「シアワセ」第四話

翌日バンビは晋作にキーホルダーを返すために晋作のクラスを覗きにいく。バンビは黒板側のドアを開け左右に首をふった後、「晋作君いますかー?」と教室中に聞こえる声で尋ねる。クラスの生徒は突然の来訪者に唖然として何も言えない。晋作がいる選抜クラスに他クラスの生徒が来ることなど滅多にないのだ。

バンビは30人を超える生徒の誰にも返答をもらえず顔を赤らめてしまう。そして逃げるようにクラスを去って行った。晋作は教室の後ろのドアからこっそりでてバンビを追いかける。

「バンビごめん!」

階段を登るため踊り場に差し掛かろうとしていたバンビは急に声をかけられてびっくりしてしまい壁に頭をぶつけてしまう。

「バンビごめんね何も言えなくて」

晋作は声をかけるがバンビは顔をあげない。ずっとうずくまって動かない。心配した晋作がバンビの背中をさすろうとした瞬間バンビは起き上がる。

それに驚いた晋作が今度は尻餅をついてしまう。

「許さないから、いくじなし」

そう言い残してバンビは颯爽と去って行った。

晋作は心が強く揺さぶられるのを感じた。

その日から晋作はふとするたびにバンビのことが浮かんでくるようになった。

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