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しゃべるのが苦手な人のための職場の雑談入門 6.NGな会話との付き合い方


自分からデリケートな話題には触れないように気を付けていても相手からそのような話題を振られることはある。

確かに愚痴、陰口、下ネタをしゃべりあうことが楽しいと思う感情を否定はできない。こういった話題を口にすることは、後ろめたいことも話せる仲であるということの確認作業の側面もある。

相手が話題にしたいという気持ちは分からなくはないが、とは言えデリケートな話題はこちらの対応も注意が必要だ。

その話題に乗るべきだろうか?
明らかにこの場で話すべきではない内容だと思ったときにどうするべきだろうか?
度が過ぎる場合にはどうすべきだろうか?

こういった内容に対してとるべき対応を考えていこう。

相手からの好ましくない会話に対して、穏当な対応から強く出る対応を順に並べると以下のようになる。

①    話をあわせる
②    不満の事実を認める
③    しゃべらない/言葉を濁す
④    穏当なラインに引き上げる
⑤    強引に話を変えてしまう / まぜっかえす
⑥    なだめる
⑦    反論する
⑧    上長や相談窓口に相談する

以下、ひとつずつ対応を見ていきながら、内容や自分の許容できるラインなどを勘案して、どういった対応をとるべきなのかの指針としよう。

なお⑥以降の対応を行うと相手との関係性が変質する可能性が高い。できれば使いたくはないが、①~⑤の対応を行っても繰り返し行ってきたり、あまりにも問題のある内容である場合には⑥⑦⑧を検討しよう。

① 話をあわせる

少々きつい内容でも許容できるなら話をあわせてしまうのも手段の一つだ。

人は誰だって不満があり愚痴を言いたくなるときがある。許容されるなら下ネタをみんなで言いあったていいし、たまには人の愚痴を聞いてあげるのも優しさだ。相手の主張がもっともな場合もある。相手からこういったマイナスな話を聞かされるのも一種の信頼関係だろう。

ただし愚痴に対して軽率な同意が愚痴の先の相手に伝わってしまうとかえって業務が滞ることになる。
こういった愚痴の同意/不同意は社内政治というレイヤーからも考えるべきことである点に注意しよう。

さらにあまりに相手に同調しすぎると、ほかの人から「あなたも下種な話が好きな人」という烙印を押される可能性がある。

また、基本的には話をあわせられないから困っているわけで、この基準からどこまでラインをあげて対応するかということが実質的な課題になる。

相手「A部長のやり方はひどいよ」
⇒「私もそう思っています」

話をあわせる例

② 不満の事実を認める

相手の愚痴や陰口に対して愚痴や不満があるという事実だけを認め、相手の意見そのものに対しては同意も反対もしない。

相手の愚痴を聞くというミッションがあるなら、①に比べると自分の立場を貶めることなく愚痴の相手をしてあげることができる。仮に相手の不満の内容に同意できなくても、返事自体は「YES」になっているので相手にとっては比較的心地よい返事となる。

気を付けるべきこととしては、相槌になるので相手の長い愚痴に付き合うことになること、ワンパターンな言い方にならないように合いの手のバリエーションをちゃんと用意しておくことだ。

私自身は特に同意しづらい愚痴や不満に対しては、②から⑤の範囲で対応することが多い。

相手「A部長のやり方はひどいよ」
⇒「部長に結構不満がたまっていたんですね」
⇒「自分は部長と話したことがないので、そんな関係とは知りませんでした」

不満の事実を認める例

③ しゃべらない / 言葉を濁す

複数の人たちとの会話であり、自分の発言なく会話が進むのであれば自分から意見を出す必要はない。

あまりにも同意しかねる不満や愚痴に対する同意を求めらた場合は、はっきりと否定するのが角が立つ相手なら、言葉を濁した方が無難ということもある。

ただ雑談の技術を語る記事としてはこの状態にならないようにするかが問題となる。相手のキツイ発言に対して③にならないようにするためには、相手に対して④や⑤が使える関係性を目指していこう。

相手「お前は部長と俺のどっちの味方につくのか?」
⇒「なかなか回答に窮する質問です・・・」

しゃべらない例

相手「うちの職場の女性たちはブスばっかだよな」
⇒「美しさの基準は人それぞれなので・・・」

言葉を濁す例

④ 穏当なラインに引き上げる

テーマを抽象化したり仮定の話に切り替えることで、直接的な愚痴や不満から内容をずらして話しやすい内容に変える。
内容をずらしたところで相手の愚痴や不満が続くことにはなるかもしれないが、少なくとも悪口を聞かされ続けるよりは多少はましになるだろう。

うまくいけば建設的な会話になるかもしれない。

相手「○○の件についてのA部長のやり方はひどいよ」
⇒「もしあなたが部長だったらどうやりますか」
⇒「現場が混乱しないように会社から○○の件の方針を明確にしてほしいですよね」

穏当なラインに引き上げる例

相手「営業が馬鹿だから現場のこっちが苦労しなきゃいけない」
⇒「どうすれば現場側の要望がうまく営業に伝わるんでしょうね」
⇒「ほかの会社だと、現場と営業間のコミュニケーションはどうやっているんでしょうね」

穏当なラインに引き上げる例

 

⑤ 強引に話を変えてしまう / まぜっかえす

あまりに付き合いきれないなら、相手にこの話題はだめですよというNGのサインをやんわりと送ってあげる。

もっともオブラートに包んだNGのサインは話題を変えたり、話題をまぜっかえして流してしまうことだ。
勘が良い人は話題の転換がNGのサインであることに気づいてくれるだろう。勘が鈍い人には繰り返し話を変えたり、少々強引ぎみにやってみる。

相手に「もしかしてこの人はこの話題がNGなのかな?」と気づかせることで、波風を立てることなくこちらの希望を通すことができればスマートだ。

相手「A部長は管理職失格だよ。会社の一番の能無しだ」
⇒「部長といえばゴルフが趣味ですけど、部長とゴルフしますか」
⇒「A部長には『課長 島耕作』でもプレゼントして勉強してもらいましょう。私も読んだことはないので、勉強になるかわかりませんが…」

強引に話を変えてしまう/まぜっかえす例

相手「(下品な話に対して)」
⇒「メディアの規制も今と昔でだいぶ変わりましたね。昔は今では考えられないようなバラエティー番組がありましたよね」
⇒「刺激が強すぎて夜眠れなくなっちゃいますよ」

強引に話を変えてしまう/まぜっかえす例

 

⑥ なだめる

相手の愚痴や不満に対して「まぁまぁ」となだめるという方法もある。
ただしこの方法はあなたが想像する以上に相手に良い印象を与えない。

相手はこちらが同意してくれるものという前提で愚痴や不満を述べるのだ。なだめるという行為は客観的に見れば中立の立場であっても、相手からすれば「敵側に立つのか」と思われてしまうことになる。
自分の立場が相手より上でない限り、あまり使わないほうが良い。

口論に発展しそうな会話を仲裁する、あまりにヒートアップして周囲の注目を浴びてしまっているといった場合でなければ、安易に使わないようにしよう。

相手「営業が馬鹿だから現場のこっちが苦労しなきゃいけない」
⇒OK「今日の懇親会には営業部もいるので聞こえちゃいますよ」

⇒NG「営業もときには現場を助けてくれることもありますし…」
相手からの返事は「いやいやいや、俺はあいつらから助けてもらったことないね」といったあなたの発言の否定になるだけだ。

なだめる例のNG例とOK例

 

⑦ 反論する

これ以降は相手に対してNGという態度を直接示すことになる。

このようなNGの態度を直接的に波風立てずに行うことはとても難しい。うまく立ち回れる自信か、波風を立てる覚悟をもってやること。

たとえ正論でも自分の主張を述べることが正解の方法とは限らない。
私自身は反論以降の手段はまず取らない、たいがいはその後うまく反論できなかったことに自己嫌悪になることが多いからだ。

反論する場合の大事なポイントは相手の言い分を理解したうえで、相手に話題を変える必要性を理解させることだ。反論の目的は相手に話題を変える必要性を理解してもらうことであって、相手の主張を論破することではない。

また絶対に感情的になってはいけない。
特に酒席では、暴論やハラスメントであっても感情に任せた反論は絶対にやめたほうがよい。
よほどの暴論やハラスメントであれば、その場では反論せず感情をいったん整理してから⑧に述べるように後で他の人やハラスメント相談窓口に相談したほうがスマートだ。

なお、このように反論をできるだけ行わないのは、雑談においてであり業務においてはまた別である。

「A部長は管理職失格。会社の一番の能無しだ」
⇒NG「そんなことありません。A部長がいるから工場は回っています」
いくらA部長が優秀であなたの言っていることが正しくても余計な対立を生むだけ。
⇒OK「せっかくの懇親会の場ですし、別の話題にしませんか」

反論する場合のNG,OK例

「俺がどれだけ頑張って仕事をしても幹部は全く評価していない」
⇒NG「どれだけ努力しても成果がないと評価できませんからね」
相手の感情を逆なでして、火に油を注ぎたいのか?
⇒OK「ほかの人に聞こえるかもしれませんし、この場ではやめておきましょう」

反論する場合のNG,OK例

⑧ 上長や窓口に報告する

①~⑦の対応は常識があったり話の通じる相手に対してとる行動だ。
問題行動を繰り返したり明らかなハラスメントであれば、自分で対処するのではなく上長や担当部署へ報告しよう。

ポイントは早めの報告だ。

ハラスメント案件は証拠がなかったり、双方の主張が食い違ったり、線引きが難しいことも多い。
また、業務上の都合で簡単に異動が実現しないということもある。

「もう耐えきれない」というポイントで相談するのではなく、もっと前の段階で、現段階で問題があるという報告をしておけば、問題行動を第三者から確認してもらったり、上長などが相手の間に入ってくれたり、上長から相手にさりげなく指導を入れてもらったりすることができる。

いったんハラスメント案件として会社に取り上げられると双方にとって大きな負担が発生する。個人的な思いとしては、ハラスメント案件が発生したときに会社の規則に則って解決することは最終手段であり、そのような事態になる前に如何に未然に芽を摘んでおけるかが大事だと考えている。

そのためにも早めにシグナルを出して、上長や会社と問題を共有化しておくと、会社として取れる選択肢が多くなり、いざというときの処理がスムーズになる。

 

 

 

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