成宮晋作

小説を書きます。

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「シアワセ」 第一話

 どこに惹かれたのだろう。明確には思い出せない。自分の好みだったわけでも、人気があったわけでもない。強いて言うなら目立たない存在だった。あれから3年半たった今、本当のことはわからない。しかし3年半前僕は彼女に一目惚れをした。それだけは紛れもない真実だ。 彼女との思い出を振り返ると彼女のいい面しか浮かんでこない。理由はわからない。しかし冷静になって考えると僕は彼女に3年半振り回されてばっかだった。僕に非がなかったわけではないが、誰が見ても彼女が僕を振り回している。しかし彼女と

    • 「シアワセ」第五話

      それからしばらく彼らが会話をすることはなかった。学年集会ではバンビのクラスを常に確認し、移動教室の際には必ずバンビを目で追った。しかし一度バンビと目が合うと晋作はすぐに目を逸らし、その後はバンビの方を見向きもしない。 そんな態度をするものだから、バンビの方も晋作が自分に対して怒っていると勘違いしてしまい。彼らのすれ違いは深まるばかりであった。 学年が変わり彼らは2年生になった。晋作とバンビはもうお互いのことを気にすることなどなくなっていた。お互い自分たちの周りのことで忙し

      • 「シアワセ」第四話

        翌日バンビは晋作にキーホルダーを返すために晋作のクラスを覗きにいく。バンビは黒板側のドアを開け左右に首をふった後、「晋作君いますかー?」と教室中に聞こえる声で尋ねる。クラスの生徒は突然の来訪者に唖然として何も言えない。晋作がいる選抜クラスに他クラスの生徒が来ることなど滅多にないのだ。 バンビは30人を超える生徒の誰にも返答をもらえず顔を赤らめてしまう。そして逃げるようにクラスを去って行った。晋作は教室の後ろのドアからこっそりでてバンビを追いかける。 「バンビごめん!」

        • 「シアワセ」第三話

          晋作とバンビが初めて会話を交わしたのは高校1年の文化祭最終日でであった。そしてその日からこの物語は始まる。 バンビは晋作のことをその日以前から知っていた。彼女の友達と晋作が知り合いでその流れで晋作をバンビに紹介していたのだった。 一方の晋作はそんなこと全く覚えていなかった。バンビを紹介された時も彼女のことなど気に留めていなかった。 しかし文化祭最終日、晋作はバンビに猛烈に惹かれた。見事なまでの一目惚れがそこで成立した。晋作はときめきと動揺を隠せず、友人たちにあれこれ言い

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        「シアワセ」 第一話

          「シアワセ」第二話

          晋作の高校生活の前半は充実していたとは言えなかった。何かに熱中するわけでもなく、毎日を退屈に過ごしていた。一度授業が始まれば寝るか騒ぐかの二択。だからと言って勉強ができないわけではない。むしろできた方だ。真面目に授業を受けないくせにテストではある程度の点をとる。そんな彼に先生たちも対応を悩まされていた。 彼はいわゆる中二病であった。心の底から自分を天才だと信じこみ、感情の起伏が激しかった。そんな彼をうまく扱えるものなど高校にはいなかった。 さらに彼は高校の志望校に落ちただ

          「シアワセ」第二話