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NFLが各チームにトラッキングデバイスの着用を「義務付ける」!?スポーツ科学が明確にした、段階的な負荷上昇の意義

1. NFLが下した画期的かつ先進的な英断


米国プロアメフトリーグであるNFLでは、近年のスポーツ科学研究における研究で急激に練習時間・強度を上昇させるのではなく、段階的にそれらを増やしていくことで、靭帯・アキレス腱などの怪我リスクを大幅に低減できる事がわかった。

それを受け、今年度トレーニングキャンプでは、①それらを測定するために必要なトラッキングデバイスの着用、並びに②練習強度の段階的な上昇を各チームに「義務付ける」という画期的な決定を下した。

NFLはかねてより怪我人の多さ、またそれによる特にユース世代における人気低迷が懸念されていたため、今回のようなトラッキングシステム着用、並びにキャンプにおけるロードマネージメントの義務化は、アメフトという競技がより安全なものとアピールする目的もあり、これにより怪我人が減少に転じればユースにおけるプレー人口の人気回復も考えられる重要な施策と言える。

2. その先駆け的存在は昨季躍動したLAラムズ!?

昨シーズン、LAラムズはトラッキングデバイスを活用したロード・マネージメントを実践する事で、怪我人を最小限に抑えながら、最後の10試合中9試合に勝利する事ができた。

なお、怪我について、N F L選手会のメディカル・イノベーション担当であるSansiveriさんは以下の通り述べている。

「怪我を一括りにして考えたり、怪我の数だけでチームのメディカル/S&C部隊の能力を図るのは間違っている。防ぐ事が困難な、①コンタクトによる怪我と、②非コンタクト(疲労度の蓄積が原因)の怪我にまず分けてから怪我を語る必要がある。後者の怪我に関しては、トレーニングキャンプ期間に負荷を段階的に上げていくこと、シーズン中もその疲労度を測ることで確実に減らせる事が過去の統計データから明確になっている。」

また、NFL/Troy Vincent EVP(アメフトオペレーション)は、LAラムズの
アーロン・ドナルド選手を見ると、ロードマネジメントがいかに大事かと2月のSports Techie社SOTIカンファレンスで話している。

「ドナルドは、リーグの誰よりもダブル・トリプルチームをされており、その中ですでに8年もリーグで戦っている。それでも怪我は極めて少なく、試合を休むことは殆どない。それはラムズの監督、並びにヘッドトレーナーがしっかりと彼の練習・試合における負荷をマネージしているかであり、ドラルド、監督、トレーナーの皆がロードマネジメント(負荷データ)について共通の認識を持って試合に臨めていることが大きい。トレーナーと監督・選手がそれらの点で異なった意見を持ってしまうと、ロードマネージメントは機能しなくなってしまうので。これこそ「科学」だからね」

また、同氏は「ラムズは怪我予防の観点では、他のNFLチームの何年も先を言っている。」と述べており、スポーツサイエンスの力で昨年のように戦力に比して良い結果を今後も出していけるか、見ものである。

今後もますますスポーツサイエンスの領域に対する投資、注目が加速する。


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