから。私はこれまでの人生で「優しい」と言われる事が多かったです。それは細かい事を気にしない性格だから、一緒にいて楽だという意味だと思っていたのですが、実は細かい事を気にしないというのは受容のレベルが高いからなのかもしれません。例えばバイト先の新人で、両腕にすごいたくさんリストカットの跡がある人が入ってきたとします。そこで細かい事を気にする人なら、「ウエーやばい人が来た!かまってちゃんだ!怖いから距離をとろう」となりやすいです。でも自分は細かい事を気にしないので、普通に蚊に刺された跡がたくさんある人くらいのレベルで接します。何なら気にしなさすぎて、「その手、痛そう、何か心が悲しくなるとやっちゃうやつだよね?」とか聞いちゃいます。ミニ受容なのかもしれません。その人によりますが、少なくとも距離をとられたり腫れ物に触るような扱いをされるよりは、なんかバイトが楽に感じる事につながるのではないでしょうか。例えもしそれで逆に嫌われちゃったとしても、悪い事しちゃったなぐらいで、後は普通にしています。そんなふうに細かい事を気にしないでいられるヒントはまさに、「杉村くん」のモデルになった中学生時代にありました。みんなあまり細かい事を気にしない人達でした。もちろん善人でもなければコミュ力が高いとかでもなかったです。優しくすらなかったかもしれません。いい加減だっただけです。私もそうです。

https://note.com/yuki1192/m/m99be84dd6d2f

また、漫画で穴として表現した、私のボーっとした性格がその細かい事を気にしない部分につながっていたのもあると思います。

https://note.com/yuki1192/m/mf3a1e183c1d5

そして一番大きかったのが、妻ちゃんとの関係です。病んでいる女の子を救うにはどうすればいいか、それを20年毎日、今も続けています。愛情不足でこうなっちゃったので、シンプルに愛情を持って接すればいいわけですが、じゃあその愛情って何だと考えるのです。その模索を続けているうちに、「愛情とはふりかけごはんを差し出すようなものだな」というのが見えてきたのです。

安定しておいしく、豪華すぎて「何か悪いな」とも思わせず、もっと栄養をとれとかのこちらのエゴを押し付けることも無く、でもそこそこお腹はいっぱいになって満足できる、ふりかけごはんのようなものが愛情というわけです。しかも差し出すだけなのです。つまりちゃんと食べてるか見張ったり、「おいしい?おいしい?」とか確認したり、「ありがたく食えよ!」とか押し付けたりせず、受け取ったふりかけごはんをどうするかは本人に任せるという事です。そんなに間違っていないと思います。少なくとも、「世の中では〇〇という行動が愛情を示すものだということになっているからそれをしよう」とか、「なんか親切にすればエロイことできるかも」とか、「感謝されたい」とかは愛情ではないですよね。そしてそういう考え方が全て漫画に活きた一つの表れが、人間愛というコメント、そして受容という読まれ方だったんだと思います。

そして、忘れてはいけないのが、私がこれまで受け取ったコメントやDMです。やっぱり何か悩みを抱えていたり病んでいたりという人が多かったです。そこで色々やりとりをする中で、自分がどう感じるか、いたわりとは何か、自分の中にあるどの部分を使えばこういう人達にミニふりかけごはんを差し出せるか、そういう事を毎日何年も続けていました。それがまた私の中の何かを育んでいきました。妻ちゃんとの関係、読者との関係が私を成長させてくれたわけです。そういう事も全部漫画の中に活きているはずです。実際、漫画を描く時に具体的にその誰か個人を思い浮かべる事も多いです。

またその一方、田舎から都会に引っ越して心が病んでしまった今の私にとって、杉村くんで描いている「周りからの孤立感」がすごくリアリティを持って感じられるのです。都会人の日常、例えば人口密度の高い道を人とぶつからずに歩くとか、スーパーで列の短そうな所をスッと探して並ぶとか、そもそもそうやって頭を使いながら生活する事、全て私は出来ません。必ずどこかでおかしな事になって、例えば混雑したスーパーで人にぶつからない事を気にしすぎてお金を払うのを忘れてお店から出ちゃったなんて何度もあります。もともと私は頭の回転は遅いです。それはずっと忘れていた事だったのですが、この10数年で久々に思い出しました。そして小さい頃もこんなふうに周りが出来る事が出来なくて孤立していた事を思い出して、それを漫画にしたのです。それは周りが楽しんでいた事を楽しめなかった、周りが感じていた事と違う事を感じていたとも同じ事です。物理的にも心理的にも孤立しており、それが杉村くんの基本キャラクターとして活きています。そしてさらに現在は、世の中が急激に発展して、価値観も多様化して、周りとのずれを感じる人も増えてしまったのではないでしょうか。それがまた、杉村くんが色々な人に刺さった理由だと思います。

https://note.com/yuki1192/m/m99be84dd6d2f

こんなふうに、私がここ10年くらいで成長した事が反映しているのが、「杉村くん」や今回の「カワムラくん」、その他の漫画です。そしてその大きなベースにあるのが妻ちゃんとの関係であり、それをモチーフに描いたのが今回のエピソードというわけです。残念ながら私はあまりこの世界をポジティブに見られていません。裕福な家庭である妻ちゃんが不幸であり、人類の発展の最先端である日本の都会が私には合わない、つまりそれはお金儲けとか社会を物質的に豊かにとか我々人類がずっとやってきた事ってあまり自分にとっては意味が無いとわかったからです。普通であれば配偶者の実家が裕福で都会に住んでいたら毎日楽しみがあるはずです。相変わらず私は周りが出来る事が出来ず、周りが楽しんでいる事を楽しめないわけです。それもまた私が毎日漫画を描いている理由かもしれません。先日の打合せの感触から、このまま行けばめでたく杉村くんの連載は始められると思います。現在は第一話のネームを作っている最中です。私の数少ないポジティブ面であるこの作業が、さらなるポジティブにつながるように、今まで通りコツコツやっていきます。担当編集者も「今まで通り、気楽にやってくれれば良いですよ」と言っていました。それが全てですよね。これを読んでくれているあなたたちが私を成長させ、こういうポジティブな展開に導いてくれました。これからも面白い漫画を描く事がその恩返しだと思っています。続報を楽しみにしていてくださいね。

[おまけ]
妻カッパちゃんのような症状の事をアダルトチルドレンといいます。以前にその漫画も描きましたので、ぜひどうぞ。意外と我々の周りの優秀な人、頑張り屋な人にも多いと思います。…というか我々自身も無意識にその傾向があるかもしれません。


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