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大学時代に不登校になったこと⑦ ~周りに不登校がいる人へ~

ここからは私の体験をもとに今、同じ状況にある人や周囲に同じ状況になっている人がいる人へのアドバイスである。

11.周囲はどうするべきか

研究室の先生や指導的な先輩にあたる人の場合と、友人や同級生の場合とでできることは変わってくる。

〇あなたが指導的な立場である場合
もっとも好ましいことは、不登校の手前で本人の不調を察知して、悩んでいる本人をサポートして不登校を未然に防ぐことだ。これがかかるコストも、不登校による機会損失も最小にできる。

これは全くの個人的な考えだが、不登校はある日突然起こるケースより、私のように、だんだんと大学に来なくなるケースが多いと考える。この「だんだんと来なくなる状態」が精神的な不調をきたしているサインだ。この段階で早めに本人とコミュニケーションをとり、本人の抱えている問題の解決をサポートし、不登校の芽を摘み取っておけると理想的だ。

具体的には多くの大学生の悩みは
・研究室や大学の人間関係
・研究に対する行き詰まりや不安
・就職活動の挫折
に起因する。

研究の不安であれば研究の方向性を示したり、現状に対するフィードバックを与えることも十分に効果のあることだ。相談に親身にのって、本人にとって相談できる相手、あなたが味方であることを本人が認知できることも、十分な意味がある。

また、普段の研究室の雰囲気づくりが学生の引きこもりの抑止につながることはきっと経験的に知っているはずだ。研究室とは必ずしも研究だけをする場所ではなく、時には飲み会をしたり、一緒にご飯を食べたり、ゲームをするような場もあるはずだ。昨今の人間関係の希薄化がコロナでのリモート化によってますます進むところではあるが、研究以外の部分でも研究室に自分の居場所があることを認識させることが不登校の予防につながると考える。

しかし現実には、周囲の人間の気づかいがあったとしても不登校になるときはなる。私もそのケースだ。

そのような不登校になってしまった学生へはできれば本人に対して専門家によるカウンセリングを受診することを提案してあげるとよい。

また、多くの人を巻き込むことだ。本人の同級生や友人、保護者、カウンセラーなどのいろんな関係者に本人の現状を伝えて、いろいろな方面から本人の復帰を支援できる環境を作ることで復帰がスムーズに進みやすくなる。
ただし人間関係、家庭環境によって適切な人選はケースバイケースとなる。誰に伝えるべきかは検討が必要だろう。

いったん大学にこれなくなった学生が復帰する際には、復帰を急がないことも重要だ。長期に不登校になった人間がいきなり研究に戻ることは想像以上にハードルが高い。まずは毎日大学に来てもらい、片付けや実験器具の作成のような作業を中心としたものからはじめて、研究室に自分の居場所があることを認識させてあげたい。

〇あなたが仲の良い友人である場合
引きこもりを未然に防ぐという点では上記の指導的な人のケースと同じく、相談にのったり、研究室の居場所を作ってあげることができるとよい。
いったん引きこもりになってしまった場合も、上記と同じく、本人に対して専門家によるカウンセリングを受診することを提案してあげることだ。

ただし相談やカウンセリングの提案は友人という立場だと、指導的な立場の人よりも本人が受け入れることは難しいだろう。

友人としてできることで一番よいことは、一緒に遊ぶことだ。

私は仲の良かった知人が私と同じ不登校の状況に陥っていたとき、(半分強引に)その知人のアパートに遊びに行っていた。ただ一緒にゲームをしたり、近所の食堂でご飯を食べた。なぜなら自分も引き戻そう境遇にいたときに、ずっと人とのコミュニケーションに飢えていたからだ。
私自身は引きこもり中、研究室の人とコミュニケーションを拒絶してしまっていたところはあったが、小康状態の時などにご飯を誘ってもらってたわいのない話をすることが精神的な安らぎになった。

私は知人に対して一緒にいるときに大学に行けとは言わなかった。どうせ言葉で言わなくても向こうはなぜ自分が遊びに来ているのかが分かっているし、変なプレッシャーは本人にとっては負担になると思ったからだ。
ただ遊ぶだけの関係性なら迎え入れてくれるかもしれないが、大学に行かせようとする意向が露骨に見えてしまうと拒絶してしまうかもしれない。

これは指導関係の立場ではできないことだ。

断続的にそういうことをやって、気持ちを前向きにさせたり、精神的につらい状況を少しでも緩和しておくことが、復帰を後押しすることになるだろう。

逆を言えば、周囲の人ができるのはそこまでだ。本当に引きこもりから復帰できるかどうかは、本人の意思・努力に任せるしかない、と私は考える。


①にも書いた通り、本文章は私個人の大学時代の不登校の体験をもとに、個人的な考えを述べた記事です。
私個人は精神疾患に関する専門家ではありません。よって本来の標準的な精神疾患に対する処方と異なっていることを主張していたり、精神疾患の典型的な事象とは異なることを述べている可能性があります。
不登校や精神疾患等の問題を抱える方や周りのそのような方へのケアを考えている方は、本記事の内容は一つのケースとして参考にするにとどめ、心療内科や精神科の医師やカウンセラーなどの専門家の指導に依拠するようにしてください。


(⑧に続く)

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