【小説】不思議な夏の恋#2
私、森結衣(もりゆい)と彼氏の小泉颯人(こいずみはやと)は、中学2年生の時に恋人になった。
告白は...…私からした。
それは中学2年生の後期中間テストが終わり、世間がクリスマスで溢れている頃。
この頃の彼は、まだ王子様ではなかった。
女子にナンパ、女たらし、ナルシスト、クズ男。
散々の言われようだった。
ちなみに噂や誤解ではない、これらは紛れのない事実だった。
成績も平均にも届かない酷さだった。
態度が上からで、当時、私もさすがのクズぶりに「呆れていた」。
今の姿からはとても想像のつかないほどの、クズっぷりだった。
そんな彼に私は...…
告白された。
クリスマスイブに。
彼と別の子との恋愛を応援するために行った、丸の内でのイルミネーションの帰りに。
私はこの告白を...…
断った。
クズ男ぶりが嫌で断ったのもあるが、何よりも彼を好きな女の子からの嫉妬が怖かった。
丸の内の木々が光輝いているなか、私が発した言葉と共に私と彼との間に吹いた風は、どう頑張っても忘れられなかった。
そんな彼が変わりだしたのは中学3年生になってからだった。
なぜか人が変わったかのように、女癖がよくなった。
今までは女子を落とすために声をかけていたのが、友達として声をかけるようになった。
成績も今までのが嘘かのように、みるみるあげていった。
気づいたら、学年2位ほどになっていた。
もともと顔はよかったが、その容姿にも拍車がかかるようによくなった。
性格も「ナルシスト」ではなく、「紳士」に変わっていった。
そんな彼の変化に、周りは追い付けなかった。
クズ男、クズ男、言いまくっていた子達も...…
どんどん彼の事を好きになっていった。
でも、なぜ彼が変わったのか、
それは……
誰にも分からなかった。
彼がどんどんモテて、人気になっていく一方で、私は女子たちの目線に困るようになった。
彼とは委員会や部活が同じで、彼からよく話しかけられた。
一応、私も彼のクズぶりには呆れていたものの、話には応じていた。
それは、告白されてからも同じだった。
そのせいか、彼が変わってから私は、彼のいないところで、女子の嫉妬を買うようになった。
「颯人君とあなたは会わないわよ」
「颯人君は優しいから森さんに話しかけてるんだよ?勘違いしないでね」
こんな言葉を、毎日毎日言われた。
みんな彼の事を「クズ男」呼びしていたのに。
彼が変わった瞬間、周りも変わりだした。
人の本性が見えるようになった。
私もその変化に……
巻き込まれた。
中学校生活最後の運動会が始まり、木々が彩る頃。
また私は、いつものように女子に八つ当たりされ、彼に...…彼に...…
告白しなくてはいけなくなった。
…私に恥をかかせたかったらしい。
恥をかかせて、2度と彼が私に話しかけないように。
なんだかんだ変わった彼を私は……
好きだった。
彼は、もとから根はよかった。それに拍車がかかったお陰で、もう彼はただの紳士だった。
素直に課題のプリントを見せてくれたり、めんどくさいことを言わなくなったりした。
そんな彼に、私は惚れかけていた。
そんななかで、罰ゲームでの告白。
嫌で嫌で仕方なかった。
放課後の帰り道、彼に誘われて一緒に帰っている時、私は彼の家の前で、告白した。
あの日は、私を応援しているかと疑いたくなるくらい、真っ青な、雲1つない青空だった。
「クリスマスに告白してくれて、あのときは断っちゃったけど、やっぱり小泉の事が好き。付き合って貰えませんか」
そういった。地獄の定期テストが終わった日に。
そして彼は...…
...…
と言った。
第3話に続く...
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