新しい約束の生まれる日。
もう、旅はできないかと思った。
スピッツの「僕はきっと旅に出る」を弾き語りながらその日を待った。
不安すぎて、そんな歌すら歌えない夜もあった。
そんな日々を越えて、私は今海の向こうにいる。
飛行機が空に飛び立った瞬間、すべてが報われた気がした。
3年前にこの国で聴いた曲たちを、ドミトリーのベッドの上でかけてみる。
懐かしい君たちを、またこの気持ちで聴けて嬉しいよ。
やりたいことができる時代に生まれてよかった。間に合ってよかった。
野生の世界なら私はきっと淘汰されていた生き物だ。要領も良くないし、テキパキできない。道も人の顔も覚えられない。
けれど、生きてこられた。
極度の方向音痴でも、旅ができる。
どうしてかって、たくさんの人に支えられて、助けてもらってきたからだ。
人の好意に支えられ、助けられ、導かれた。
ぜんぶが巡り合わせ。
あのとき、パパイヤを見つけなかったら。ひろこさんが、トゥクトゥクでみきさんを拾わなかったら。シンさんと出会ってなかったら。あの木を、見つけてなかったら。
あの日雷雨にならなかったら。
カモノセに飛び込んでなかったら。
ニヒル牛を、ばあちゃんに教えてもらわなかったら。
西荻を、好きにならなかったら。
あの本を、手に取らなかったら。
デニスさんに、思い切って連絡しなかったら。
そして、もしあのとき死んでいたら。
なにひとつちがっても、今の私はいないのだ。
泣きそうなほどに、全てが奇跡。ほんとうに。
私に出会ってくれた素敵な人たちのおかげで、私は私に呆れることはあっても、嫌いになることも、棄てることもないだろう。
私の大切な人たちが、私を好きでいてくれるから。
また会おうね。
また来るね。
会いに来てね。
そんな約束に、きっと明日も明後日も、来年も10年後も、私は生かされる。命を返すまで、きっと。
そんな1日を重ねていけたらいいと
そんなふうに思うのだ。
明日、この町を出て、ローカルバスを乗り継いで6時間の、西の町へ行く。
だけど、寂しいけど寂しくないよ。
新しい約束の生まれる日だからね。
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